くじら座タウ星府立大学SF研究会

主に読書(SF中心)について書きます。最近の読書感想は「漫才風読書感想」をやってます。

藤井太洋『公正的戦闘規範』

あらすじ
2024年、上海の日系ゲーム会社に勤める元軍人の趙公正は、春節休暇で故郷の新疆へと帰る途上、思いもかけない“戦場”と遭遇する―近未来中国の対テロ戦争を活写する表題作と、保守と革新に分断されたアメリカを描く「第二内戦」という同一世界観の2篇、デビュー長篇『Gene Mapper』のスピンオフ「コラボレーション」、量子テクノロジーが人類社会を革新する「常夏の夜」など全5篇収録の、変化と未来についての作品集。

亮人::藤井太洋先生の作品集!!
使い魔・ゲンキ君:: フォロワーさん等の評判が良かったから、あわてて数ヶ月遅れで新刊でかったんだったガルな!
亮人::藤井先生は、デビュウから数年で日本SF作家クラブの会長に就任したスゴイ人やな!
ゲンキ君::世界SF大会に出張って、日本のSFを世界に宣伝したり、スゴイ貢献をしてる人でもあるんだガル!
亮人::ソフトウェア開発のエンジニアをしてただけに、ネット技術や最新兵器など現代社会の一歩先を想像するパワーがスゴイねんなー!
ゲンキ君::しかも、どの短篇もラストでその想像力のさらに一歩先へ踏み込む。視点の鋭さに痺れるんだガル!
亮人::決して100%ハッピーエンドじゃないけど、その先も世界は続いていくんやでっていう、物語の姿勢も好感やな!イッキに好きな作家さんになったわ!
ゲンキ君::現代社会を切り取るという鮮度が求められる作風だから、これからもリアルタイムで追っていかないといけない作家さんだガルね!
亮人::それでは各短篇の紹介に行ってみよー!

  • コラボレーション

亮人::「コラボレーション」は、藤井先生の商業誌初登場の作品やね。
ゲンキ君::舞台は、ごく近未来。インターネットの検索エンジンが暴走して、コンピュータが大打撃を受け、インターネットを放棄したっていう設定だガル。インターネットの代わりに、登録認証が必要なトゥルーネットが全世界を覆ってるんだガル。
亮人::匿名での使用ができないんやなー。ほんなら、あんな事やこんな事をネットでできへんやないか!それは困る!
ゲンキ君::ネットを何に使ってるんだガル?!
亮人::えへ!
ゲンキ君::主人公は、破棄放置された古いインターネットに残っている「ゾンビサービス」を一つずつ消していく仕事をしてるんだガル。そこで、かつて自分が作ったサイトを見つけて、そのサイトが今もおかしな動きをしていることを発見したことから、陰謀に巻き込まれていくんだガル!
亮人::インターネットって怖い世界なんやなー。今もインターネットのどこかで知性が生まれかけてたりしてw
ゲンキ君::怖いけど、肯定的に描いてるところが、この作品のいい所だガルね!

  • 常夏の夜

亮人::次は、セブ島が舞台。
ゲンキ君::セブ島で大災害が起きて、その復興の途上が描かれるガル。
亮人::直後の人命救助とかは終わって、さあ産業の復興や避難所の人たちをどないしようかという時期。復興の企画のために、ジャーナリストや学者や他国の軍などがいっぱい集まってきてる。
ゲンキ君::そこで出てくるのが「フリーズ・クランチ法」という量子アルゴリズムだガル。ジャーナリストの文書作成支援ソフトに使えば、執筆の過程で消した文章を並列的に羅列して、あらゆる可能性の文章を見せて、最適を選んだり。ドローンによる救援物資の物流に使えば、あらゆる配送ルートの中から、最適な効率的ルートを選んだり。
亮人::「巡回セールスマン問題」ってやつやね。チェックポイントがちょっと増えただけで、通るルートの可能性が莫大に増えて、普通のコンピュータでは計算できない程になるっていう。
ゲンキ君::その量子アルゴリズムを、軍の無人警備用ロボットに入れたら、大変なことに、暴走しだすんだガル。
亮人::それを止めるために立ち向かう主人公も、量子アルゴリズムを使うんやね。あらゆる可能性を並列的に羅列して最適を挙げさせる事で、未来予測みたいなことをしてしまう。ちょっと初期イーガンのアクションっぽかったな(『宇宙消失』とか?)。かなり好きやった!
ゲンキ君::終わり方も、社会が次のステップに進むみたいなラストで、読み味よかったガル。

  • 公正的戦闘規範

亮人::お次は、中国。
ゲンキ君::東トルキスタンがISを作って、ドローンでテロをしまくる社会だガル。
亮人::これ本当に実現しそうでメッチャ怖いやん。
ゲンキ君::しかもスマホから手軽にできるし、●●●*1に組み込まれて誰が操作してるかも分からない。
亮人::これは完全に『●●●●の●●●*2』やね!
ゲンキ君::ネタバレしないでーw
亮人::まあ無人の兵器って、エレガントではない。ガンダムウイングのトレーズ閣下も言ってはったけど。
ゲンキ君::その言葉をもっと理知的に説明したのがこの作品ってことがガルね!!

  • 第二内戦

亮人::次はアメリカ。
ゲンキ君::全米が銃規制をしようとしたら、南部の州が独立宣言をしてしまう。独立した南部の数州が「アメリカ自由連邦(FSA)」を名乗って、国境には壁を作るわ、銃は撃ちまくるわ、マッチョな白人の国を爆発させるんだガル。
亮人::この作品は『人工知能SFアンソロジー』が初出なんやけど、ちょうどアメリカ大統領選と前後する時期やったねんな。トランプが大統領になったあとの大混乱を、形は違うけど、予期していたような流れ。ホンマおもろい!
ゲンキ君::人工知能の発生というSFネタも面白いんだけど、擬似イベント物としてのストーリーテリングも大いに楽しんだガルね!

  • 軌道の環

亮人::最後は、宇宙が舞台!ホンマに視点を色々持ってはって、藤井先生が恐ろしいわw
ゲンキ君::地球に送るために、木星で資源の採集をしていた作業員が、事故で木星の中に放り出されるところから始まるんだガル。そして、木星から地球への資源運搬船に助けられる。しかしその運搬船に乗っている宇宙イスラム原理主義者たちは、地球圏を壊滅させようという密かな作戦を持っていたんだガル。
亮人::主人公も地球に祈りを捧げる宇宙イスラム教(地球教)の敬謙な信者やけど、地球破壊は止めないといけない。でも地球に搾取され続けるのも困る。そこでとった主人公の行動が……!!
ゲンキ君::SF好きならニヤリとしてしまうガル!
亮人::「●●●●●●*3」は燃えるよね!『●●●ワールド*4』とか!掃除機じゃないよw
ゲンキ君::それを言ったら伏字にした意味がないガルよ!
亮人::とりあえず、藤井太洋は様々な視点から未来を幻視したスゴイ作家ってことやよ!!
ゲンキ君::急にまとめたガル。
亮人::最後に謎かけを一つ!お題は「第二内戦」にかけて、アメリカ分断の時事ネタで。
ゲンキ君::時事ネタとはまた面倒なネタだガル。
亮人::アメリカ分断の象徴「トランプ大統領」とかけて!
ゲンキ君::トランプとかけて?
亮人::「キャッチャーが泊りがけで茶摘みに行く」ととく!
ゲンキ君::キャッチャーが泊まりで茶摘みととく?そのこころは??
亮人::どちらも「ほしゅ(保守/捕手)」が「まいのりてぃ(minority/前乗り、tea)」を「かる(狩る/刈る)」でしょう!!おあとがよろしいようで!!
ゲンキ君::捕手が前日泊してまで茶摘みって!?しかも茶摘みが「teaを刈る」ってwwなんてムリヤリな日本語だガル!
亮人::保守だけに、今日のゲンキ君のほーしゅー(報酬)もゼロでw
ゲンキ君::っていつも報酬なんてくれてないだろ!もうやめさせてもらうわん!ガルガル!!

収録

  • コラボレーション
  • 常夏の夜
  • 公正的戦闘規範
  • 第二内戦
  • 軌道の環

★★★★★

*1:ゲーム

*2:エンダーのゲーム

*3:ダイソン球殻

*4:リングワールド