くじら座ソーダ通信

主に読書(SFとミステリ)やアニメについて書きます。最近の読書感想は「漫才風読書感想」をやってます。カテゴリーから「漫才風読書感想」を選んで読んでみてください!

野田昌宏編『太陽系無宿―スペースオペラ名作選(1)』

太陽系無宿 (ハヤカワ文庫 SF 49 テーマ・シリーズ スペース・オペラ)

太陽系無宿 (ハヤカワ文庫 SF 49 テーマ・シリーズ スペース・オペラ)

あらすじ
果てなき宇宙にひろがる夢とロマンの大冒険世界へ、あなたを御招待!宇宙開拓時代の夜明け、いまだ法と秩序のもたらされぬ辺境諸惑星間に、太陽系きっての冒険家としてその勇名をうたわれた《鷹》のカース――太陽系全体を恐怖のどん底へつきおとした、彼と宿敵《鳶》のジュッドとの壮絶な死闘を描く「太陽系無宿」をはじめ、若さと活力あふれる初期SFの傑作全四篇を収録。本邦初の本格的宇宙冒険活劇(スペース・オペラ)特集シリーズ、第一巻ここに登場!

亮人::野田大元帥による編訳の「スペースオペラ名作選」全二巻の第一巻やでー。
使い魔・ゲンキ君::今年の二月に、西心斎橋まんだらけグランドカオスで買ったやつだガルな。
亮人::第二巻『お祖母ちゃんと宇宙海賊』は、ジグソーハウスさんで買ったんや。早く読んでしまおうと、一巻を手にとってみた。最近は、全二巻が合本されて、創元SF文庫から出てるな。
ゲンキ君::新しいのを買わないで、古い版で集めるのが、古本好きの御主人らしいガル。
亮人:: ってか合本版の今の読者の感想をあさってみたんだけど、みんな評価低めやなー。
ゲンキ君::まあ古臭いといえば古臭いガルよね。
亮人::でもスペオペやで?何も考えずに読める楽しいエンタメなのがええんやないか!!太陽系の地球以外の星にも動植物がウヨウヨおったり、大味な冒険や勧善懲悪やったりやけど、スペオペは楽しければそれでええんや!!
ゲンキ君::熱く語るガルねー。
亮人::古きよきスペオペが大好きやからね。
ゲンキ君::ところで収録作は全部シリーズ物の中の一篇らしいけど、キャプテン・フューチャー以外は全部邦訳がないらしいガル。
亮人::これは悲しい。こんなに楽しいお話たちなのに。
ゲンキ君::最近に合本復刊したからといって、今の時代にシリーズ全新訳がでる可能性も低そうだガルね。
亮人::悲しみ。。。ということで、今から各話の舞台となった土地に行ってみよー!!
ゲンキ君::急だガルな。
亮人::ここに用意した、宇宙自転車「ブルーフロンティア号」で、いざ出発ーッ!!!

  • 「太陽系無宿」アンソニイ・ギルモア

船長・亮人::ハイ、やっと到着ー!表題作の舞台、土星の衛星イアペデス!
副長・ゲンキ君::地図(ウィキペ)には、土星の衛星は「イアペトゥス」しかないけど、どういうことだガル?綴りが全く違うガル。
亮人::細かいことはいいんや!細かいことを気にしてたら、古いスペオペは読んでられへん。
ゲンキ君::ハイ。それでここが舞台の牧場だガルね。宇宙開拓者の《鷹》のカースが、価値ある現地生物を育ててた牧場(科学的な細かな考証は気にしないでネ)。牧場は、悪の博士クウ・スイの配下の《鳶》のジュッドが留守中に破壊してしまってたけど、また再建できたんだガルね。
亮人::牧場が壊され、仲間が殺され、銃で仇を撃ちに行く。まんま西部劇のプロットですな。
ゲンキ君::スペオペは元々は西部劇を換骨奪胎した宇宙物という意味だから、まさにそれそのものということガル。
亮人::またカースという主人公が、前髪をかき上げるのがクセやったり、ニヒルというかキザったらしいというか。
ゲンキ君::これも西部劇から移植された要素なのガルか?
亮人::まあ王道のストーリーやったな。では次の舞台へGO!

  • 「月面植物殺人事件」フランク・B・ロング

亮人::お次は、月面に到着。月のアペニン山脈の麓にある邸宅や。
ゲンキ君::邸宅の主の富豪が不審死をとげて、客として居合わせた太陽系植物園の園長カーステアズが探偵として活躍するんだガル。
亮人::死体の傍に、温厚なはずの移動性植物フラリフラリが歩いていたというのが推理の鍵になるんやったな。
ゲンキ君::そこで植物学者探偵の面目躍如だガル。現場の状況と、ヘンテコ植物の生態と、上手くミックスした推理物になってて、面白かったガル!
亮人::いま流行の、お仕事系探偵ライトミステリの嚆矢かもしれんなー。では次の舞台へGO!

  • 「大作《破滅の惑星》撮影始末記」ヘンリー・カットナー

亮人::次も舞台は月面だから、ひとっ飛び。月のとある場所にある、地下洞窟撮影所や。
ゲンキ君::冥王星を舞台にした《破滅の惑星》を映画化しろと社長に言われた映画監督。でも冥王星は、放射能を帯びた星で、撮影できない。そこで月の地下撮影所だガル。
亮人::冥王星の怪獣も連れてくるんやけど、コントロールしてたはずが暴走。ちょっと『ジュラシック・パーク』っぽい展開やったな。ハラハラドキドキやった。
ゲンキ君::月世界ハリウッドという設定からして、楽しげだガル。
亮人::作者のカットナーは邦訳作品は多数あるけど、このシリーズももっと読みたいぞ。では最後の舞台へGO!

亮人::最後は、キャプテン・フューチャーの短篇ということで、フューチャーメンたちの基地がある月のチコ・クレーター!ピンポーン、いますかー?アポイントとってた、亮人船長一行です!
ゲンキ君:: (月面なのに、なんでインターホンがあるんだガル?)
グラッグ::やあやあ、待ってたンだよ。さあ中に入って。
亮人::フューチャーメンのグラッグさん!よろしくお願いします。
グラッグ::生憎、キャプテンは急な任務で地球に行っちまいましたよ。
ゲンキ君::おおーそれは残念だガル。
亮人::でも今回の短篇の主人公はグラッグさんでしたから。グラッグさんのお話を聞かせてください!
グラッグ::OK!
亮人::グラッグさんといえば、怪力無双の鉄人ロボットとして有名で、オレも大ファンなんですが、今回は抑鬱症状がでて僻地療養されてたらしいですね。
ゲンキ君::(ロボットなのに精神を病むことがあるのかガル?)
グラッグ::そうなんだ。オットーの減らず口には悩まされるは、食欲は減退するは、大変な目にあったよ。
亮人::でもいつもマジメに思い悩むけどユーモラスなところが、グラッグさんの魅力ですよ!今回も結局、療養と同時に、事件も解決してらっしゃいますし!
ゲンキ君::そうです!これからも太陽系の平和のために頑張ってくださいガル!
グラッグ::ありがとう!
亮人::短かったですけど、そろそろ時間ですね。貴重なお話をありがとうございます!では失礼します。
グラッグ::亮人君もピンチのときは、いつでもこのオレとキャプテンを呼んでくれたまえ!では!
……
ゲンキ君::いやーいい人(ロボット?)だったガルね!
亮人::太陽系の平和を守る、真っ直ぐな精神のロボットやったな!
ゲンキ君::ではそろそろ帰るガルか?
亮人::最後にせっかく月まで来たんやから「月の法善寺横丁」に行こかー!
ゲンキ君::いやいや、「月の法善寺横丁」は、月下に照らされた大阪の法善寺横丁という意味で、月面の法善寺横丁という意味じゃないガルー(泣)
亮人::ああーそうやったかーww ♪ネタのためなら、ゲンキも泣かす〜♪
ゲンキ君::それは「月の法善寺横丁」じゃなくて「浪花恋しぐれ」だガル!どっちも法善寺横丁の歌だけど!もうメチャクチャだガル!
亮人::月だけに、ネタもツキたw
ゲンキ君::もうええわ!帰りますよ!ガルガル!!

収録

  • 「鉄の神経お許しを」エドモンド・ハミルトン(《キャプテン・フューチャー》シリーズ)
  • 「大作《破滅の惑星》撮影始末記」ヘンリー・カットナー(《月世界ハリウッド》シリーズ)
  • 「月面植物殺人事件」フランク・B・ロング(《植物学者探偵ジョン・カーステアズ》シリーズ)
  • 「太陽系無宿」アンソニイ・ギルモア(《太陽系無宿ホーク・カース》シリーズ)

★★★★☆

三上延『ビブリア古書堂の事件手帖7〜栞子さんと果てない舞台〜』

あらすじ
ビブリア古書堂に迫る影。太宰治自家用の『晩年』をめぐり、取り引きに訪れた老獪な道具商の男。彼はある一冊の古書を残していく―。奇妙な縁に導かれ、対峙することになった劇作家ウィリアム・シェイクスピアの古書と謎多き仕掛け。青年店員と美しき女店主は、彼女の祖父によって張り巡らされていた巧妙な罠へと嵌っていくのだった…。人から人へと受け継がれる古書と、脈々と続く家族の縁。その物語に幕引きのときがおとずれる。

亮人::ビブリア古書堂、ついに完結や!!
使い魔・ゲンキ君::月9ドラマとか紆余曲折を経て、6年越しの完結だガルね。
亮人::第一巻は、発売日に買ったんやったよね。あの時は、ただの新刊だったのに、こんなにビッグネームになるとは。。。オレの先見の明を褒めてーや!!
ゲンキ君::いま流行のライトミステリの文庫の嚆矢だガルしね。それに真っ先に飛びついたのは、偉かったガル。
亮人::さて本書。まず、古本パワーのインフレがヒドイ!
ゲンキ君::第一巻ではサンリオSF文庫とかでワーキャーやってたのに、最終的にはシェイクスピア初版一億円とか!ガルー!
亮人::ドラゴンボール並みのインフレやな。
ゲンキ君::一方でストーリーは、シリーズ終盤にかけて、話どんよりとした方向に進んで行くガル。
亮人::誰が誰の子で親子の確執がー、とか正直しんどい。普通にカワイイ店主さんが古本の知識を駆使して推理するだけでオレ的には良かったのに。
ゲンキ君::まあとりあえず、カワイイ栞子さんがハッピーエンドを迎えられたので、御主人的にはオールOKだったガルよね?!
亮人::そうやな。6年間でハッピーに終わって良かったわ。
ゲンキ君::ところで第七巻が発売して半年以上も放置していたのは、なぜだガル?
亮人::「読むるべきか、積むべきか、それが問題だ!」
ゲンキ君::なにシェイクスピア名台詞風に言って誤魔化してるガル!今回のテーマがシェイクスピアだからって!
亮人::だってオレの感想ブログだモン!オレの「お気に召すまま」に!ゲンキ君という「じゃじゃ馬ならし」も大変だw
ゲンキ君::なにタイトルに引っ掛けて!もうええわ!ガルガル!

★★★☆☆

殊能将之『ハサミ男』

ハサミ男 (講談社文庫)

ハサミ男 (講談社文庫)

あらすじ
美少女を殺害し、研ぎあげたハサミを首に突き立てる猟奇殺人犯「ハサミ男」。三番目の犠牲者を決め、綿密に調べ上げるが、自分の手口を真似て殺された彼女の死体を発見する羽目に陥る。自分以外の人間に、何故彼女を殺す必要があるのか。「ハサミ男」は調査をはじめる。精緻にして大胆な長編ミステリの傑作!

亮人::ハサミ男、読んだで〜!チョキチョキ!!
使い魔・ゲンキ君::これは、今は亡き岸和田のブックオフの閉店セールで買ったんだガルな。
亮人::一番最寄のブックオフが無くなった悲しみ。。。
ゲンキ君::ということで、本書内容に行くガル。
亮人::連続殺人鬼「ハサミ男」が主人公やな。
ゲンキ君::ハサミ男が、次のターゲットを尾行していたら、ターゲットが何者かに殺されてしまうガル。しかも、被害者の首にはハサミが刺さっていて、「ハサミ男」の犯行そのまま。自分がハサミ男なのに。ということでハサミ男が偽ハサミ男の犯行を追う話だガル。
亮人::殺人鬼が探偵という設定からして斬新でオモロイよなー!
ゲンキ君::そして何よりの特徴が……
亮人::●●●●●●*1物のミステリということやな!
ゲンキ君::伏字にしても、そういう言い方したら、分かっちゃうかもガルー!
亮人::伏字にしたんやから文句ないでしょ?大丈夫。。。
ゲンキ君::大丈夫……なのか……?
亮人::とりあえず、そういうネタということだけは知ってたけど、具体的な内容は知らない状態で読みはじめたんよ。
ゲンキ君::それでも楽しめたガルな!
亮人::こういう●●*2の錯誤のパターンは、今でこそ各所で使われてるの散見されるけど、そのベーシックやからな!
ゲンキ君::構成が上手いので見事に騙されるガル。
亮人::語り口も面白くグングン読める。まさに傑作やな!
ゲンキ君::あとこの終わり方も好きだったガルな。
亮人::この邪悪なハッピーエンド!!これはいいのか?w
ゲンキ君::なんしか、こんな傑作を残したのに、もう読めないのが惜しいガルね。
亮人::残された作品を、読んでいくわ。
ゲンキ君::買い集めようガル。
亮人::ところで話は変わるけど、ハサミ男が捕まったら、警察は「コブシ」を握り締めながら「カツ丼」を出すんかね?
ゲンキ君::取調室でカツ丼?
亮人::そうそう!ハサミだけに、グーが勝つ(具がカツ)!!なんちゃってww
ゲンキ君::ジャンケンに勝ったら、罪も帳消しにー!?って、そんなワケない!もうええわ!ガルガル!
★★★★★

豊田有恒『退魔戦記』

あらすじ
時まさに文永十一年(西暦1274年)夏、外敵蒙古襲来を目前に風雲急を告げる四国伊予の浜辺に、一隻のタイムマシンが着陸した。中から現れた三人の未来人は、土地の領主・河野通有に向い蒙古撃退の助力を申し出る。彼らの歴史に寄れば、蒙古は元寇を端緒として二本を征服、さらに全世界を制覇したという。その圧制に耐えかねた彼らはついに歴史改変の意志を固め、はるか七百年の時の彼方へと逃れ来たのであった。運命の十月二十日をめざし、未来人と鎌倉武士との奇妙な共同作戦がかくして開始された……!得意の歴史テーマに作者会心の筆をふるった力作長編!

亮人::豊田有恒先生のタイムパトロール物の時間SF『退魔戦記』を読んだでー!
使い魔・ゲンキ君::今回読んだハヤカワ文庫は、今年2月に難波の山羊ブックスさんで買ったものガルな!
亮人::ちなみに、角川文庫版も持ってるんやでw
ゲンキ君::2年ほど前に角川文庫を買ってたクセに、ハヤカワ文庫も欲しくなったんだガルね!?
亮人::はいスイマセン。コレクター心を分かってや〜w
ゲンキ君::ということで、内容へ行くガル。元寇の第一戦・文永の役の直前に、伊予の浜辺に謎の飛行物体が着陸するガル。
亮人::それが未来人のタイムマシンやったんやね。
ゲンキ君::なんとその未来人、蒙古・元の国が全世界を支配した七百年後の未来から来たって言ってるガル。
亮人::日本もモチロン元寇で負けて、蒙古に支配され続けてるんやなー。
ゲンキ君::ということで未来人は、日本を助けて、元寇を撃退して、やがて蒙古が衰退するよう、歴史を変えるためにタイムマシンで鎌倉時代に来たガル。
亮人::歴史を変えようとするからには、未来蒙古のタイムパトロール「時間巡邏隊」も追ってくる。果たして、未来人に戦闘訓練された鎌倉武士たちは、文永と未来の二つの蒙古軍団を相手に勝つことができるのか?!
ゲンキ君::まあ大味っちゃあ大味だけど、ダイナミックで面白かったガルな!
亮人::とくに言葉遊びが面白いわ!「タイムマシン」が「退魔船」だったり、豊田有恒のこの軽妙な言葉づかい、大好きだわ!
ゲンキ君::あと、鎌倉武士たちがカワイイかったガル!
亮人::未来の船の機能的な内観に対して、「彫刻や漆塗りなどの装飾もない」「美的感覚がない」と切り捨てて、勝手に熊の毛皮を敷いて、殿様の居室状態にしたりw
ゲンキ君::あと鎌倉武士たちが、大三島明神を心酔してるのも面白かったガル。
亮人::敵に捕らえられたとき、鉄格子に流れてる電流を「雷電の気が走っている」と説明されて、「われらの神、雷の大三島明神についに見放された」と絶望したりw でもその後、味方に連絡する無線を「雷電の波を使ってる」と説明されたら、「大三島明神はやはり我らに付いてくれている!日本こそ神の国だ!」と一喜一憂したりw
ゲンキ君::仕舞いには、甲冑姿で抜刀して宇宙遊泳までしだすガル!
亮人::これが意外に未来兵器の未来蒙古軍団に有効だったりw鎌倉武士の勇士を堪能したわ!!
ゲンキ君::最高に楽しい歴史エンタメだったガルな!!
亮人::最後に一つ、謎かけを。
ゲンキ君::またガルか?
亮人::「元寇」とかけて!
ゲンキ君::「元寇」とかけて?
亮人::「ゲンキ君の健康診断」ともかけて!
ゲンキ君::!?!?「ゲンキ君の健康診断」ともかけて?
亮人::「名探偵ケンが真相を閃いた瞬間」ととく!
ゲンキ君::「ケンが真相を閃いた瞬間」ととく?そのこころは??
亮人::どちらも「げんちをとって(元、地を盗って/ゲン、血を採って/言質を取って)」「けんさする(剣、刺する/検査する/ケン、察する)」でしょう!!!
ゲンキ君::三重の謎かけ!?しかも力技だガルww
亮人::おあとがよろしいようで!!
ゲンキ君::ガルガル!!
★★★★★

川又千秋『火星人先史』

あらすじ
探検時代を経て、地球から火星へ入植した際、人類は、単純労働力および緊急時のタンパク資源として高度に進化したカンガルーを大量に送り込んでいた。が、カンガルーたちは、徐々に自我を抱き、人間たちよりはるかに火星の土地になじんできていたのだった。そして……地球におけるカンガルーの種類が全て滅んだとき、彼らは自ら正真正銘の火星人であることを名乗り、地球人への反攻を開始しはじめた!火星を舞台に、雄大な宇宙観と構想により展開する、日本のSF作品の金字塔。

亮人::川又千秋星雲賞受賞作『火星人先史』を読んだで〜!
使い魔・ゲンキ君::80年代前後にSFマガジンで連載されて、早川書房から単行本が出て、1984年に角川文庫から文庫化されたのが本書だガル!2000年には徳間デュアル文庫から復刊もされた作品だガル!
亮人::昔にデュアル文庫版はブックオフで見かけたことあるけど、何故か買わなくって、でもその後もずっと気になってた。
ゲンキ君::そして、今年の八月に天神橋筋のジグソーハウスさんで、表紙の武装カンガルーに惹かれて買ったんだガル。
亮人::この角川文庫のカンガルーのつぶらな瞳に見つめられたら、買ってまうやろー!!
ゲンキ君::表紙は可愛いけど、実は武装カンガルーと地球人の泥沼の戦争SFだガル。
亮人::まず火星がテラフォーミングを終えて、地球人の入植がはじまったところからスタート。
ゲンキ君::そこで、単純労働力&非常食料として、知能を強化したカンガルーを火星に連れて行ったガル。
亮人::これがまたヒドイ。カンガルーは、粗悪な冷凍睡眠で火星に連れて行って、生きてたら労働力、冷凍睡眠から目覚めなかったら食肉に加工される。強化カンガルーは人語もしゃべれるのに、いらなくなったら食料に、って鬼畜すぎるやろ!!
ゲンキ君::そして入植が進んでいくと、都市も発展して、食糧事情もよくなっていって、やがてカンガルーが必要なくなってくるガル。
亮人::そしてらもうポイーよ。
ゲンキ君::野に放たれたカンガルーは、鉄砲を集め、そして。。。
亮人::武装蜂起や!独立戦争や!
ゲンキ君::カンガルーは自ら「火星人」を名乗り、地球人入植者に宣戦を布告ガル。そして破竹の勢いで地球人基地を撃破していくんだガル。
亮人::カンガルーは、なぜか対空射撃が絶妙に上手くて、爆撃機や宇宙船をことごとく撃ち落していくのはオモロかったなw なぜあの小さな手で、人間の銃火器の扱いが上手いんや!?
ゲンキ君::地球人陣営も、カンガルー陣営のことを「奴隷」「獣」「ガルー」と舐めきっていて、それも原因で地球側は敗走を続けるんだガル。
亮人::この泥沼の展開は、黒人問題やベトナム戦争の投影が感じられて、重いけど面白いところやったな。
ゲンキ君::ストーリーは、地球人の歴戦の戦士である主人公ノヴ・ノリスが瀕死の重傷を負ったことから、どんどん進んでいくガル。
亮人::重傷やから、脳を取り出してカンガルーの体に移植して、スパイとしてカンガルー陣営に潜入させようっていう超展開!!
ゲンキ君::しかし、スパイに行ってしまった後に、任務を指揮している地球側の上官たちが全員戦死するという、また超展開ガル。
亮人::ということは、スパイ潜入から戻ろうにも、誰も自分が地球人だと言うことを知らないし、カンガルーの姿から元に戻れる目も一切なくなったし、オワタ状態!
ゲンキ君::まるで映画『インファナル・アフェア』だガルな。
亮人::この展開には、ドッキドキが止まらんかったな!!
ゲンキ君::地球に帰る道を模索したりするけど、逆に地球人陣営に狙われるノリスたちは、ついに追い詰められるガル。
亮人::そこでカンガルーたちに助けられる。
ゲンキ君::そして話を聞いていくうちに、カンガルーは心で会話できることを知り、「火星の意思」によって動かされていることを知るんだガル。
亮人::テレパシーみたいなモンで、カンガルー同士が通じ合うと同時に、火星のガイアみたいなモンとも共鳴してることが分かるんよな。壮大でスリリングな展開に興奮した!
ゲンキ君::最後は、宇宙戦艦による核攻撃をどう回避するのかという展開だガル。
亮人::火星の意思を自分も感知したノリスたちは、カンガルーと共闘して、宇宙戦艦による核攻撃を阻止できるのか?
ゲンキ君::そして火星の意思を太陽系にも広められるのか、という壮大なテーマにも展開しつつ終わっていくんだガル。
亮人::熱い展開の連続で興奮したな!これはオレの中でもベスト級やったわ!
ゲンキ君::こんな面白い名作が眠っていたなんて信じられないガルな!!あとちなみに言っておくガルけど、ゲンキ君の「ガル」語尾はワンコ語であって、カンガルーの「ガルー」とは全く関係ないガル!高潔な使い魔のゲンキ君と、砂まみれのカンガルーを一緒にしないで欲しいガル!!
亮人::はいはい、分かった分かった。さて突然やけど、ここで一つ謎かけを!
ゲンキ君::突然だガルな?
亮人::「火星人先史」とかけて!
ゲンキ君::「火星人先史」とかけて?
亮人::「服を買いに行かされる」ととく!
ゲンキ君::「服を買いに行かされる」ととく?そのこころは?
亮人::どちらも「ゆうたいるい(有袋類/言うた衣類)」を「かってこい(狩ってこい/買って来い)」と言われるでしょう!!
ゲンキ君::おあとがよろしいようで!ガルガル!!
★★★★★

中村融編『猫SF傑作選 猫は宇宙で丸くなる』

あらすじ
猫ほど素敵なエイリアンはいない!マシュマロを焼き、人間の言葉を話し、宇宙で猫パンチを放つ――奇妙で可愛い猫たちの物語!文庫初収録3匹、本邦初訳4匹!
誇り高く孤独を愛するが、寂しさを感じたとき彼らはそばにいてくれる。
甘えるが媚びず、気まぐれだが頼りになる相棒。そんな不思議な生き物の名は猫――。マシュマロを焼く天才猫が登場するコイストラ「パフ」、宇宙船に乗せられた“船猫"が活躍するナイ「宇宙に猫パンチ」、傑作の誉れ高いライバー「影の船」など、愛すべき個性豊かな10匹の猫たちが宇宙狭しと跳び回る。名アンソロジストがすべての猫好きとSFファンに贈る、猫SFアンソロジーの決定版!地上でも宇宙でも、猫はやっぱり猫なのだ。

使い魔・ゲンキ君::ウーニャーゴロニャゴ!
亮人::どうした、どうした?
ゲンキ君::今回は『猫SF傑作選』ということで、ニャンコ化してお送りするニャ!
亮人::君はワンコの使い魔やろ?それがニャンコ化とは、あざと過ぎるやろ!
ゲンキ君::雑貨グッズとかでもニャンコの物ばっかりだニャ。昨今のニャンコ人気は異常だニャ。だから、その波に乗るんだニャ〜。
亮人::思いっきり大衆に迎合して、ええんか。。。
ゲンキ君::まあまあ気にせず、本書の感想いってみるニャ!
亮人::猫SFだけを集めたアンソロジー、まさかの竹書房文庫から登場!
ゲンキ君::竹書房文庫は、オールディスの処女作『寄港地のない船』も出したし、SFに力を入れていくみたいだニャ。
亮人::これからも期待やね!
ゲンキ君::しかも今回のアンソロジー中村融氏による編纂だニャ。
亮人::創元文庫ではお馴染みの中村融印アンソロジーやけど、安心安定のクオリティやからね!買うしかない!
ゲンキ君::さて本書ニャゴ。本アンソロジーは、地上編と宇宙編に分かれてるニャン。地上編はSF的要素によって猫の気まぐれさが増幅された話が多くて、宇宙編は人間の相棒としての猫を描いた話が多かったニャ。
亮人::どっちも違った味わいで面白かったな!
ゲンキ君::ということで、各話のレビュウいってみるニャ!

  • ジェフリー・D・コイストラ「パフ」

亮人::一匹目のニャンコはパフちゃん!♪パフ〜ザマジックドラゴン〜♪
ゲンキ君::ピーター・ポール・アンド・マリーは関係ないニャ。
亮人::はい。小学校の時、合唱で歌ったよね!
ゲンキ君::そっちのパフは置いといて、小説の内容にいきニャさい。
亮人::はい。研究者が娘にねだられて仔猫を飼う。でもスグに大人になって家で暴れるから嫁さん怒りMAX。そこでずっと仔猫のままのニャンコを開発する。十数歳まで仔猫の姿で、寿命の寸前に大人の姿になって亡くなるという。非常に都合のよい生物を作ってしまう。
ゲンキ君::しかしイザ飼いはじめると、知能が異常に発達することが判明するニャ。夜中に自分でマシュマロを焼いたり、野犬に罠を仕掛けたり、しはじめるニャ。
亮人::それが、ちょっぴりホラーテイストなオチにつながっていく。
ゲンキ君::ニャンコが人に従順なだけではなく、凶暴性も持っているってことを思い出させてくれて、刺激的なお話だったニャ!

亮人::二匹目のニャンコは、ピネロピちゃん!ヤング師匠
ゲンキ君::『ジョナサンと宇宙クジラ』にも収録されている作品だけど、新訳だニャ!
亮人::冬の崖にたたずむ謎の少年を助けたことからはじまるストーリー。助けた謎の少年が、おばあさんと猫のピネロピと交流して、最後のハートが温かくなるオチ。いい話だなー!
ゲンキ君::はたして「贈りもの」とは何ニャのか?
亮人::さすがヤング師匠は、ハートウォーミングですなー。
ゲンキ君::ところで、ヤングのことをヤング師匠と呼ぶのは、やめニャさい!!

  • デニス・ダンヴァーズ「ベンジャミンの治癒」

亮人::三匹目のニャンコは、ベンジャミンちゃん!
ゲンキ君::マジメな話なんだけど、一点が破壊力ありすぎて大爆笑だったニャ!
亮人::自分が生まれた時から一緒だった愛猫のベンジャミンが亡くなってしまう。最期に抱きしめたら、若い姿になって復活。それ以来、ベンジャミンは歳をとらない猫になって、再び一緒に暮らすことに。
ゲンキ君::でもこの異様な能力のことは隠して暮らしていくんだよニャ。
亮人::しかし彼女が出来る。彼女に能力がバレる。しかも彼女には事故で長年意識不明の弟が。さて能力を使って欲しいという彼女の願いを聞いてしまうのか?
ゲンキ君::すごくシリアスに苦悩するんだニャ。しかしそのシリアスと対比するようにクライマックスで衝撃的情景が!
亮人::一言だけで表すと「ローストチキン」。
ゲンキ君::笑いが止まらなかったニャ〜!

  • ナンシー・スプリンガー「化身」

亮人::四匹目のニャンコは、レディ・キャットちゃん!
ゲンキ君::これはちょっと分からない話だったニャ〜。
亮人::猫は九つの生命を持つと言われているが、このキャットは九回目の生を全うしようとしている。最後の生だから、いい男を捕まえようと(?)カーニバルにもぐりこむ。なぜか人間に化けて、ストリップ小屋にいつく。心を読める男に恋をする。結ばれる。男に祝福を与えて去る。
ゲンキ君::なんだか幻想的だけど、よく理解できてなかったニャ。まあ御主人は、こういう話に対するセンサーが皆無だからニャw
亮人::はい。すいません。

亮人::五匹目のニャンコは、へリックスちゃん!
ゲンキ君:: スタージョンの書籍初収録の話だニャ。
亮人::新素材で画期的なビンを発明した男。しかしそのビンに変な男の魂を捕獲してしまう。その男が言うには「謎の存在に追われている、魂が食われそうだ、助けてくれ」と。助けるには新しい肉体が必要で、その肉体は猫のヘリックスのがちょうどいいらしい。ということで、ビンによる猫の教育が始まる。
ゲンキ君::そしたら、だんだんヘリックスがふてぶてしくなっていくんだニャw 言葉を覚えて、だんだん主人を下僕のように扱ったりしだすニャ。
亮人::しまいにはタバコを吹かせながらメシの催促をしてきたりw
ゲンキ君::もうメチャクチャだニャ!
亮人::ゲンキ君はそういう子にはならないでね?
ゲンキ君::分かってるニャーン!
亮人::しかもオチも、どんでん返しが効いてて、本当にヘンテコで楽しい話だった!

  • ジョディ・リン・ナイ「宇宙に猫パンチ」

亮人::六匹目のニャンコは、ケルヴィンちゃん
ゲンキ君::ここからは宇宙編だニャ!
亮人::最新型AIを積んだ最新型宇宙船の試験航海。船には船猫のケルヴィンも乗せて、出航。途中、敵性宇宙人の支配エリアに。敵性宇宙人の攻撃に遭い、人間の乗組員は全員行動不能に。
ゲンキ君::そこでケルヴィンが大活躍するニャ!
亮人::タイトルどおり本当に「宇宙に猫パンチ」するし!ハインラインの『夏への扉』の猫ピート活躍シーンをさらに凝縮して宇宙に持って行ったみたいな爽快感!サイコー!
ゲンキ君::この邦題もいいニャ!
亮人::原題を直訳すると「(猫に)お金の価値がある」だけど、思い切って「宇宙に猫パンチ」にしたらしい。これは良い判断!タイトルと共に爽快なお話だった!

  • ジェイムス・ホワイト「共謀者たち」

亮人::七匹目のニャンコは、フェリックスちゃん!
ゲンキ君::秋山瑞人の『猫の地球儀』を連想させるお話だったニャ!
亮人::宇宙船に乗せられた船猫のフェリックスや実験用モルモットやネズミたち。宇宙に出て無重力のせいか、知能とテレパシーが急発達。このまま人間の宇宙船にいたら、新惑星が生物に適しているかを試すための実験動物にされてしまう。そこで、みんなで逃げ出すことにした!
ゲンキ君::宇宙に出ると知能などが急発達するというのは、堀晃の「アンドロメダ占星術」も連想させるニャ!
亮人::なんしか、逃亡は成功するのかドキドキだし、どんなハッピーなエンドを迎えるのか、楽しく読めた作品でした!

  • ジェイムズ・H・シュミッツ「チックタックとわたし」

亮人::八匹目のニャンコは、チックタックちゃん!
ゲンキ君:: 『惑星カレスの魔女』のシュミッツの作品だニャ。新潮文庫の『テルジーの冒険』の一部を短編としたものでもあるニャ。
亮人::法科大学生のテルジーが、イヤミな叔母の惑星に呼ばれたと思ったら、ハメられた! テルジーの相棒、カンムリネコのチックタックがこの惑星の保護動物に指定されたとかで、取り上げられることに!?逃げ出したテルジーとチックタックは、このピンチをどう乗り切るか?
ゲンキ君::今回のニャンコは、地球産の家猫ではない、地球外惑星カンムリネコだけど、特別に収録されたそうニャ。
亮人::テルジーとチックタックとの信頼感がええな!物語の解決方法も、展開が熱いし!でも最後のオチの2ページは、やりすぎな気がしたけれどw
ゲンキ君::まあそこはご愛嬌だニャン!

亮人::九匹目のニャンコは、バットちゃん!
ゲンキ君::同人誌(?)に訳出されたのみで、正式な出版物としては初訳の作品らしいニャ。
亮人::女主人公スティーナと愛猫バットで、宇宙を冒険の旅して廻ってるって設定が熱いよ!そして今回のターゲットは幽霊船(宇宙船)。猫の特質を活かして事件を解決するんだけど、それも猫心を分かってる展開でええな!
ゲンキ君::その猫の特質が、タイトルの「猫の世界は灰色」というのにも通じてるのも良いニャン!
亮人::これはイッキにお気に入りになったわ!ノートン先生、集めねば!
ゲンキ君::御主人の父上からパクって、《太陽の女王号》シリーズ全2巻《ゼロ・ストーン》シリーズ全2巻《ビースト・マスター》シリーズ全2巻の計6冊は持ってるニャン。
亮人::他の単発モノも集めちゃる〜!!

亮人::最後の十匹目のニャンコは、キムちゃん!
ゲンキ君::これは、御主人の嫌いなタイプの話だニャンねw
亮人::そうそう。世代間宇宙船で、一般住民エリアの文明が退化してドロドロのグチャグチャになってるパターンの話。でも面白かったよ。導入部分は手こずったけど、ちゃんと勧善懲悪でシッカリSFになって終わるし。
ゲンキ君::昔の講談社文庫の『世界SF大賞傑作選』に収録されて以来、40年ぶりに陽の目を見たという、レアな作品でもあるニャ。
亮人::読む価値アリやね!
ゲンキ君::それでは、まとめに行くニャ。
亮人::やっぱり動物は最高!カワイイし、SFとしても面白かったし!全編面白かったけど、お気に入りは、ジョディ・リン・ナイの「宇宙に猫パンチ」とアンドレノートンの「猫の世界は灰色」かな!
ゲンキ君::宇宙の冒険は胸躍るニャ〜!
亮人::とくに「宇宙に猫パンチ」は傑作ね!ガスコンロみたいな名前のクセに、いいSF書くやんww
ゲンキ君::そうそうそう、♪リンナイ〜♪って、それはガス器具の製造会社だガル!「リン」と「ナイ」は別の名前だから、くっつけたら駄目ガル!って思わずニャンコ語尾を忘れて、通常に戻っちゃったガル。もうやめさせてもらうわ!ガルガル!!

  • 〈地上編〉
  • 〈宇宙編〉
    • ジョディ・リン・ナイ「宇宙に猫パンチ」
    • ジェイムス・ホワイト「共謀者たち」
    • ジェイムズ・H・シュミッツ「チックタックとわたし」
    • アンドレノートン「猫の世界は灰色」
    • フリッツ・ライバー「影の船」

★★★★★

水見稜『食卓に愛を』

食卓に愛を (ハヤカワ文庫JA)

食卓に愛を (ハヤカワ文庫JA)

あらすじ
異星人のメッセージの解読結果は“メシを食わせてやる”だった。宇宙局は御招待にあずかるべく大食漢の松崎を指定の木星衛星軌道へ送り込んだが…食と愛の宇宙的関係を描く表題作ほか、300年の刑期を終えて出所する少女パティと初対面の家族との心の交流を描く「パティの出てくる日」。恋人と田舎町の映画館に入った僕はどう見ても宇宙人の3人組と出会う。彼らと共に観た映画には…故郷喪失者の想いを描く「シネマハウスの夜」。死んでしまった松崎が宇宙の胃袋のような世界を巡る書き下ろし中篇「神の糧」。などSFマインドあふれる8篇収録。

亮人::水見稜の唯一の作品集!
使い魔・ゲンキ君::先月に天神橋筋のジグソーハウスさんで買ったガルな!
亮人::フォロワーさんが読まれてたので、前から欲しかったんよ。
ゲンキ君::見つけたときは飛び上がってたガルなw
亮人::大きな声で言えないけど、帰って調べたら密林中古で二万二千円。。。
ゲンキ君::まあ密林中古は少し世間で話題になっただけで安値のが全部売れて、高値が残ってるだけというパターンも多いガル。全然アテにはならないガル。
亮人::まあ参考程度やな。
ゲンキ君::そもそも、水見稜といえば創元SF文庫の『マインド・イーター【完全版】』も新刊発売日に買ったのに、まだ積んでるガル。
亮人::だって『マインド・イーター』は内容が重そうなんだモン。ということで、より軽い読み味っぽいコッチを先に読んでみる!
ゲンキ君::本書の収録作品は主に2パターンに分けられるガル。
亮人::シリアスで情感重視な前半と、コミカルでSF重視な後半。どちらも味わい深いが、特に後半が面白かった!
ゲンキ君::大食漢・松崎が主人公の連作3作だガル。
亮人::三大欲求の性欲ばっかりが美しかったりグロテスクだったりで創作物に描かれるけど、食欲も原初的で官能的で愛に満ちた行為なんよ。
ゲンキ君::そんな愛に満ちた行為を宇宙人が求めてくる表題作が傑作だったガルな。
亮人::それでは全作レビュウ、行ってみよう!

  • パティの出てくる日

ゲンキ君::塀の中の家で暮らす女の子の話だガル。
亮人::実はこの子は、懲役300年の刑に服役している。寿命で亡くなっても遺伝子から復活させて合計300年を全うさせようという。もうこの制度も無くなっているんだけど、唯一まだ実行されているケースがこの女の子パティ。
ゲンキ君::そしてついに出所の日が来たガル。
亮人::親族が集まって出所を祝う。まあその時の人間の心情を描く物語で、制度の精緻さとかにツッコミを入れるのは無粋かな。

  • シネマハウスの夜

ゲンキ君::お次は映画館が舞台だガル。
亮人::ボーイ&ガールが場末の映画館でよく分からない映画を見ようといてたら、奇妙な男の三人組が入ってくる。どうやらこいつらは宇宙人らしい。
ゲンキ君::そして映画が始まるガル。これが墜落した宇宙船を撮ったドキュメンタリーだったガル。
亮人::この宇宙船が、故郷に帰れない宇宙人たちの心の拠り所の教祖みたいなモンらしい。郷愁ってやつやな。
ゲンキ君::そして関係ないはずのボーイとガールも郷愁を共感するんだガル。
亮人::地球人も宇宙人も関係なく星に郷愁を抱くというテーマは美しいなー。

ゲンキ君::お次は、ネズミの様な謎の生物とロボットの話だガル。
亮人::世界の終わりを明示はしていないけど、カットバックで色々な描写をすることによって示していくのは上手いな。エリスンの「死の鳥」っぽい。
ゲンキ君::エリスンより分かりやすいガルけどな。

  • オーガニック・スープ

亮人::お次は、一番期待していた作品。
ゲンキ君::戦争の影が忍び寄る世界で、母親が出て行ってしまい家で一人ぼっちの少女の話だガル。
亮人::母親が残したのが、寸胴鍋がガスにかかっている。その中には、原初の地球の海のような生命のスープが。中から原始生物が飛び出してきたり。仕舞いには、生命の終着点である人間(母親っぽい)が飛び出してきたり。
ゲンキ君::とにかくブキミだったガル。しかしスープとか何かのメタファなんだろうけど、御主人の感覚では全く読み取れなかったガルなw
亮人::そういう素養がないんだよう。ごめんなさい。

  • プロンプター

ゲンキ君::お次は小品、全ての人にプロンプター(舞台とかで脇からセリフをコッソリ教える人)が見えるようになった男の話ガル。
亮人::謎の影のようなプロンプターに言われるがままに、自分もセリフを言ってしまう。操られているのか、自分の意思はどうなったのか、とにかくブキミなショートショートやったな。

  • 食卓に愛を

ゲンキ君::お次は、大食漢・松崎の連作の一本目だガル。宇宙人から「メシを食わせてやる」というメッセージを受け取った日本政府は、大食漢の松崎に接触の白羽の矢を立てるガル。
亮人::宇宙人は、害意などなく、ただ食によって愛を交流させようとするためだけに地球圏に来た。
ゲンキ君::最終的には、自分の身体を食べさせることが最大の愛ということになるガル。
亮人::三大欲求の食欲も性欲と同等の官能的行為ということやろなあ。

  • アレルギーの彼方に

ゲンキ君::お次は、大食漢・松崎の二本目。今度はアレルギーと食に関する話だガル。
亮人::アレルギーに関する思索がSFらしくてよい。食というのは、有機物を取り込む。つまり有機物のミックスと考える。しかし人間は長年で地球上の物は食べつくして、もう食べたことのない有機物はない。もう地球はミックスしようのないくらいまで食べて食べられしたので、拒否反応としてアレルギーが起こると。
ゲンキ君::そこで宇宙の物(宇宙人)を食べるんだガル。
亮人::このアレルギーに関する発想は新しいなー。発想に感動。

  • 神の糧

ゲンキ君::最後は、大食漢・松崎の三本目。最後は、松崎が死んでしまうところから始まるガル!?
亮人::死んだら、宇宙の高次元存在の胃袋のようなところで消化されて、次の生命になるというのは面白い発想。
ゲンキ君::輪廻転生をSF的に新解釈したってワケだガルな!
亮人::ところで話は変わるが、この『食卓に愛を』とうタイトル、『食卓にビールを』のタイトルのオマージュ元なんだろうか?
ゲンキ君::小林めぐみの軽いSFのライトノベル・シリーズだガルな!富士見ミステリー文庫から全6巻で出ていたガル。
亮人::富士ミスね!「どこがミステリやねん」という作品を乱発したり、「LOVE寄せ」という謎のキャッチフレーズを使ったりしていた、迷走レーベルやったよな。オレは好きやったけど。
ゲンキ君::最終的には富士ミスは地雷ばっかりという評が多かったガルか?
亮人::桜庭一樹を育てたレーベルでもあるし、地雷も踏んで楽しむという風潮がある時代やったよ。
ゲンキ君::御主人、地雷大好きだガルねw
亮人::そうや!地雷は男のロマンよ!!地雷を踏んでナンボよ!地雷を踏んでこその成長よ!ほらここにも「ぽちっ」(どっかーん)
ゲンキ君::さては御主人、今回はオチを思いつかなかったから、唐突な爆発オチにしたんだガルなww『食卓に愛を』は地雷じゃないので、見つけたら安心して読んでください!!ガルガル!!

  • パティの出てくる日
  • シネマハウスの夜
  • バルカローレ
  • オーガニック・スープ
  • プロンプター
  • 食卓に愛を
  • アレルギーの彼方に
  • 神の糧

★★★★☆

野田昌宏『銀河乞食軍団(1)―謎の故郷消失事件―』

あらすじ
もと《星潮》星系基地司令官である《頭目》ムックホッファ、もとオデッセウス級巡航宇宙艦機関長であるロケ松、坊主あがりの《和尚》に孤児のピーター……へんぴな自治星系《星涯》で星系政府や大手貨物業者相手に突ッぱる彼らを人呼んで《銀河乞食軍団》。ひょんなことから小娘パムの故郷探しにつきあううちに、乞食軍団はやがて宇宙規模の大事件の渦中へと――スペース・オペラの第一人者が満を持して放つ一大巨篇開幕!

亮人::銀乞!!
使い魔・ゲンキ君::ついに読みはじめたガルな!
亮人::シリーズ全21冊のうち半分くらいまで集めてたんやけど、残りは図書館の除籍本で穴埋めしてしまったんよなー。
ゲンキ君::本書も図書館除籍本ガル。
亮人::図書館除籍本は、表紙のコーティングが外せないから古本として価値を認めへんよ!
ゲンキ君::特に御主人みたいな古本美品主義の人にとってはねwガルガルw
亮人::追々ちゃんとした本でコンプする予定。
ゲンキ君::ということで野田大元帥の銀乞だガル!
亮人::キャプテン・フューチャーの翻訳でもおなじみの野田大元帥やけど、創作でも翻訳以上に野田節が発揮されてて楽しい!
ゲンキ君::まず基本設定は、退役軍人のムックホッファとロケ松が設立した、難破などの宇宙船の残骸からパーツを再利用するジャンク屋が舞台ガル。
亮人::ジャンク屋だから乞食軍団!
ゲンキ君::でもジャンク屋といえど巨大宇宙船を持ってたり大企業だガル!
亮人::そんな乞食軍団に美少女パムが飛び込んできて、故郷タンポポ村が謎の消失をとげたから助けてくれと。
ゲンキ君::そしてタンポポ村の消失を教えてくれた老人の救出ミッションというスリリングなスパイアクションな話になって、最後は謎の組織に封鎖されたタンポポ村の現地に突入して第1巻は終わりガル。
亮人::タンポポ村の現状が露わになるラスト一行が衝撃的やけど、そこに至るまでが本当にスルスルと読める。
ゲンキ君::さすが大元帥だガルね!
亮人::用語の使い方も大元帥らしくって大好き!
ゲンキ君::乞食軍団のある星系は《星涯(ほしのはて)》とか和風テイストで、セリフも江戸っ子調だし、これぞ野田節だガル!
亮人::まだまだストーリイは導入部分やから、第一部全11冊をちびちび読んでいきます!
ゲンキ君::ところで、本書の挿絵のロケ松がどう見ても野田さんの顔なんだがガル?
亮人::下の写真を参照。
ゲンキ君::これは驚いたガルね!御自分を投影なさってたのかガル?
亮人::もっと髪を横に束ねてるみたいな姿かと思ってたよ!これぞまさに「古事記軍団」ww
ゲンキ君::なんで角髪(みずら)だガル!もぅええわ!ガルガル!!
★★★★★

エラリー・クイーン『Yの悲劇』

Yの悲劇 (創元推理文庫 104-2)

Yの悲劇 (創元推理文庫 104-2)

あらすじ
行方不明をつたえられた富豪のヨーク・ハッターの死体がニューヨークの湾口に揚がった。死因は溺死ではなく毒物死だった。発端の事件につづいて、そろいもそろって常軌を逸した病毒遺伝の一族のあいだに、目をおおうような惨劇がくり返される。名探偵レーンの推理によれば、犯人はある人物にまちがいなかった。しかし、その人物が現実の問題として犯人であることは不可能なのだ。このおそるべき矛盾は、いったいなにを意味するのか?エラリー・クイーンが、ロス名義で発表した四部作中の最大傑作で、その周到な伏線と明晰な解明の理論は、読者のすべてを魅了する。

亮人::ワイにとっては初クイーンやな!
使い魔・ゲンキ君::先日のブックオフでたまたま見つけたから買ったガル!
亮人::翻訳ミステリ大賞さんのブログの「初心者のためのエラリー・クイーン入門」の記事(⇒http://honyakumystery.jp/1377210623)をワイが見て、これは読まねばと思ったワケよ。
ゲンキ君::フォロワーさんにもクイーンを偏愛してる方がいて、読みたかったんだガルな。
亮人::どうでもいいけど、ワイはエラリー・クイーンって女性作家だと思ってたわ。
ゲンキ君::それはただミルキーホームズ(エラリー姫百合)と名探偵コナン(妃英理)からの思い違いなだけガル!
亮人::まさか男性二人組のペンネームだっただなんて!?
ゲンキ君::驚きは分かったから、小説の内容へ行くガル。
亮人::富豪ヨーク・ハッターの自殺から始まって、盲目聾唖の娘の毒殺未遂、そして富豪一家ハッター家の女帝の撲殺。
ゲンキ君::行き当たりばったりなようで計画的だったり、つかみどころの無い事件だったガル。
亮人::しかしそこはフェアな本格ミステリを志向するクイーン。小さな伏線もきっちりハマって最後には一つの理論的解決に至るのが気持ちいい!
ゲンキ君::まさか撲殺に使われたマンドリンにも、ちゃんとシッカリした理由があったなんて驚きガル!
亮人::荒唐無稽とも思われる犯人の行動にもシッカリ推理の理屈が通っていてスゴイ。そしてまさかの犯人。
ゲンキ君::犯人については、現代日本の「少年法」の議論にも通じるレーン氏の最後の苦悩と行動には驚いたガルね。
亮人::司法の能力の限界に気づいているレーン氏は、ワイも共感やな。
ゲンキ君::あとハッター家の呪われた血っていうのも驚きだったガル。
亮人::カルテに「ワッセルマン反応」とあるから「梅毒」のことだと思うんだけど、一族に遺伝で汚染が広がる病気だったんだ?
ゲンキ君::時代性もあるけど、メチャクチャ怖い書き方だったガルな。
亮人::イヤな話だったけど、ミステリの傑作だった!
ゲンキ君::これはクイーンのほかの小説も集めないとガル!
亮人::ワイは、『災厄の町』は旧版のハヤカワ文庫で持ってるから他の本もハヤカワ文庫で集めようかと思ってたけど、《国名》シリーズは創元文庫でもいいかもなー。早く集めて読みたいゾ!
ゲンキ君::ところで今日はなぜ御主人の一人称が「ワイ」なんだガル?
亮人::ちょっとワイって言うことによって刺激的な人格を演出しようかと思って!これがホントの「ワイのシゲキ」!
ゲンキ君::おあとがよろしいようで!ガルガル!
★★★★★

横溝正史『扉の影の女』

扉の影の女 (角川文庫 緑 304-26)

扉の影の女 (角川文庫 緑 304-26)

あらすじ
築地の橋下で、若い女の変死体が発見された!被害者は鋭い帽子の留め針で首筋を一突きにされ、そばには謎めいた手紙の切れはしが……。
金田一耕助の事務所を訪れた依頼人の女性は、この事件の目撃者だった。だが、その供述によると、犯行現場は西銀座にある人けのない路地だという。俄然、闘志を燃やした金田一は事件解決に乗り出していった。
金田一耕助の日常生活を浮き彫りにした異色作。ほかに「鏡が浦の殺人」を収録。

亮人::今年二冊目の金田一耕助です!
使い魔・ゲンキ君::フォロワーさんが、『扉の影の女』は金田一の日常生活に萌えるって仰っていたので、手にとってみたガル!
亮人::250ページの「扉の影の女」と100ページの「鏡が浦の殺人」、二篇収録やね。
ゲンキ君::まずは「扉の影の女」だガル。
亮人::銀座の路地の奥の曳込稲荷で、女がハットピンで首を刺されて殺される。そして発見者である被害者の恋敵が、自分に疑いがかかりそうだから金田一に依頼を持ち込む。
ゲンキ君::登場人物がみんな魅力的ガルな!
亮人::そうそう!依頼人は健気だし、三角関係の真ん中の男はボクサーで好青年だし、経済界の成り上がりの人も出てくるけどイヤな印象はない。
ゲンキ君::金田一の弟子の多門修も出てくるガル。
亮人::『支那扇の女』から登場した、アウトローだけど金田一を慕っている有能な部下やね!作中ではワトソン役って書かれてたけど、どちらかというとベイカー街遊撃隊(少年探偵団)みたいな。いいキャラクタなんよ!
ゲンキ君::しかしキャラクタが充実してるのと裏腹に、ミステリとしては残念なオチなんだガル。
亮人::犯人が「謎解きを始めるまで名前も出てこなかった小さな挿話に出てきた人」って。これはヒドイ!
ゲンキ君::全くミステリとしてフェアじゃないガル!
亮人::本格ミステリではなく、二時間サスペンスっぽいよなあ。
ゲンキ君::まぁ読み所はミステリ的な部分ではなくて、金田一の活き活きとした日常だガル!
亮人::スグにお金がなくなって、大家さんに借りに行っちゃうwwでも大仕事が入って懐が温かくなったらスグに多めに返してくれるって分かってるからとアッサリ貸してくれたり。
ゲンキ君::金田一の人柄人望がうかがえるガル。
亮人::あと朝食はトーストとサラダを自分で用意していたり、証言を聞くのをソッチノケでステーキをむさぼり食ってたり、いちいちカワイイ!
ゲンキ君::金田一耕助シリーズは因習の残る閉鎖村社会のイメージだけど、金田一耕助自身はメッチャ都会派だガル!実はアメリカ留学してた過去もあったりするガルしね。
亮人::あと時代を感じたのが「ヒロポン」w
ゲンキ君::戦後スグは普通に薬局とかでも流通してたっていう覚醒剤の一種ガルね。
亮人::同性愛者が青少年を手篭めにするためにヒロポン中毒にさせてたり、いろいろとヒドイ。
ゲンキ君::同性愛のことを、異常性愛患者とも言ってたガル。
亮人::すごい時代やんね。
ゲンキ君::お次は「鏡が浦の殺人」だガル!
亮人::金田一耕助、今回は避暑のためビーチへ。そして懇意の宿のマダムに頼まれて、ミスコンの審査員をしたりw
ゲンキ君::イヤイヤやってますって雰囲気を出してたけど、実はノリノリだったガルねw
亮人::ここでもお茶目な金田一が出てました!
ゲンキ君::殺人事件の方も、こっちは一応ミステリの形にはなってたけど、またまたヒドかったガル!
亮人::まず殺人の動機がヒドかった。
ゲンキ君::ターゲットを殺す方法の「練習のための殺人」とか、もうメチャクチャだガル。
亮人::しかもラストで犯人を追い込む金田一が、「証拠を積み上げて犯人を理論的に追い詰める」のではなく、「実は被害者が犯人のことを書いてる手紙が見つかりました、というブラフで犯人が突撃してくるのを待つ」って。金田一耕助先生、ちゃんと探偵してください!
ゲンキ君::まぁ金田一もバカンスで来てたから、手っ取り早く事件を終わらせたかったんじゃないガルか!?w
亮人::そんな名探偵アリかいな!!

  • 扉の影の女
  • 鏡が浦の殺人

★★★☆☆