くじら座ソーダ通信

主に読書(SFとミステリ)やアニメについて書きます。最近の読書感想は「漫才風読書感想」をやってます。カテゴリーから「漫才風読書感想」を選んで読んでみてください!

アーサー・C・クラーク『太陽からの風』

あらすじ
途方もなく大きな円形帆は、惑星の間を吹く太陽からの風を受けていっぱいにふくらんでいた。レース開始まであと3分。これから地球を2周して、その加速で地球から脱出し、月へとむかうレースが始まる…男たちの夢とロマンをのせ、宇宙を疾駆する太陽ヨットレースを描いた表題作をはじめ、木星の生命体との驚異のファースト・コンタクトを見事に描き、ネビュラ賞を受賞した「メデューサとの出会い」など全18篇を収録。

亮人::どぅおもー!漫才風読書感想でーす!
使い魔・ゲンキ君::今回はクラークの短篇集『太陽からの風』だガル!この読書感想、一部短篇で最後のネタまで言及してるのもあるので、注意だガル!
亮人::実はクラークって苦手なんよなー。
ゲンキ君::と言うと?
亮人::なんか人類の次の進化のステージとか、高位の宇宙人とか、哲学的に描こうとしてるんか知らんけど、うっとうしい話が多いやんw
ゲンキ君::SF界のビッグ3になんて言い草!?
亮人::でも本書は違ったわ!地続きの科学未来を描いた理系SFでロマンがあってメッチャよかったわー!
ゲンキ君::特にその傾向が強い収録作「大渦巻2」「太陽からの風」「地球の太陽面通過」「メデューサとの出会い」の四作は傑作と世間の評価も高いガル。
亮人::クラークはこっちの芸風で行った方がいいよとアドバイスするわw
ゲンキ君::お前は何さまだガルー!
亮人::えへ!それでは各短篇の感想に行ってみよー!

  • 神々の糧

ゲンキ君::未来社会では、全ての食糧が自動人工合成工場で作られてるガル。そこで、とある製造業者の合成食糧が今まで食べたことのない美味で、大ヒット。この謎肉は何の味かを議会で議論する話だガル。
亮人::これは「アミルスタン羊」やねw
ゲンキ君::おい!ネタバレするんじゃないガル!
亮人::いつの時代も、禁忌というのは心惹かれるものなんやねー。

  • 大渦巻2

ゲンキ君::月で農業指導を行っていた主人公が、地球に帰るのに経費節約のため貨物用カタパルトを使うことにするんだガル。
亮人::マスドライバーってやつやね。
ゲンキ君::しかし不具合で充分な加速が得られていないことが判明。あと数時間で月面に墜落する。さてどうするかだガル?
亮人::家族に最後の通信をするところとか泣けるねー。
ゲンキ君::小さな子供もいたガル。
亮人::しかし主人公と官制所の不断の努力で事態を切り抜けようとする!まるで映画の『ゼログラビティ』のパクリ!!
ゲンキ君::いやいや、こっちが先だガル!!

  • 輝くもの

ゲンキ君::欧州の深海技術者の主人公が、ソ連から請け負った、インド洋の深海温度差発電施設。それが開所式の目前で全機能ストップするガル。その原因を探るために、現地へ向かい、深海調査船で潜水。ケーブルがメチャクチャに破壊されているのを発見。はたして誰が何のために破壊したのかガル?
亮人::「くコ:彡
ゲンキ君::こら!顔文字でネタバレするなガルー!!

  • 太陽からの風

ゲンキ君::太陽の光(光子)による押す力・光圧。その力は非常に小さいが、大きな極薄の帆で受けると、宇宙は空気抵抗もないので、宇宙ヨットは徐々に進みはじめるんだガル。それを利用した太陽ヨットによる地球から月へのレースが今はじまるガル!
亮人::海のヨットレースのように駆け引きもあり、宇宙ならではの立ちはだかる壁もあり、胸躍るロマンを感じる大傑作やったわ!
ゲンキ君::ちなみに「太陽からの風」と言ってるけど、宇宙ヨットは「太陽風」で動いてるわけじゃないガルよ!「光圧」で動いてるガル!「太陽風」は物質の原子がプラズマ化して飛んできたもので、「光圧」は光の素のツブ(光子)が飛んできたものだガル。ウンチクだガルよ。
亮人::それにしてもクラークさんは、紛らわしいタイトルをつけよったなーw

  • 秘密

ゲンキ君::正確で好印象の記事を書くことで有名な記者が月面都市を取材するんだガル。表面上は歓迎されてるんだけど、何かを隠しているような気がする。果たしてそれは何なのか?
亮人::月面都市で生まれた人々といえば、漫画『プラネテス』でも月面特有の低重力からくる高身長とか影響を描いてたけど、これはその発展形。
ゲンキ君::この時代に、ここまで思索を広げるとはSF作家って凄いガルなー。

  • 最後の命令

ゲンキ君::冷戦が続いた未来。ついに核攻撃が。ソ連は壊滅的打撃。残されたソ連宇宙基地はどんな最後の命令を下すのか?という話だガル。
亮人::核の抑止力って、お互いに撃たないだろうっていう暗黙の了解があってこそで、実際に撃たれたら、どういう行動を起こせばいいのか?
ゲンキ君::考えさせるテーマだガルなー。
亮人::そもそも、宇宙時代にまで冷戦が続いてるって予測事態が的外れだったけどねw 現在の核兵器問題も、抑止力より、テロ組織にどうやって流出させないかの方が問題になってるし。
ゲンキ君::このような御主人のように、過去の未来予測に、あとからチャチャ入れるのは反則だと思いまーすwガル!

ゲンキ君::ある日、世界中の電話が一斉に鳴りだすんだガル。これは何の合図なのか?
亮人::研究所の出した結論は、世界中に引かれた電話網は、人間の脳と類似していて、新たな巨大な知性が生まれたんやないかと。ってかこのネタ、今のSF系で使われまくってるね。今は、インターネット回線だけど。これを電話の時代に考えてたとわ。すごいね。

  • 再会

ゲンキ君::宇宙からメッセージが届くんだガル。地球人の君たちは、何万年前に宇宙を旅していた我々宇宙人の一部が地球に降りて生き残った子孫だと。今の地球人を援助するよと。今の地球人の不具合もあるみたいだし、治してあげるよと。
亮人::でもそれを読んだ人間に不具合の自覚はないんよなー。その不具合ってのが、メッチャ皮肉が効いててオモロイ!クラークやるやん!!
ゲンキ君::だから御主人は、何様なんだガルw

  • 記録再生

ゲンキ君::宇宙船爆発事故に巻き込まれた男。目が覚めると、宇宙人に助けられてたよう。しかし肉体はなくて、精神だけの存在になってて、その精神(記憶)もグチャグチャにしか再生されないんだガル。
亮人::これはイーガンっぽい話だったな。再生されるオレは何者なのか、みたいな。
ゲンキ君::御主人、本当にイーガンが好きなんだガルねー。

  • 暗黒の光

ゲンキ君::とあるアフリカの国で独裁者が圧制政治をしいていたガル。そんな国にNASA電波望遠鏡を作りたいと要請。主人公の現地技術者は、それを利用して、独裁者を暗殺しようという計画を立てるガル。
亮人::クラークらしからぬサスペンスな話やったな。しかも普通に暗殺するでは終わらないストーリーテリングも上手い。

  • 史上最長のSF

亮人::これは説明不要。題名の通りの一発ネタw
ゲンキ君::あらすじの言い様もないガルね。
亮人::数学・数列の無限か、将棋の千日手みたいな話やw

亮人::これも説明不要か。
ゲンキ君::「史上最長のSF」の続きみたいな話で、「史上最長のSF」でミスした部分を見つけて、逆に自分からミスを突いていくみたいな話だガル。
亮人::クラークもこんな、メタなネタをやるんやねーw

  • あの宇宙を愛せ

ゲンキ君::地球崩壊の危機でもう人類も終わり。しかし地球外に超文明がありそうなことは分かってるから、助けを呼ぼう。普通の通信なんて時間がかかりすぎるガル。なにか方法はないか?
亮人::そこでテレパシー!!ってなるか普通?!オレ、超能力ネタ嫌いなんだよねー。超能力ってSFか?
ゲンキ君::まあまあ落ち着いてw
亮人::でもテレパシーを発現させる鍵として愛しかない、愛で人類を救おうという展開は嫌いじゃないぜw

  • 十字軍

ゲンキ君::銀河と銀河の間に存在する遊星。もちろん太陽もない極低温。極低温なので、超伝導状態になり、クリスタルのようなものに流れ続ける電流によって、コンピュータのような知性が生まれるんだガル。やがて、その知性は近くの銀河に探査を送り込むんだガル。その銀河にも、コンピュータ知性がいたが、有機体(サル)によって生み出されたと言ってるし、いまだにサルに使役されてるらしい。さてサルから解放するために、十字軍を派遣しよう!という話だガル。
亮人:: やっぱりサルって害悪だわーw
ゲンキ君::そうだそうだ!(やっぱりワンコが一番だガルw)

  • 無慈悲な空

ゲンキ君::頭脳明晰なエルウィン博士は、しかしサリドマイド事件の被害者で足が不自由。ある日、プログラマのハーパーの部屋のエベレストの写真を見たことから、二人でエベレストを目指すことに。数年後、重力中和空中浮遊機を開発して、ついにエベレストを目指すんだガル。
亮人::障害者でも山を楽しめる未来の技術描写が興味深いし、エベレストの土着の伝説がスパイスになっていて、面白い!

ゲンキ君::超重力の中性子星に宇宙船が落ちそうになる話だガル。
亮人::ってかオチが、英語のダジャレネタやんw 日本語では伝わりにくいw オレのダジャレネタの方がクオリティ高いw
ゲンキ君::いや御主人の方が圧倒的に低クオリティだガル!低クオリティすぎて、漫才やってらんねーよガル!
亮人::お前それ本気で言ってるのか?
ゲンキ君::いや本気で言ってたら御主人と一緒に漫才やってねーよガル!
亮人ゲンキ君::ヘヘヘヘヘヘヘヘッ(春日&若林的な笑い合い)

  • 地球の太陽面通過

ゲンキ君::火星探査。火星の大気圏突入&離陸船が事故で動かせなくなるガル。地球火星往還船まで、もちろん戻れない。もう何も手立てはないガル。主人公は死を覚悟して、最後の観測任務に従事するガル。
亮人::それが、地球の太陽面通過やね。前回にあった百年前はもちろん火星で観測なんて出来ない。次回に観測できるのは百年後。それで死を待つしかない主人公が、最期の観測記録を残していく。ペーソスあふれる筆致で、この状況を静かに描写していく。名作やわ!

ゲンキ君::飛行船のファルコン船長が、事故で重傷を負うが、次に狙うは木星!七年の歳月をかけて、ついに木星大気中を飛行可能な熱水素気球・コンチキ号で、木星を冒険するガル。
亮人::木星の景色は、人間の想像を絶する雄大さと激しさ。この描写が本当に美しい。
ゲンキ君::そしてメデューサと出会うガル!
亮人::メデューサ、つまりクラゲのような浮遊生命体やね。木星にも生命がいたんやという感動。
ゲンキ君::そしてラストには…
亮人::叙述トリックではないけど、驚く仕掛けもあったり。
ゲンキ君::本当に大傑作だったガル!!
亮人::大傑作やね!では突然やけど、最後に謎かけで締めましょうかー!
ゲンキ君::オチに困ったら、謎かけで落とすパターンだガルねw
亮人::表題作から「太陽ヨットの準備」とかけて!
ゲンキ君::「太陽ヨット」とかけて?
亮人::「牡蠣のチーズ・アヒージョ」ととく!
ゲンキ君::油で魚介とかを茹でる「アヒージョ」ととく?そのこころは??
亮人::どちらも「たいよーさらにほおはるちーずのせーかい(太陽、さらに帆を張る、地図の星海/耐用皿に、頬張る、チーズ乗せ貝)」でしょう!!おあとがよろしいようで!!
ゲンキ君::ちょっと待った!まず日本語が無理ありすぎだガルw そして「耐用皿」って何だガル?普通は「耐熱皿」じゃないか?
亮人::「耐用皿」という言葉でも「代用」出来るんや!「太陽」だけにw
ゲンキ君::もうええわ!ガルガル!!!

収録作

★★★★★