くじら座タウ星府立大学SF研究会

主に読書(SF中心)について書きます。最近の読書感想は「漫才風読書感想」をやってます。

水見稜『食卓に愛を』

食卓に愛を (ハヤカワ文庫JA)

食卓に愛を (ハヤカワ文庫JA)

あらすじ
異星人のメッセージの解読結果は“メシを食わせてやる”だった。宇宙局は御招待にあずかるべく大食漢の松崎を指定の木星衛星軌道へ送り込んだが…食と愛の宇宙的関係を描く表題作ほか、300年の刑期を終えて出所する少女パティと初対面の家族との心の交流を描く「パティの出てくる日」。恋人と田舎町の映画館に入った僕はどう見ても宇宙人の3人組と出会う。彼らと共に観た映画には…故郷喪失者の想いを描く「シネマハウスの夜」。死んでしまった松崎が宇宙の胃袋のような世界を巡る書き下ろし中篇「神の糧」。などSFマインドあふれる8篇収録。

亮人::水見稜の唯一の作品集!
使い魔・ゲンキ君::先月に天神橋筋のジグソーハウスさんで買ったガルな!
亮人::フォロワーさんが読まれてたので、前から欲しかったんよ。
ゲンキ君::見つけたときは飛び上がってたガルなw
亮人::大きな声で言えないけど、帰って調べたら密林中古で二万二千円。。。
ゲンキ君::まあ密林中古は少し世間で話題になっただけで安値のが全部売れて、高値が残ってるだけというパターンも多いガル。全然アテにはならないガル。
亮人::まあ参考程度やな。
ゲンキ君::そもそも、水見稜といえば創元SF文庫の『マインド・イーター【完全版】』も新刊発売日に買ったのに、まだ積んでるガル。
亮人::だって『マインド・イーター』は内容が重そうなんだモン。ということで、より軽い読み味っぽいコッチを先に読んでみる!
ゲンキ君::本書の収録作品は主に2パターンに分けられるガル。
亮人::シリアスで情感重視な前半と、コミカルでSF重視な後半。どちらも味わい深いが、特に後半が面白かった!
ゲンキ君::大食漢・松崎が主人公の連作3作だガル。
亮人::三大欲求の性欲ばっかりが美しかったりグロテスクだったりで創作物に描かれるけど、食欲も原初的で官能的で愛に満ちた行為なんよ。
ゲンキ君::そんな愛に満ちた行為を宇宙人が求めてくる表題作が傑作だったガルな。
亮人::それでは全作レビュウ、行ってみよう!

  • パティの出てくる日

ゲンキ君::塀の中の家で暮らす女の子の話だガル。
亮人::実はこの子は、懲役300年の刑に服役している。寿命で亡くなっても遺伝子から復活させて合計300年を全うさせようという。もうこの制度も無くなっているんだけど、唯一まだ実行されているケースがこの女の子パティ。
ゲンキ君::そしてついに出所の日が来たガル。
亮人::親族が集まって出所を祝う。まあその時の人間の心情を描く物語で、制度の精緻さとかにツッコミを入れるのは無粋かな。

  • シネマハウスの夜

ゲンキ君::お次は映画館が舞台だガル。
亮人::ボーイ&ガールが場末の映画館でよく分からない映画を見ようといてたら、奇妙な男の三人組が入ってくる。どうやらこいつらは宇宙人らしい。
ゲンキ君::そして映画が始まるガル。これが墜落した宇宙船を撮ったドキュメンタリーだったガル。
亮人::この宇宙船が、故郷に帰れない宇宙人たちの心の拠り所の教祖みたいなモンらしい。郷愁ってやつやな。
ゲンキ君::そして関係ないはずのボーイとガールも郷愁を共感するんだガル。
亮人::地球人も宇宙人も関係なく星に郷愁を抱くというテーマは美しいなー。

ゲンキ君::お次は、ネズミの様な謎の生物とロボットの話だガル。
亮人::世界の終わりを明示はしていないけど、カットバックで色々な描写をすることによって示していくのは上手いな。エリスンの「死の鳥」っぽい。
ゲンキ君::エリスンより分かりやすいガルけどな。

  • オーガニック・スープ

亮人::お次は、一番期待していた作品。
ゲンキ君::戦争の影が忍び寄る世界で、母親が出て行ってしまい家で一人ぼっちの少女の話だガル。
亮人::母親が残したのが、寸胴鍋がガスにかかっている。その中には、原初の地球の海のような生命のスープが。中から原始生物が飛び出してきたり。仕舞いには、生命の終着点である人間(母親っぽい)が飛び出してきたり。
ゲンキ君::とにかくブキミだったガル。しかしスープとか何かのメタファなんだろうけど、御主人の感覚では全く読み取れなかったガルなw
亮人::そういう素養がないんだよう。ごめんなさい。

  • プロンプター

ゲンキ君::お次は小品、全ての人にプロンプター(舞台とかで脇からセリフをコッソリ教える人)が見えるようになった男の話ガル。
亮人::謎の影のようなプロンプターに言われるがままに、自分もセリフを言ってしまう。操られているのか、自分の意思はどうなったのか、とにかくブキミなショートショートやったな。

  • 食卓に愛を

ゲンキ君::お次は、大食漢・松崎の連作の一本目だガル。宇宙人から「メシを食わせてやる」というメッセージを受け取った日本政府は、大食漢の松崎に接触の白羽の矢を立てるガル。
亮人::宇宙人は、害意などなく、ただ食によって愛を交流させようとするためだけに地球圏に来た。
ゲンキ君::最終的には、自分の身体を食べさせることが最大の愛ということになるガル。
亮人::三大欲求の食欲も性欲と同等の官能的行為ということやろなあ。

  • アレルギーの彼方に

ゲンキ君::お次は、大食漢・松崎の二本目。今度はアレルギーと食に関する話だガル。
亮人::アレルギーに関する思索がSFらしくてよい。食というのは、有機物を取り込む。つまり有機物のミックスと考える。しかし人間は長年で地球上の物は食べつくして、もう食べたことのない有機物はない。もう地球はミックスしようのないくらいまで食べて食べられしたので、拒否反応としてアレルギーが起こると。
ゲンキ君::そこで宇宙の物(宇宙人)を食べるんだガル。
亮人::このアレルギーに関する発想は新しいなー。発想に感動。

  • 神の糧

ゲンキ君::最後は、大食漢・松崎の三本目。最後は、松崎が死んでしまうところから始まるガル!?
亮人::死んだら、宇宙の高次元存在の胃袋のようなところで消化されて、次の生命になるというのは面白い発想。
ゲンキ君::輪廻転生をSF的に新解釈したってワケだガルな!
亮人::ところで話は変わるが、この『食卓に愛を』とうタイトル、『食卓にビールを』のタイトルのオマージュ元なんだろうか?
ゲンキ君::小林めぐみの軽いSFのライトノベル・シリーズだガルな!富士見ミステリー文庫から全6巻で出ていたガル。
亮人::富士ミスね!「どこがミステリやねん」という作品を乱発したり、「LOVE寄せ」という謎のキャッチフレーズを使ったりしていた、迷走レーベルやったよな。オレは好きやったけど。
ゲンキ君::最終的には富士ミスは地雷ばっかりという評が多かったガルか?
亮人::桜庭一樹を育てたレーベルでもあるし、地雷も踏んで楽しむという風潮がある時代やったよ。
ゲンキ君::御主人、地雷大好きだガルねw
亮人::そうや!地雷は男のロマンよ!!地雷を踏んでナンボよ!地雷を踏んでこその成長よ!ほらここにも「ぽちっ」(どっかーん)
ゲンキ君::さては御主人、今回はオチを思いつかなかったから、唐突な爆発オチにしたんだガルなww『食卓に愛を』は地雷じゃないので、見つけたら安心して読んでください!!ガルガル!!

  • パティの出てくる日
  • シネマハウスの夜
  • バルカローレ
  • オーガニック・スープ
  • プロンプター
  • 食卓に愛を
  • アレルギーの彼方に
  • 神の糧

★★★★☆