あずみ・堺屋皆人・森村直也・柳川麻衣『城崎にて?—We stayed at Kinosaki Onsen to write fiction.』
作者:あずみ・堺屋皆人・森村直也・柳川麻衣
出版社/メーカー:あずみ(編)
発売日:2018/07/16
メディア:その他
あらすじ
志賀直哉の小説「城の崎にて」が生まれた兵庫県城崎温泉の名旅館「三木屋」に、2018年1月、創作文芸のお仲間と一緒に泊まり、この経験をもとに、有志で作品集をつくることになりました。
しかし、参加者が普段書いているジャンルは、ミステリ、SF、純文学… とバラバラ。
同じ材料を使って、何通りの「城崎にて」が仕上がるのか…。
それぞれの調理のクセやジャンルの特性、風味や触感の違いを、ご堪能ください。
亮人::どぅおもー!漫才風読書感想でーす!
使い魔・ゲンキ君::今回は、文フリで買った城崎アンソロジー『城崎にて?』だガル!
亮人::文フリで買った同人誌だから、はまぞうとかアマゾンデータもないけど、漫才風読書感想はちゃんとやるでー!
ゲンキ君::志賀直哉で有名な兵庫県北部の城崎温泉に、実際に創作仲間で旅行に行って、それを元に小説を書いて競作アンソロジーにした一冊だガル!
亮人::おもしろい企画やなー!
ゲンキ君::純文学ありSFありミステリあり私小説ありのバラエティに富んだ一冊になってるガル。
亮人::いろんな話が入っててお得やなー!どれも面白かったし!
ゲンキ君::それではそれぞれの短編に行って見ようガル!
- 森村直也「城崎ヴァーチャル」
亮人::一短編目はSFやでー!近未来のVRで行く城崎や。
ゲンキ君::技術者のカノジョのほうは実際に城崎温泉を歩いてる。カレシのほうが、どこかからVRゴーグルを被って遠隔のヴァーチャル城崎で隣を歩いてるガル。
亮人::それには意外な秘密があるんよな。
ゲンキ君::未来の輝かしい技術だけじゃない、ビターな内面があるんだガル。
亮人::仮想空間と現実のちょっとした違い、幸福と一寸先の闇のちょっとした違い、二つの対比が暗く鮮やかなテーマとして描かれてたわ。
ゲンキ君::温泉自体が、旅行の陽の面もあれば、湯治とか陰の面もあるガルしね。
亮人::そういう部分を上手く切り取ってるのが面白かったわ!
- あずみ「城のさき」
亮人::お次は純文学。
ゲンキ君::かつて同じマンションで住んでいたママ友6人が久々に集まって城崎旅行する話だガル。
亮人::子供が小さかったころに同じマンションのママ友同士だったけど、子供が別々の進学先に行ったり引っ越したりして、ちょっと疎遠になったけど、久々に集まって旅行に行ったって感じやな。
ゲンキ君::子供も手が離れて、ちょっと奮発した旅行だガル。
亮人::小心な主人公は、当時はママ友特有の人間関係を気にして小さくなって過ごしてたんやけど、年を重ねていろいろな変化もして素直になれたり、違う人間関係になってたり、心の動きの描写が上手かったわ。
ゲンキ君::御主人、意外にギスギスした人間関係の話が好きだガルもんねーw
亮人::まぁ好きやけど、本作はそこまでギスギスしてないやん!ちょっと小心で深く考えすぎてただけで。
ゲンキ君::読ませる内容だったガル。
亮人::あとはタイトルのダブルミーニングも内容と相まって上手いよなー!
ゲンキ君::「きのさき」の「さき」を暗示させる終わり方だったガル!
亮人::いろんなことがあるけど、前向きな、いい話やった!
- 堺屋皆人「『城の崎にて』殺人事件」
亮人::お次は、ミステリ!志賀直哉の「城の崎にて」の見立て殺人やで!!
ゲンキ君::作者さんは『江戸川悠の考察教室』という文学作品考察×ミステリのシリーズを自分のサークルで書いておられる方で、この短編はそのシリーズの番外編でもあるガル!
亮人::志賀直哉の「城の崎にて」では、事故の怪我を療養中の主人公が城崎温泉で蜂・鼠・イモリと順番に死を見ていく話やけど、本当にそのとおりの見立て殺人事件が起こるねん!!
ゲンキ君::舞台も志賀直哉自身が逗留した高級旅館・三木屋だし、もうなにもかもそのままだガル!
亮人::ミステリとしての解決も、ちゃんとフーダニットを綺麗に一人に絞っていく流れで良かったよな!
ゲンキ君::ただ動機がね。。。
亮人::鼠さんとイモリさんが殺された動機はまあ真っ当なんだけど、あとの一人が。。。
ゲンキ君::蜂さん、とばっちりで可哀想だガルw
亮人::あとは旅館の蟹料理の描写とかも濃密で良かった!ヨダレがでそうやったわw
ゲンキ君::さすが実際に行って書いてるだけあるガル!
- 柳川麻衣「城崎感傷旅行」
亮人::最後の作品は、旅エッセイ風私小説や。
ゲンキ君::今回の取材旅行のことを楽しく書いていくと同時に、カットバックで過去の思い出も入ってくるガル。
亮人::過去の思い出から、17歳から今まで何をしてきたのかっていう疑問が浮かび上がってきて、それが読者にも身につまされるんよ。
ゲンキ君::短い作品だけど、考えさせられたガルね。
亮人::ところで城崎温泉ってええよなー。オレも、親戚がむかし城崎温泉で旅館をやってたんで、子供のころとか時々つれてもらってたわ。蟹と温泉。ええなー。そして城崎温泉といえば「外湯めぐり」やよな!
ゲンキ君::旅館についてる大浴場温泉以外に、七つの温泉浴場が外にあって、それを浴衣で周るんだガル。今は旅館の客はパスだけ持っていけば、お金も持たずに外湯に行けるサービスもあって、便利になってるガル。
亮人::♪外湯~めぐりの~パスは~失くす~♪(岬めぐりのバスは走る)
ゲンキ君::急に替え歌だガル?山本コータローとウィークエンドの「岬めぐり」って古いガルねー!?
亮人::♪ぼくは~どうして~イキって~ゆこう~♪(ぼくはどうして生きてゆこう)
ゲンキ君::イキリオタクやめなさいガル!
亮人::♪お刺身~深く~風呂に~沈めたら~♪(悲しみ深く胸に沈めたら)
ゲンキ君::沈めるなー!
亮人::♪この旅~終えて~ツイッターに~あげようw♪(この旅終えて街に帰ろう)
ゲンキ君::炎上しろー!!もうやめさせてもらうわん!ガルガル!!
《参考資料BGM》
"岬めぐり,Misaki Meguri",Folk music,1974 (Vocaloid2 ver)
収録作
- 森村直也「城崎ヴァーチャル」
- あずみ「城のさき」
- 堺屋皆人「『城の崎にて』殺人事件」
- 柳川麻衣「城崎感傷旅行」
★★★★☆