グレッグ・イーガン『万物理論』

万物理論 (創元SF文庫)

あらすじ
すべての自然法則を包み込む単一の理論、“万物理論”が完成されようとしていた。ただし学説は3種類。3人の物理学者がそれぞれの“万物理論”を学会で発表するのだ。正しい理論はそのうちひとつだけ。映像ジャーナリストの主人公は3人のうち最も若い20代の女性学者を中心に番組を製作するが…学会周辺にはカルト集団が出没し、さらに世界には謎の疫病が。究極のハードSF。

亮人：：どぅおもー！漫才風読書感想でーす！
使い魔・ゲンキ君：：今回は、グレッグ・イーガンのSF長編『万物理論』だガル！！
亮人：：オレも万物理論を思いついたで～！
ゲンキ君：：急になんだガル、自分勝手だガルね。そもそも万物理論(TOE＝Theory of Everything)というのは、この宇宙にある全ての力を一つの式で記述しようという試みだガル。この宇宙には四つの力があると言われてるガル。「重力」と「電磁気力」は体感的に分かるけど、あと「強い相互作用」と「弱い相互作用」ってのがあるガル。この二つは、核力とか目に見えない小さな力みたいガルな。
亮人：：この宇宙は、天日干しした物が水を含んで戻っていってるだけの存在。名付けて「乾物理論」ww
ゲンキ君：：現在は、「電磁気力」と「弱い相互作用」は統一した一つの式で記述できるようになってるガル。さらに「強い相互作用」も一緒の式で記述できるように研究が進められていて、最終的には四つ全部を一つの式で記述したい。それが万物理論だガル！
亮人：：新しい万物理論また思いついたで～！この宇宙は神様が観客席から見てる演劇に過ぎない。名付けて「見物理論」ww
ゲンキ君：：本書では、その万物理論が20代でノーベル賞も受賞した女性理論物理学者によってついに発見されて、ステートレスという無政府主義者の人工島で発表されるという話ガル。
亮人：：新しい万物理論また思いついたで～！この宇宙は神様への贈り物に過ぎない。名付けて「進物理論」ww
ゲンキ君：：ただそこはイーガン、ただ発表するだけで終わらないガル。ポイントになるのは「人間原理」だガル。以前の作品『宇宙消失』や『順列都市』でも同じテーマを扱ってきてたガルな。普通は「世界があって人間が存在する」と考えるけど、人間原理は「人間が知覚することによって世界はその世界として確定し成り立っていく」という考えガル。万物理論でいえば、世界の法則の万物理論があってそれを科学者が発見するのが普通だけど、科学者が整合性のある理論を発見したら世界がその形に確定して存在が広がっていくガル。そしてその発見した科学者は神様みたいな存在(基石＝キーストーン)になるガル。これが本書の一番の大ネタだガル！難しいガルね。
亮人：：新しい万物理論また思いついたで～！この宇宙は女優の蓮佛美沙子ちゃんの見た夢の中の世界だった。名付けて「蓮佛理論」ww
ゲンキ君：：こんな大変な神存在になっちゃうんだから、この科学者は反科学カルトとかに命を狙われたり、サスペンスフルになっていくガル。反科学カルトといえば他にも色々登場してきて、伝統復興運動して科学を目の敵にする団体とか、科学的じゃない連中をイーガンは暗に批判しつつ描いていくガルね。
亮人：：新しい万物理論また思いついたで～！この宇宙は某海産物一家の隣に住んでる作家・伊佐坂先生(伊佐坂難物)の作品の中の世界。名付けて「難物理論」ww
ゲンキ君：：また反科学カルトの他にも、未来の異形の科学技術だったり、男性と女性以外に汎性ってのがあったり、とりあえず近未来のガジェットがこれでもかと投入されてるのも読みどころだガル。もうこのガジェット一つ一つで、どれだけのSF短編が書けるかってくらいに、贅沢に投入されてるガル！本当にスゴイガル！
亮人：：新しい万物理論また思いついたで～！この宇宙は神様が部下に給料払えなくて物で支給した、その物。名付けて「現物理論」ww
ゲンキ君：：とりあえず、伝えきれないけれど、SFネタの洪水で大傑作なんだガル！！！ってかご主人、人の話を聞いてるガルか？？
亮人：：聞いてませーん！？これがホントの「馬の耳に念仏理論」wwなんちゃって！
ゲンキ君：：それが言いたかったんかい！もうやめさせてもらうわん！ガルガル！！
★★★★★

米澤穂信「913」

いつか、君へ Boys (集英社文庫)

またもや短篇だけを、つまみ読み！《シモンズ》シリーズとして雑誌に三編だけ発表されて、まだ本にはなっていないシリーズ。
高校二年生の堀川二郎と松倉詩門は図書委員。図書室でウダウダしてると、引退した浦上先輩が訪ねてくる。そして、ちょっとしたアルバイトをしないかと持ちかけてくる。それは「おじいさんの遺した開かずの金庫」の番号を突き止めてくれ、というもの。家に行くと、何かが怪しい。はたして何が隠されているのか？
《古典部》《小市民》のラインの青春系日常の謎かと思って読んでたら、《ベルーフ》『満願』系のブラックだったぜ！びびったわ！これタイムリーな、紀州のドンファン事件やんwwでも面白かった！暗号モノに挑んだということだで、暗号も面白いものだったけど、それだけでは終わらないのは、さすが先生！シリーズのほかの短篇も探して読もう！

米澤穂信「下津山縁起」

時の罠 (文春文庫)

米澤穂信先生の短篇「下津山縁起」だけ、つまみ読んだ！面白かった！9世紀から未来までの様々な文書の引用で構成されていてトリッキー。下津山と上津山という双子山の歴史と、未来の大地の声を聞く研究が、途方もない法廷劇につながっていく。この発想はぶっ飛んでて好きやなー！

聴猫芝居『ネトゲの嫁は女の子じゃないと思った？』

ネトゲの嫁は女の子じゃないと思った? (電撃文庫)

あらすじ
ネトゲの女キャラに告白！→残念！ネカマでした☆そんな黒歴史を秘めた少年・英騎はある日、ネトゲ内で女キャラに告白された。まさか黒歴史の再来！？と思いきや、ネトゲでの「嫁」になったアコ=玉置亜子は本物の美少女で、しかもリアルとネトゲの区別が付いていない…だと…！？「おはようルシアン！」って、や、やめて！ハズイから名前で呼ぶなっ！人前でもキャラ名を連呼し、ネトゲの旦那にべったべた。あまりに残念で危険な亜子を「更正」させるために、英騎はギルドの仲間たちと動き出して―残念で楽しい日常≒ネトゲライフが始まる！

亮人：：どぅおもー！漫才風読書感想でーす！
使い魔・ゲンキ君：：今回はラノベ『ネトゲの嫁は女の子じゃないと思った？』の第一巻だガル。
亮人：：アニメで見て面白かったので、続きも気になるし、買い集めはじめたんよ。
ゲンキ君：：ネットゲームが大好きな高校生男子・英騎が、成り行きでアコという女の子キャラとゲーム内結婚することからはじまる話だガル。
亮人：：でも英騎は昔、ゲーム内で告白した女の子キャラが実は男(ネカマ)だったことからトラウマを持っているんよな。
ゲンキ君：：今回もネカマじゃないかと疑いながらも、成り行きで結婚。そしてリアルでも会うことになるガル。するとアコは本当に美少女だったガル！
亮人：： これがタイトルの由来やな。
ゲンキ君：：ただこのアコ、同じ学校の子だったんだけど、ネットと現実の区別がついてなくて、学校でも結婚相手として接してくるガル！？
亮人：：これは迷惑w
ゲンキ君：：だから他のメンバー(彼ら彼女らも偶然同じ高校だった)とネトゲ部を作って、ネトゲをしながら現実を分からせようと奮闘する。これがメインストーリー。
亮人：：ってかネトゲの仲間が実は身近な人間だったってパターン多すぎへん？近いところでは『ネト充のススメ』とかもそうやったし。
ゲンキ君：：便利な設定なんだろうねー。
亮人：：あとネット用語が多用されてるのもラノベならではで面白いよな！一巻は５年前の本なので、若干古い言葉なのも逆にオモロイw
ゲンキ君：：時事ネタの宿命だガル。
亮人：：ということで、これからも続巻を読んでいくでー！
ゲンキ君：：(･ω･)b
亮人：：ところでゲンキ君、何してるんや？
ゲンキ君：：(熱湯風呂を用意しながら)
亮人：：ワーオイ！ワーオイ！なんや急に！これ、熱湯風呂やないか！これは、押すなよ！押すなよー！
ゲンキ君：：(……。)
亮人：：押せへんのかい！押すと思たら押せへんのかい！押すと思たら押せへんのかーい！
ゲンキ君：：(計算ドリルをやりはじめながら)
亮人：：逐次ドリルすな！ドリルすな！(乳首ドリルすな)
ゲンキ君：：(箱の中身は何だろな？を用意して、中身の猛獣に手を噛まさせようとしながら)
亮人：：猛獣結構いっぱい詰まってる箱、ワーニー！！(毛細血管がいっぱい詰まってるとこ、ワーキー！)
ゲンキ君：：(熱々の料理を口に持っていきながら)
亮人：：2years ago焼き止めろ！ドリア1000℃かーい！！(つま先、あご、ワキやめろ！ドリルせんのかーい！)
(註：「2years ago焼き」とは、2年前から焼き続けた1000℃にも達するという謎のドリアの調理方法である)
ゲンキ君：：以上でーすw
亮人：：このネタ、リクエストしてくれたらまたいつでも開催するでー？これがホントの「熱湯芸の用命(ネトゲの嫁)」wwなんちゃって！
ゲンキ君：：それが言いたかっただけかーい！もうやめさせてもらうわん！ガルガル！！
《参考資料》
youtu.be
★★★☆☆

宮下奈都『太陽のパスタ、豆のスープ』

太陽のパスタ、豆のスープ (集英社文庫)

あらすじ
結婚式直前に突然婚約を解消されてしまった明日羽。失意のどん底にいる彼女に、叔母のロッカさんが提案したのは“ドリフターズ(やりたいこと)・リスト”の作成だった。自分はこれまで悔いなく過ごしてきたか。相手の意見やその場の空気に流されていなかっただろうか。自分の心を見つめ直すことで明日羽は少しずつ成長してゆく。自らの気持ちに正直に生きたいと願う全ての人々におくる感動の物語。

亮人：：どぅおもー！漫才風読書感想でーす！
使い魔・ゲンキ君：：今回は『羊と鋼の森』で本屋大賞を受賞して話題になった宮下奈都の『太陽のパスタ、豆のスープ』だガル！
亮人：：珍しく一般文芸小説やで！
ゲンキ君：：婚約破棄されたOL女子が、心沈んで何も出来なくなっていたところ、叔母から「ドリフターズリスト(やりたいことリスト)」を作ればいいよと言われて、やがて心が再生していくという話だガル。
亮人：：ドリフターズリスト自体が心を再生させてくれるということではなくて、なにか心の支えになる物やったというのがええな。
ゲンキ君：：何でもいいから、目印になる物があると、生きていけるということガルね！
亮人：：叔母のロッカさんや同僚の郁ちゃんなど、主人公・あすわを支える周囲の人たちのキャラクタもええんよ！
ゲンキ君：：「毎日のごはんがあなたを助ける」は名言だガルね！
亮人：：一般文芸本は、オレの叔母に貸すために読んでるんやけど、これは貸せる！
ゲンキ君：：貸す前にイチイチ内容チェックしてるとは律儀だガルね。
亮人：：叔母は、SFみたいな日常から離れたやつとか、ミステリみたいな殺人とか、全部ダメなんよな。しかもホッコリできる系がいいと。
ゲンキ君：：それでチェックしてるガルね！
亮人：：♪みんな愛の歌にせっつかれて～与えるより多く奪ってしまうんだ～♪　♪ムーンリヴァーを渡るようなステップで～踏み越えて行こうあなたと～♪
ゲンキ君：：どうしたどうした？急に歌いだして？？
亮人：：キリンジの「Drifter」やで！
ゲンキ君：：この小説のキーポイントが「ドリフターズリスト」だからガルか？
亮人：：そうや！そこの画面の前のアナタ！だからオチは「志村うしろうしろ～」とかドリフターズで来ると思ったやろ？ざんねーん！キリンジでしたー！！
ゲンキ君：：急な客(読者)イジリはやめなさーい！！もうやめさしてもらうわん！ガルガル！
★★★☆☆

『たべるのがおそい vol.5』

文学ムック たべるのがおそい vol.5

九州の地方出版社による文学ムック『たべるのがおそい』。『vol.5』収録の、米澤穂信「千年紀の窓」北原尚彦「ドロナワ古本コレクター」を摘み読んだ！
米澤穂信「千年紀の窓」は、声に出して笑い転げたわwwメッチャオモロイ！大ケッサク！！西暦2000年のある日、ペンシルヴァニア州の小さな町で、PCに向かって残業中の一人の男が心臓発作で命を落とした「ラリー・シューメーカー事件」の手記を米澤先生が翻訳したという体裁の短篇。ネタバレできないネタやけど、米澤先生のブログやツイッターでのオモシロを小説にしたみたいな？でもこのネタ、オッサンしか分からんやろww
北原尚彦「ドロナワ古本コレクター」は、北原先生の子供のころからの古本遍歴エッセイ。幼児のころのエピソードがオモロイww逆二宮金次郎！？環境が求めるから古本を集めるようになったドロナワだと仰ってるけど、すごいコレクターなのは間違いない！

入間人間『安達としまむら』

安達としまむら (電撃文庫)

あらすじ
体育館の二階。ここが私たちのお決まりの場所だ。今は授業中。当然、こんなとこで授業なんかやっていない。ここで、私としまむらは友達になった。好きなテレビ番組や料理のことを話したり、たまに卓球したり。友情なんてものを育んだ。頭を壁に当てたまま、私は小さく息を吐く。なんだろうこの気持ち。昨日、しまむらとキスをする夢を見た。別に私はそういうあれじゃないのだ。しまむらだってきっと違う。念を押すようだけど、私はそういうあれじゃない。ただ,しまむらが友達という言葉を聞いて、私を最初に思い浮かべてほしい。ただ、それだけ。日常を過ごす、女子高生な私としまむら。その関係が、少しだけ変わる日。

亮人：：どぅおもー！漫才風読書感想でーす！
使い魔・ゲンキ君：：今回は『安達としまむら』の1巻だガル。
亮人：：百合キターー！！！
ゲンキ君：：女子同士の恋愛を描いた百合ラノベだガル。漫画『ゆるゆり』のような、ゆるーい百合を目指して書いた作品らしいガル。
亮人：：やっぱり女の子同士が仲良くしてるのは、ええわー！男なんてイラン！
ゲンキ君：：自分も男のクセに？
亮人：：それがええんやんかー！男の自分が入ったら壊れる世界。その女子だけの世界を壊さぬように見守る！
ゲンキ君：：同性愛とはまた違うガルね？
亮人：：そうそう。世間のLGBTとがゴチャゴチャ論争になるのとは、また別！ガチの結婚とかじゃなく、淡い恋心がええんやん！
ゲンキ君：：なんなの？この御主人の熱は？
亮人：：ただの日常系なだけじゃなく、宇宙人というトリックスターも出てきて、今後も気になるね！
ゲンキ君：：続巻も出てるので、読むガル！
亮人：：では最後に謎かけを一つ。
ゲンキ君：：唐突な。
亮人：：「百合を見たオレ」とかけまして！「国語の授業にありがちなこと」ととく！
ゲンキ君：：「百合」とかけて「国語」ととく？そのこころは？
亮人：：「じょし(女子／助詞)」がくっついて「だんし(男子／dancing)」が止まらないでしょう！！
ゲンキ君：：おあとがよろし……いのか？国語の授業で、助詞の勉強中にダンスしだすってどういう状況だガル！？！？
亮人：：レッツダンシング！！
ゲンキ君：：踊って誤魔化すなガルー！！
亮人：：レッツダンシング！！
ゲンキ君：：それにLet’sのあとは現在進行形ingじゃなく原形をもってくるべきだガル。
亮人：：英文法に厳しいゲンキ君。文法だけに、グラマー(grammar／glamor)なガールと踊って忘れようぜ～！レッツダンシング！！
ゲンキ君：：もうええわ。ガルガル！！
★★★☆☆

グレッグ・イーガン『祈りの海』

祈りの海 (ハヤカワ文庫SF)

あらすじ
二万年前に惑星コブナントに移住し、聖ベアトリスを信奉する社会を築いた人類の子孫たち。そこで微小生物の研究を始めた敬虔な信者マーティンが知った真実とは?ヒューゴー賞・ローカス賞を受賞した表題作、バックアップ用の宝石を頭のなかに持った人類の姿を描いた「ぼくになることを」ほか、遙かな未来世界や、仮想現実における人間の意志の可能性を描く作品まで、多彩な魅力あふれる11篇を収録した日本版オリジナル短篇集。

発売直後ぶりに再読。初期短篇集では、『しあわせの理由』は好きで何度も再読してるけど、こちらはそんなに印象になく再読してこなかった。けど再読で、素晴らしい短篇集だと再確認した！表題作なんて、●●●がポロリするシーンしか覚えてなかったけど、宗教とは何かを問う面白いテーマ性だったし。「繭」「誘拐」「イェユーカ」など90年代の作品ながら、現代社会にも通じるテーマで先見性も光る。「貸金庫」は『君の名は。』の元ネタだけど、しっかりSF的解釈もあり(これも忘れてたw)面白かった。

豊田有恒『進化の鎮魂曲』

進化の鎮魂曲(レクイエム) (トクマ・ノベルズ)

あらすじ
藻類化石専門の古生物学者・桜田は、政情不安定な西アフリカ・ガボン共和国に飛んだ。十七億年前の太古の昔に自然に出来上がった天然の原子炉の調査のためである。原子物理学者たちによる調査は既に進行していたが、化石に関する調査は、全く手つかずの状態だったのである。日に日に悪くなる政情の中、なんとか調査を開始した桜田だったが、怪し気な記者につきまとわれ……。進化の謎に挑む科学者を描いた「進化の引金」他。著者得意の進化テーマによる連作7篇を収録。「大破局」は、本書のための特別書下し。

亮人：：どぅおもー！漫才風読書感想でーす！
使い魔・ゲンキ君：：今回は豊田有恒の『進化の鎮魂曲』だガル！
亮人：：ってかこのノベルス、なんで文庫化されていないのかが、よーく分かりましたw
ゲンキ君：：というと？表紙にも「アドベンチャーSF」という惹句もあるし、メチャクチャおもしろそうだガル？
亮人：：それが問題よ。SF的要素が一部の章だけで、あとは自分の思う恐竜学説を書いてるだけ。ほとんどの章が全然SFでもアドベンチャーでもないのよ！しかも最後の章の最後のオチがこれまた噴飯モノやった。
ゲンキ君：：うーん、そうだったガルか。
亮人：：詳しく内容を見て行こう。まず第一章「進化の引金」。これはまだSFとしてスリリングやったな。
ゲンキ君：：ガボンで見つかった、十七億年前の天然の原子炉の跡を考古学者が研究に行く話だガル。
亮人：：ウランとかが自然に溜まって原子炉みたいになった場所やな。それが先カンブリア紀にあったってわけや。そして研究を進めるうちに、その天然原子炉の放射線が単細胞生物に突然変異を促して、カンブリア大爆発に繋がっていくという推論。非常にスリリングな仮説で、これぞ考古学SFって感じや。
ゲンキ君：：ここは満足だったガルね。
亮人：：そしてここからが問題や。
ゲンキ君：：第二章「大破局」第三章「鯨が海へ行った日」だガル。それぞれ「ドロマエオサウルス」「鯨＆イルカ」の話だガル。
亮人：：これが現代の視点が全くない。第三者の視点から恐竜のバトルとかを描いて、学説を書き連ねるだけ。これがSFか？ただの考古学の本やん！
ゲンキ君：：この説自体は、面白かったガルけどね。遺伝子的に繋がりはなくても、環境で似た動物が生まれてくるという「先行型」という概念ガル。たとえば、トリケラトプスは草食だけど格闘能力を持っているサイの先行型とか、モササウルスは海のハンターでシャチの先行型とか。
亮人：：でもこの「先行型」という概念。もう豊田有恒初期SF短篇の「過去の翳」で、ちゃんとSFという形で使って、傑作SFに仕上げてるんよなー。それの使いまわしやし。
ゲンキ君：：「過去の翳」はちゃんとタイムスリップとかSF要素をからめてたけど、本書は全く自分の言いたいことを書いただけだガルね。
亮人：：ほんまに♪君の心に続く〜永い一本道は〜いつも僕を勇気づけた〜♪やで！！
ゲンキ君：：それは「青春の影」だガル！！チューリップさんの歌だガル！
亮人：：そうそう♪ピアノ売ってちょ〜だい♪
ゲンキ君：：また分かりにくいボケを。。ピアノのCMは財津一郎、チューリップのリーダーは財津和夫だガル！！本書の続きへ行くガル！
亮人：：第四章「進化の鎮魂曲」では、また話が飛んでSFになる。
ゲンキ君：：内モンゴルに化石の調査に向かった研究者が雷に打たれてタイムスリップして、新生代のバルキテリウムを目撃するガル。
亮人：：まさにそれだけの話で、何のひねりもない！こんなオーソドックスなネタでよくSFと言えたもんだ！！
ゲンキ君：：厳しいガル。
亮人：：そして第五章「雲梯」第六章「肉食の猿」へ。これも第三者視点から古生物と学説を書くだけ。
ゲンキ君：：これらの章では「猿」「アウストラロピテクス」を描いてるガル。
亮人：：森からサバンナへでた猿(人間の祖先)は多様性を武器に進化の王者へ進んだという学説は興味深いけど、まったくSFじゃない。
ゲンキ君：：恐竜という千両役者が去って、しばらくは弱小哺乳類というショボイ役者が主演を張らなければならなかったとか、比喩はおもしろかったガルけどな。
亮人：：そして問題の最終章「進化の軌跡」。どうせマイナーな本だから最後までネタを割っちゃうよ！！
ゲンキ君：：まず、いきなり宇宙人の視点からはじまるガル！突然！
亮人：：これだけでも今までの流れからいくと、トンデモや。
ゲンキ君：：宇宙人は、古生物の調査をしてるガル。核戦争で滅びた惑星。東の島嶼列島や西の半島大陸、そして海を挟んだ向こう側の南北大陸が重要だったとか言ってるから、たぶん地球のことガル。
亮人：：でもその惑星の化石から見ると、有力生物は東の島嶼列島から全世界に広まったと。半島大陸や南北大陸の北にも生物はいたけど、島嶼列島の生物が爆発的に広まったと。なにかがおかしい。
ゲンキ君：：その生物も、TYT型MZD型SBR型とかあって、HND型は二足と四足のタイプがいたとか言い出すガル。
亮人：：なんのことかと思ったら最終ページ。その宇宙人は車輪生物で、調査していた地球の古生物は自動車のことでしたーって！？
ゲンキ君：：なんじゃそりゃーってなったガルw
亮人：：今まで恐竜とか新生代とか原人とかの進化をやってきといて、最終章でこんなネタかい！！思わずズッコケたよ。
ゲンキ君：：このズッコケは、御主人のネタ並だガルねww
亮人：：なにをー？！ゲンキ君のツッコミこそ、ティラノサウルス並じゃないか！！
ゲンキ君：：え？暴君のように君臨する冴えたツッコミってことガルか？
亮人：：いやいや、主流になれない傍流(暴竜)のツッコミってことよww
ゲンキ君：：なにをー！御主人の冴えないボケのせいだガル！！
亮人：：オレのボケ？フッ、我が魂の抑留(翼竜)が解放された時にだけ、真の実力が翼を広げるのだ！
ゲンキ君：：なに変なキャラ設定を作りあげてるガル！！もうやめさせてもらうわ！！ガルガル！！

収録作

1. 進化の引金
2. 大破局
3. 鯨が海へ行った日
4. 進化の鎮魂曲
5. 雲梯
6. 肉食の猿
7. 進化の軌跡

★★☆☆☆

光瀬龍『多聞寺討伐』

多聞寺討伐 (ハヤカワ文庫 JA 32)

あらすじ
(本書に掲載されていないので省略)

亮人：：どぅおもー！漫才風読書感想でーす！今回は新スタイル、笑い飯風漫才で行かしてもらいたいと思います！
使い魔・ゲンキ君：：今回の感想は、光瀬龍の『多聞寺討伐』だガル！時代劇に時間犯罪者と時間局員(タイムパトロール)がからんでくる時代SFの作品集だガル！
亮人：：光瀬SFは、世間的には宇宙SFの宇宙時間の茫洋さと人類のちっぽけさを描いた「東洋的無常観」が高評価やけど、時代SFのタイムパトロールものとかのほうが個人的には好きなんよなー。
ゲンキ君：：時代の風俗とか細かな描写がとても空気感を捉えているガル！
亮人：：そのわりに、SF的オチの方は、投げっぱなしで粗かったりするんよな！？光瀬SFの御愛嬌w
ゲンキ君：：ところでこのタイトルの『多聞寺討伐』ってどういう意味だガル？
亮人：：それはなー。「あー頼んでたボードゲームが届いた！ボードゲームの中に入って生死を賭けたリアル双六するやつが、やっと届いた！」
ゲンキ君：：ってそれは「ジュマンジ到着」だガルー！「多聞寺討伐」ガル！代われ！「ウキー！ウキー！ウキー！猿がいっぱい！にらみ合って動かない！」
亮人：：ってそれは「多モンキー膠着」や！代われ！「早く来てー、持統天皇！バスが行っちゃうよー！」
ゲンキ君：：それは「カモン持統バス」だガル！って、なんというムチャな日本語w　もうええわ！一本目の作品にいくガル！

• 追う

ゲンキ君：：江戸時代の八丁堀の同心・茂十が、殺人事件を追う捕物帳だガル。
亮人：：途中で、滝沢馬琴が残した小説にある、空から人が降ってきたというエピソードもSF的に解釈して上手く絡ませてあるんだけど、オチがしっくり来ないんよなー。
ゲンキ君：：というと？
亮人：：同心が捜査をしていくんだけど、最後に犯人が時間犯罪者だったと分かったのはいいとして、同心は時間犯罪者と時間局員のバトルを目の当たりにするだけで最後には二人は消えてしまって結局犯人は何だったんだで終わる。全然解決してないやんってなる。
ゲンキ君：：こういう大味なところが、御主人の言う御愛嬌だガルねw
亮人：：ところで「同心」というのはどういう人のことなん？
ゲンキ君：：それはガルー。「最近、動悸息切れがしんどいわー。そんなときはこの薬！」
亮人：：ってそれは「救心」や！「同心」になれ！代われ！「アタマが痛いんか？そんなときはこの薬！これは、半分は優しさで出来てるから、胃にも優しいんやで！」
ゲンキ君：：それは「ノーシン」、じゃなくて「バファリン」だガルー！せめて「同心」にかけて！代われ！「御用だ！御用だ！郵便局に御用だ！裏を塗らしてペタッとハガキに貼ってー」
亮人：：ってそれは「切手」や！同心なら「十手」を持て！代われ！「御用だ！御用だ！お口の恋人に御用だ！」
ゲンキ君：：ってそれは「ロッテ」ガルー！十手を持て！代われ！「御用だ！御用だ！ティファールは取り外しができて、収納もしやすいガルー」
亮人：：ってそれは「取っ手」や！十手を持て！代われ！「御用だ！御用だ！こっそりと内情を探るスパイを放つんや！」
ゲンキ君：：ってそれは「十手」じゃなく「密偵」だガルー！って同心は密偵でいいんだガルー！？公務員(警察)である同心が私費で雇う子分の密偵が「岡っ引き(岡っ引きは蔑称で、正式には江戸は「御用聞き」その他関東は「目明し」関西は「手先」)」というんだガル！もうええわ！次！

• 弘安四年

亮人：：お次は、元寇・弘安の役の話。
ゲンキ君：：元を迎え撃つために九州へ向かう準備をする鎌倉武士。しかしその準備の荷物の中の名刀がことごとく狙われるガル。
亮人：：この名刀が、時間旅行者の都合の悪いものらしく、破壊しようという企みなんよなー。なんで都合が悪いのかは、ちょっと取って付けたような理由やったけどw　またここも御愛嬌w
ゲンキ君：：ところで「元寇」ってどんなだったガル？
亮人：：それはなー。「モンゴルが攻めてくるより、編集者さんの追い込みのほうが厳しいわー」
ゲンキ君：：ってそれは「原稿」だガルー！「元寇」攻めて来いー！代われ！「(おすわりーん)忠犬ゲン公」
亮人：：って何が「ゲン公」やねん！「元寇」こいー！代われ！「(おすわりーん)忠犬亮公」
ゲンキ君：：なんで御主人がお座りしてるガル！「元寇」に掛かってないし！代われ！「ワオーーーン」
亮人：：それは「ワオンと咆哮」や！鎌倉武士は「御恩と奉公」や！代われ！「(おすわりーん)忠犬亮公」
ゲンキ君：：もうそれ見たガルー！もうええわ！次！

• 雑司ヶ谷めくらまし

亮人：：とある集落が全滅という惨殺事件が起こってそれを捜査する、また捕物帳やな。
ゲンキ君：：捜査するうちに、平賀源内が容疑者として上がるガル。その動機が興味深い。
亮人：：上手く歴史と創作を融合させてる感じが一番好きな作品やったわ！
ゲンキ君：：ところで「平賀源内」って何をした人だガル？
亮人：：それはなー。「おおー鳥の赤ちゃん、今日も来たか。精米する前の米をあげよう」
ゲンキ君：：ってそれは「ヒナが玄米」だガル！「平賀源内」でてこい！代われ！「あ、また白髪や！でももう今日はオヤスミだガル」
亮人：：ってそれは「白髪、Good night(グッナイ)」や！「源内」こい！代われ！「肩こりに磁石を貼ったらいいことを発見した！？」
ゲンキ君：：それは「エレキバン」だガルー！「エレキテル」開発しろー！代われ！「♪絶え間なくそそぐ愛の名を〜♪」
亮人：：それは「GLAYのTERU」や！「エレキのテル」持ってこい！代われ！「♪絶え間なくそそぐ愛の名を〜♪」
ゲンキ君：：御主人も歌いたかったのかーい！もうええわ！次！

• 餌鳥夜草子

ゲンキ君：：時間犯罪者が江戸の町に溶け込んでる話だガル。
亮人：：妖艶な美女も出てくるし、面白かったな！
ゲンキ君：：普通は時間局員が勝つか、そのまま未来に戦いは続いていくか、そういう話が多い中、この話はメッチャ変化球のオチでもあるガル。
亮人：：こんな終わり方でもええんや？まさかタイムパトロールが負けるなんてねw　でもそれが味になってるな！
ゲンキ君：：ところで「タイムパトロール」って普段は何をしてるんだガルねー？
亮人：：それはなー。「ちょっとそこの女子高生！足みせてみ！40デニール？エロすぎ！逮捕！」
ゲンキ君：：それは「タイツパトロール」だガル！お前が逮捕されろー！代われ！「ジントニック、モヒート、フローズンダイキリ、よし全部果汁が入ってるガルな？」
亮人：：それは「ライムパトロール」や！代われ！「I’mパトロール！！」
ゲンキ君：：知らんがな！代われ！「君、借金おおすぎ！君の借金は帳消し！」
亮人：：それは「債務パトロール」や！なんで徳政令も出してんねん！代われ！「♪うまーいうまーいうまーいうまーい美味いどんぶりっ♪」
ゲンキ君：：「マイムマイム」のリズムの「マイムパトロール」ね。超昔の丸美屋のCM(https://www.youtube.com/watch?v=37XitGGQ00k)。ってか古すぎガル！もうええわ！次！

• 多聞寺討伐

亮人：：表題作！この短篇は、筒井康隆先生の編まれた『'71日本SFベスト集成』にも載ってて読んだことあるわ。
ゲンキ君：：読んだことあるガルね。
亮人：：たしか、多聞寺が時間犯罪者に占拠されて、周辺地域を牛耳ってて、攻略しようにもゾンビっぽいのがウヨウヨいたり、なんか面倒な話だったはず。
ゲンキ君：：えらい曖昧ガルね？今回も読んだんじゃないガルか？
亮人：：再読なんで、面倒臭くて読んでませーんww
ゲンキ君：：読んでないんかい！もうやめさしてもらうわ！！ガルガル！！

収録作

• 追う
• 弘安四年
• 雑司ヶ谷めくらまし
• 餌鳥夜草子
• 多聞寺討伐

★★★★☆