中村融編『猫SF傑作選 猫は宇宙で丸くなる』
- 作者: シオドア・スタージョン,フリッツ・ライバー,他,中村融,旭ハジメ
- 出版社/メーカー: 竹書房
- 発売日: 2017/08/31
- メディア: 文庫
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あらすじ
猫ほど素敵なエイリアンはいない!マシュマロを焼き、人間の言葉を話し、宇宙で猫パンチを放つ――奇妙で可愛い猫たちの物語!文庫初収録3匹、本邦初訳4匹!
誇り高く孤独を愛するが、寂しさを感じたとき彼らはそばにいてくれる。
甘えるが媚びず、気まぐれだが頼りになる相棒。そんな不思議な生き物の名は猫――。マシュマロを焼く天才猫が登場するコイストラ「パフ」、宇宙船に乗せられた“船猫"が活躍するナイ「宇宙に猫パンチ」、傑作の誉れ高いライバー「影の船」など、愛すべき個性豊かな10匹の猫たちが宇宙狭しと跳び回る。名アンソロジストがすべての猫好きとSFファンに贈る、猫SFアンソロジーの決定版!地上でも宇宙でも、猫はやっぱり猫なのだ。
使い魔・ゲンキ君::ウーニャーゴロニャゴ!
亮人::どうした、どうした?
ゲンキ君::今回は『猫SF傑作選』ということで、ニャンコ化してお送りするニャ!
亮人::君はワンコの使い魔やろ?それがニャンコ化とは、あざと過ぎるやろ!
ゲンキ君::雑貨グッズとかでもニャンコの物ばっかりだニャ。昨今のニャンコ人気は異常だニャ。だから、その波に乗るんだニャ〜。
亮人::思いっきり大衆に迎合して、ええんか。。。
ゲンキ君::まあまあ気にせず、本書の感想いってみるニャ!
亮人::猫SFだけを集めたアンソロジー、まさかの竹書房文庫から登場!
ゲンキ君::竹書房文庫は、オールディスの処女作『寄港地のない船』も出したし、SFに力を入れていくみたいだニャ。
亮人::これからも期待やね!
ゲンキ君::しかも今回のアンソロジーは中村融氏による編纂だニャ。
亮人::創元文庫ではお馴染みの中村融印アンソロジーやけど、安心安定のクオリティやからね!買うしかない!
ゲンキ君::さて本書ニャゴ。本アンソロジーは、地上編と宇宙編に分かれてるニャン。地上編はSF的要素によって猫の気まぐれさが増幅された話が多くて、宇宙編は人間の相棒としての猫を描いた話が多かったニャ。
亮人::どっちも違った味わいで面白かったな!
ゲンキ君::ということで、各話のレビュウいってみるニャ!
- ジェフリー・D・コイストラ「パフ」
亮人::一匹目のニャンコはパフちゃん!♪パフ〜ザマジックドラゴン〜♪
ゲンキ君::ピーター・ポール・アンド・マリーは関係ないニャ。
亮人::はい。小学校の時、合唱で歌ったよね!
ゲンキ君::そっちのパフは置いといて、小説の内容にいきニャさい。
亮人::はい。研究者が娘にねだられて仔猫を飼う。でもスグに大人になって家で暴れるから嫁さん怒りMAX。そこでずっと仔猫のままのニャンコを開発する。十数歳まで仔猫の姿で、寿命の寸前に大人の姿になって亡くなるという。非常に都合のよい生物を作ってしまう。
ゲンキ君::しかしイザ飼いはじめると、知能が異常に発達することが判明するニャ。夜中に自分でマシュマロを焼いたり、野犬に罠を仕掛けたり、しはじめるニャ。
亮人::それが、ちょっぴりホラーテイストなオチにつながっていく。
ゲンキ君::ニャンコが人に従順なだけではなく、凶暴性も持っているってことを思い出させてくれて、刺激的なお話だったニャ!
- ロバート・F・ヤング「ピネロピへの贈りもの」
亮人::二匹目のニャンコは、ピネロピちゃん!ヤング師匠!
ゲンキ君::『ジョナサンと宇宙クジラ』にも収録されている作品だけど、新訳だニャ!
亮人::冬の崖にたたずむ謎の少年を助けたことからはじまるストーリー。助けた謎の少年が、おばあさんと猫のピネロピと交流して、最後のハートが温かくなるオチ。いい話だなー!
ゲンキ君::はたして「贈りもの」とは何ニャのか?
亮人::さすがヤング師匠は、ハートウォーミングですなー。
ゲンキ君::ところで、ヤングのことをヤング師匠と呼ぶのは、やめニャさい!!
- デニス・ダンヴァーズ「ベンジャミンの治癒」
亮人::三匹目のニャンコは、ベンジャミンちゃん!
ゲンキ君::マジメな話なんだけど、一点が破壊力ありすぎて大爆笑だったニャ!
亮人::自分が生まれた時から一緒だった愛猫のベンジャミンが亡くなってしまう。最期に抱きしめたら、若い姿になって復活。それ以来、ベンジャミンは歳をとらない猫になって、再び一緒に暮らすことに。
ゲンキ君::でもこの異様な能力のことは隠して暮らしていくんだよニャ。
亮人::しかし彼女が出来る。彼女に能力がバレる。しかも彼女には事故で長年意識不明の弟が。さて能力を使って欲しいという彼女の願いを聞いてしまうのか?
ゲンキ君::すごくシリアスに苦悩するんだニャ。しかしそのシリアスと対比するようにクライマックスで衝撃的情景が!
亮人::一言だけで表すと「ローストチキン」。
ゲンキ君::笑いが止まらなかったニャ〜!
- ナンシー・スプリンガー「化身」
亮人::四匹目のニャンコは、レディ・キャットちゃん!
ゲンキ君::これはちょっと分からない話だったニャ〜。
亮人::猫は九つの生命を持つと言われているが、このキャットは九回目の生を全うしようとしている。最後の生だから、いい男を捕まえようと(?)カーニバルにもぐりこむ。なぜか人間に化けて、ストリップ小屋にいつく。心を読める男に恋をする。結ばれる。男に祝福を与えて去る。
ゲンキ君::なんだか幻想的だけど、よく理解できてなかったニャ。まあ御主人は、こういう話に対するセンサーが皆無だからニャw
亮人::はい。すいません。
- シオドア・スタージョン「ヘリックス・ザ・キャット」
亮人::五匹目のニャンコは、へリックスちゃん!
ゲンキ君:: スタージョンの書籍初収録の話だニャ。
亮人::新素材で画期的なビンを発明した男。しかしそのビンに変な男の魂を捕獲してしまう。その男が言うには「謎の存在に追われている、魂が食われそうだ、助けてくれ」と。助けるには新しい肉体が必要で、その肉体は猫のヘリックスのがちょうどいいらしい。ということで、ビンによる猫の教育が始まる。
ゲンキ君::そしたら、だんだんヘリックスがふてぶてしくなっていくんだニャw 言葉を覚えて、だんだん主人を下僕のように扱ったりしだすニャ。
亮人::しまいにはタバコを吹かせながらメシの催促をしてきたりw
ゲンキ君::もうメチャクチャだニャ!
亮人::ゲンキ君はそういう子にはならないでね?
ゲンキ君::分かってるニャーン!
亮人::しかもオチも、どんでん返しが効いてて、本当にヘンテコで楽しい話だった!
- ジョディ・リン・ナイ「宇宙に猫パンチ」
亮人::六匹目のニャンコは、ケルヴィンちゃん!
ゲンキ君::ここからは宇宙編だニャ!
亮人::最新型AIを積んだ最新型宇宙船の試験航海。船には船猫のケルヴィンも乗せて、出航。途中、敵性宇宙人の支配エリアに。敵性宇宙人の攻撃に遭い、人間の乗組員は全員行動不能に。
ゲンキ君::そこでケルヴィンが大活躍するニャ!
亮人::タイトルどおり本当に「宇宙に猫パンチ」するし!ハインラインの『夏への扉』の猫ピート活躍シーンをさらに凝縮して宇宙に持って行ったみたいな爽快感!サイコー!
ゲンキ君::この邦題もいいニャ!
亮人::原題を直訳すると「(猫に)お金の価値がある」だけど、思い切って「宇宙に猫パンチ」にしたらしい。これは良い判断!タイトルと共に爽快なお話だった!
- ジェイムス・ホワイト「共謀者たち」
亮人::七匹目のニャンコは、フェリックスちゃん!
ゲンキ君::秋山瑞人の『猫の地球儀』を連想させるお話だったニャ!
亮人::宇宙船に乗せられた船猫のフェリックスや実験用モルモットやネズミたち。宇宙に出て無重力のせいか、知能とテレパシーが急発達。このまま人間の宇宙船にいたら、新惑星が生物に適しているかを試すための実験動物にされてしまう。そこで、みんなで逃げ出すことにした!
ゲンキ君::宇宙に出ると知能などが急発達するというのは、堀晃の「アンドロメダ占星術」も連想させるニャ!
亮人::なんしか、逃亡は成功するのかドキドキだし、どんなハッピーなエンドを迎えるのか、楽しく読めた作品でした!
- ジェイムズ・H・シュミッツ「チックタックとわたし」
亮人::八匹目のニャンコは、チックタックちゃん!
ゲンキ君:: 『惑星カレスの魔女』のシュミッツの作品だニャ。新潮文庫の『テルジーの冒険』の一部を短編としたものでもあるニャ。
亮人::法科大学生のテルジーが、イヤミな叔母の惑星に呼ばれたと思ったら、ハメられた! テルジーの相棒、カンムリネコのチックタックがこの惑星の保護動物に指定されたとかで、取り上げられることに!?逃げ出したテルジーとチックタックは、このピンチをどう乗り切るか?
ゲンキ君::今回のニャンコは、地球産の家猫ではない、地球外惑星カンムリネコだけど、特別に収録されたそうニャ。
亮人::テルジーとチックタックとの信頼感がええな!物語の解決方法も、展開が熱いし!でも最後のオチの2ページは、やりすぎな気がしたけれどw
ゲンキ君::まあそこはご愛嬌だニャン!
亮人::九匹目のニャンコは、バットちゃん!
ゲンキ君::同人誌(?)に訳出されたのみで、正式な出版物としては初訳の作品らしいニャ。
亮人::女主人公スティーナと愛猫バットで、宇宙を冒険の旅して廻ってるって設定が熱いよ!そして今回のターゲットは幽霊船(宇宙船)。猫の特質を活かして事件を解決するんだけど、それも猫心を分かってる展開でええな!
ゲンキ君::その猫の特質が、タイトルの「猫の世界は灰色」というのにも通じてるのも良いニャン!
亮人::これはイッキにお気に入りになったわ!ノートン先生、集めねば!
ゲンキ君::御主人の父上からパクって、《太陽の女王号》シリーズ全2巻《ゼロ・ストーン》シリーズ全2巻《ビースト・マスター》シリーズ全2巻の計6冊は持ってるニャン。
亮人::他の単発モノも集めちゃる〜!!
- フリッツ・ライバー「影の船」
亮人::最後の十匹目のニャンコは、キムちゃん!
ゲンキ君::これは、御主人の嫌いなタイプの話だニャンねw
亮人::そうそう。世代間宇宙船で、一般住民エリアの文明が退化してドロドロのグチャグチャになってるパターンの話。でも面白かったよ。導入部分は手こずったけど、ちゃんと勧善懲悪でシッカリSFになって終わるし。
ゲンキ君::昔の講談社文庫の『世界SF大賞傑作選』に収録されて以来、40年ぶりに陽の目を見たという、レアな作品でもあるニャ。
亮人::読む価値アリやね!
ゲンキ君::それでは、まとめに行くニャ。
亮人::やっぱり動物は最高!カワイイし、SFとしても面白かったし!全編面白かったけど、お気に入りは、ジョディ・リン・ナイの「宇宙に猫パンチ」とアンドレ・ノートンの「猫の世界は灰色」かな!
ゲンキ君::宇宙の冒険は胸躍るニャ〜!
亮人::とくに「宇宙に猫パンチ」は傑作ね!ガスコンロみたいな名前のクセに、いいSF書くやんww
ゲンキ君::そうそうそう、♪リンナイ〜♪って、それはガス器具の製造会社だガル!「リン」と「ナイ」は別の名前だから、くっつけたら駄目ガル!って思わずニャンコ語尾を忘れて、通常に戻っちゃったガル。もうやめさせてもらうわ!ガルガル!!
- 〈地上編〉
- ジェフリー・D・コイストラ「パフ」
- ロバート・F・ヤング「ピネロピへの贈りもの」
- デニス・ダンヴァーズ「ベンジャミンの治癒」
- ナンシー・スプリンガー「化身」
- シオドア・スタージョン「ヘリックス・ザ・キャット」
- 〈宇宙編〉