くじら座ソーダ通信

主に読書(SFとミステリ)やアニメについて書きます。最近の読書感想は「漫才風読書感想」をやってます。カテゴリーから「漫才風読書感想」を選んで読んでみてください!

豊田有恒『進化の鎮魂曲』

あらすじ
藻類化石専門の古生物学者・桜田は、政情不安定な西アフリカ・ガボン共和国に飛んだ。十七億年前の太古の昔に自然に出来上がった天然の原子炉の調査のためである。原子物理学者たちによる調査は既に進行していたが、化石に関する調査は、全く手つかずの状態だったのである。日に日に悪くなる政情の中、なんとか調査を開始した桜田だったが、怪し気な記者につきまとわれ……。進化の謎に挑む科学者を描いた「進化の引金」他。著者得意の進化テーマによる連作7篇を収録。「大破局」は、本書のための特別書下し。

亮人::どぅおもー!漫才風読書感想でーす!
使い魔・ゲンキ君::今回は豊田有恒の『進化の鎮魂曲』だガル!
亮人::ってかこのノベルス、なんで文庫化されていないのかが、よーく分かりましたw
ゲンキ君::というと?表紙にも「アドベンチャーSF」という惹句もあるし、メチャクチャおもしろそうだガル?
亮人::それが問題よ。SF的要素が一部の章だけで、あとは自分の思う恐竜学説を書いてるだけ。ほとんどの章が全然SFでもアドベンチャーでもないのよ!しかも最後の章の最後のオチがこれまた噴飯モノやった。
ゲンキ君::うーん、そうだったガルか。
亮人::詳しく内容を見て行こう。まず第一章「進化の引金」。これはまだSFとしてスリリングやったな。
ゲンキ君::ガボンで見つかった、十七億年前の天然の原子炉の跡を考古学者が研究に行く話だガル。
亮人::ウランとかが自然に溜まって原子炉みたいになった場所やな。それが先カンブリア紀にあったってわけや。そして研究を進めるうちに、その天然原子炉の放射線単細胞生物に突然変異を促して、カンブリア大爆発に繋がっていくという推論。非常にスリリングな仮説で、これぞ考古学SFって感じや。
ゲンキ君::ここは満足だったガルね。
亮人::そしてここからが問題や。
ゲンキ君::第二章「大破局」第三章「鯨が海へ行った日」だガル。それぞれ「ドロマエオサウルス」「鯨&イルカ」の話だガル。
亮人::これが現代の視点が全くない。第三者の視点から恐竜のバトルとかを描いて、学説を書き連ねるだけ。これがSFか?ただの考古学の本やん!
ゲンキ君::この説自体は、面白かったガルけどね。遺伝子的に繋がりはなくても、環境で似た動物が生まれてくるという「先行型」という概念ガル。たとえば、トリケラトプスは草食だけど格闘能力を持っているサイの先行型とか、モササウルスは海のハンターでシャチの先行型とか。
亮人::でもこの「先行型」という概念。もう豊田有恒初期SF短篇の「過去の翳」で、ちゃんとSFという形で使って、傑作SFに仕上げてるんよなー。それの使いまわしやし。
ゲンキ君::「過去の翳」はちゃんとタイムスリップとかSF要素をからめてたけど、本書は全く自分の言いたいことを書いただけだガルね。
亮人::ほんまに♪君の心に続く〜永い一本道は〜いつも僕を勇気づけた〜♪やで!!
ゲンキ君::それは「青春の影」だガル!!チューリップさんの歌だガル!
亮人::そうそう♪ピアノ売ってちょ〜だい♪
ゲンキ君::また分かりにくいボケを。。ピアノのCMは財津一郎、チューリップのリーダーは財津和夫だガル!!本書の続きへ行くガル!
亮人::第四章「進化の鎮魂曲」では、また話が飛んでSFになる。
ゲンキ君::内モンゴルに化石の調査に向かった研究者が雷に打たれてタイムスリップして、新生代のバルキテリウムを目撃するガル。
亮人::まさにそれだけの話で、何のひねりもない!こんなオーソドックスなネタでよくSFと言えたもんだ!!
ゲンキ君::厳しいガル。
亮人::そして第五章「雲梯」第六章「肉食の猿」へ。これも第三者視点から古生物と学説を書くだけ。
ゲンキ君::これらの章では「猿」「アウストラロピテクス」を描いてるガル。
亮人::森からサバンナへでた猿(人間の祖先)は多様性を武器に進化の王者へ進んだという学説は興味深いけど、まったくSFじゃない。
ゲンキ君::恐竜という千両役者が去って、しばらくは弱小哺乳類というショボイ役者が主演を張らなければならなかったとか、比喩はおもしろかったガルけどな。
亮人::そして問題の最終章「進化の軌跡」。どうせマイナーな本だから最後までネタを割っちゃうよ!!
ゲンキ君::まず、いきなり宇宙人の視点からはじまるガル!突然!
亮人::これだけでも今までの流れからいくと、トンデモや。
ゲンキ君::宇宙人は、古生物の調査をしてるガル。核戦争で滅びた惑星。東の島嶼列島や西の半島大陸、そして海を挟んだ向こう側の南北大陸が重要だったとか言ってるから、たぶん地球のことガル。
亮人::でもその惑星の化石から見ると、有力生物は東の島嶼列島から全世界に広まったと。半島大陸や南北大陸の北にも生物はいたけど、島嶼列島の生物が爆発的に広まったと。なにかがおかしい。
ゲンキ君::その生物も、TYT型MZD型SBR型とかあって、HND型は二足と四足のタイプがいたとか言い出すガル。
亮人::なんのことかと思ったら最終ページ。その宇宙人は車輪生物で、調査していた地球の古生物は自動車のことでしたーって!?
ゲンキ君::なんじゃそりゃーってなったガルw
亮人::今まで恐竜とか新生代とか原人とかの進化をやってきといて、最終章でこんなネタかい!!思わずズッコケたよ。
ゲンキ君::このズッコケは、御主人のネタ並だガルねww
亮人::なにをー?!ゲンキ君のツッコミこそ、ティラノサウルス並じゃないか!!
ゲンキ君::え?暴君のように君臨する冴えたツッコミってことガルか?
亮人::いやいや、主流になれない傍流(暴竜)のツッコミってことよww
ゲンキ君::なにをー!御主人の冴えないボケのせいだガル!!
亮人::オレのボケ?フッ、我が魂の抑留(翼竜)が解放された時にだけ、真の実力が翼を広げるのだ!
ゲンキ君::なに変なキャラ設定を作りあげてるガル!!もうやめさせてもらうわ!!ガルガル!!

収録作

  1. 進化の引金
  2. 破局
  3. 鯨が海へ行った日
  4. 進化の鎮魂曲
  5. 雲梯
  6. 肉食の猿
  7. 進化の軌跡

★★☆☆☆