米澤穂信講演会@大谷大学学園祭
(生まれて初めて有名人のイベント行ったのでどこまでブログに書いていいものやら分からないから、全て書いちゃいます。駄目だったらご連絡下さい)
(メモを元に再構成しているので事実と違う部分もあるかもしれません。あしからず)
(本文中に、「先生「○○」」との表現がありますが、実際先生が口にした言葉通りではありません。俺の耳フィルターで意訳されています)
まず参加客は200人弱。顔ぶれは、男女半々くらい。男は、ほとんどが黒髪メガネのおまえどうせ米澤作品をラノベとしてしか読んでないだろ的な人々(もちろん俺も黒髪メガネです!!!)。女性は、女子大生風から悪い意味での文学少女な人から派手な女性から着物のオバサマまでバラエティに富んだ客層だった。
そして米澤穂信先生登場。黒のスーツでびしっと決めて格好良かった。大学生スタッフも同じようなスーツだったので、紛れたら大学生と区別が付かん。(俺的には穂信ツイッターでお馴染みの「Yonda君Tシャツ」で登場してくれるのかと思ったけど、ま、それはないわな)
最初の挨拶でのツカミの笑いは「いつもこの時間は寝てるので(午後1時)意識が朦朧となるかも」で会場大爆笑。挨拶で「話が本業で無いから」と言ってたわりに終始笑いを織り交ぜた楽しい話でした。
本編突入。インターネットで募集していた質問をスタッフが読み上げる、一問一答形式。
- 作家になろうというきっかけは?
⇒ものごころ付いた頃から話作りをしていたから、特にきっかけは無い。
- 影響を受けた作家は?
⇒綾辻行人を中学のときに。あとクリスティ。北村薫の『六の宮の姫君』でミステリの懐の深さを知った。
- アイデアはどう生まれる?
⇒パッと思いつく場合とひねり出す場合がある。パッと出たのは『春期』の「ココア」と『夏期』の「シャルロット」。ココアのあれは自身でやったこと。シャルロットはケーキを買ったときに思いついた。ひねり出す場合は、ポイントをひたすらリストアップ。
- 作品に自身の日常の影響がありますか?
⇒『秋期』のバスは実体験。
- キャラ作りはどうやっているの?
⇒キャラになりきって心理テストを繰り返す。30回くらい繰り返すと固まってくる。
- 先生に近いキャラは?
⇒古典部の福部里志と『追想』の北里サンゴ。サンゴは生き方にあこがれる。
- ロープワーク得意なんですか?
⇒特に得意ではない。ロープワークはバロネス・オルツィ『隅の老人』とか古いミステリの雰囲気があって好き。「このロープの結び目は船乗り特有の結び方だ」とか。
- キメ台詞はどうやって?
⇒キャラ構築時点では決まってない。「わたし、気になります」は思いつき。
- 高校時代は?
⇒部活の弓道三昧。はじめてミステリを書いたのは高3。文化祭のビデオ映画のための本。
- 一番面白いと思った小説は。
⇒これからもっと面白いのに出会うはずだから答えられないよ。あえて暫定を選ぶならエリアーデ(?)の『(?聞き取れませんでした)』(追記;たぶんミルチャ・エリアーデ『ムントゥリャサ通りで』)やファンデルモ(?)の『ペドルパルモ(?)』(追記:フアン・ルルフォ『ペドロ・パラモ』でした)。自分の理解を超えた作品。あと楽しいのは北野十蘭(?)の『マト(?)』(追記:久生十蘭の『魔都』です)。
- 本格ミステリとは?
⇒読者と作者のゲーム。あくまでフェアなゲームでないといけない。しかも読者が負けることが基本。読者が勝つ(トリックが分かる)ミステリなんてつまらないに決まってるでしょ。
- ミステリを読むとき、推理しながら読むタイプ?
⇒「読者への挑戦状」があるのは解く(笑。例:『人形はなぜ殺される(?)』『シセイ殺人事件(?)』など(追記:高木彬光『人形はなぜ殺される』『刺青殺人事件』です)。
- 自作で最も本格なのは?
⇒「満願」と「軽い雨」(追記:「満願」は『Story Seller3』収録、「軽い雨」は11/18発売の小説誌『オール讀物』増刊『オールスイリ』収録)
- ミステリについて
⇒作者が読者をだます作品はあまり好きでない(叙述トリック)。作者の代理人である犯人が読者の代理人である探偵をだますのが良い。あと「真相の保障」があるのが良い。解決編パートまでに出てきた記述のみで真相が保障されていないといけない。
- 一番面白いミステリは?
⇒「一番面白い小説」と言われると暫定とかああいう答えになってしまうけど「一番面白いミステリ」ならすぐに答えられます(笑。泡坂妻夫『みだれからくり(?)』(追記:『乱れからくり』)、『ばんじょうむてき(?)』(追記:北村薫『盤上の敵』でした)、恩田陸『ユージニア』、(聞き取れませんでした『ネコ』がなんとかという)(追記:エラリー・クイーン『九尾の猫』でした)、カー『カケ(とメモに書いてるけど何のことやら)』(追記:おそらくジョン・ディクスン・カーの『火刑法廷』だろうと思います)、バークリー『しこうさくご(?)』(追記:アントニイ・バークリー『試行錯誤』です)。
- 殺人を書かないのはなぜ?
⇒デビュー作が日常の謎なので、そこから付いて来てくれた人を裏切りたくないから、しばらくは人の死なない話を書いていた。あとホームズは意外に人の死なない話が多くて好き。
- 《小市民》のスイーツについて。
⇒特にスイーツ好きというわけではない。『秋期』は編集さんに「スイーツ描写が足りない」とダメ出しされた(笑。
- 最近も料理してますか?
⇒中華鍋最高。熱伝導率の関係か旨いのが作れる。しかし手入れが大変。カンヅメから戻ると錆だらけになっていた。以来料理はしてない。
- 『春期』について。
⇒はじめは『春季』だった。編集さんに「二週間限定のいちごタルトに「春季」はおかしい。「季」を付けるならせめて2、3ヶ月でないと」と日本語の意味についてダメ出されたので直前に『春期』に変更した。
- 小佐内スイーツセレクションについて。
⇒『夏期』は東京中のケーキ屋をまわった。『春期』のときに偉い人に「米澤君、スイーツ好きじゃないだろう。描写がねえ…」と批評されたので。
- 作中の学生間の距離感が絶妙ですね。
⇒無意識です。
- 折木家って父子家庭?
⇒ノーコメントです(笑。
- 小鳩くんの中学黒歴史はいつ書くの?
⇒今のところ書く気なし。裏設定には、掘り下げていいものと、書くのは野暮なものがある。小鳩くんの場合は野暮かと。
- 古典部メンバーの過去話は?
⇒機会があれば書くかも。『氷菓』で摩耶花がホータローを嫌うような態度をとっていたのは何故かとか掘り下げるかも。
- 小説を書く上で譲れないものは?
⇒品質。読んでよかったと思わせたい。最低でも「自分は分からないけど評価する人が居るのは分かる」と言わせるレベルを維持したい。
- 好きなジャンルは?
⇒ミステリ。
- 得意なジャンルは?
⇒ミステリ。
- 今後ミステリ以外も書く?
⇒大学時代はSFも書いてた。マックス・ウェーバーが「気の多いのはダメ」と言ってたからミステリに専心します。もし他ジャンル書くなら一般小説。
- 藤子不二雄好き?
⇒SF短篇が好き。この前の雑誌鼎談のとき辻村深月とドラえもん話で盛り上がった。
- 京都を舞台とするミステリを書くとしたら何処を書く?
⇒嵐山のギオウ寺。(ギオウ寺についての面白い話をおっしゃっていたが長いので省略。ギオウ寺の歴史を自分で調べて下さい)
- 「こんなの書けたら作家やめてもいいっていう作品はどんなの?」by道尾秀介
⇒自分の力量や成長などを知っていないと、そういうことは分からないと思う。ゴールの見える境地にはまだ達していない。先生「道尾はいやらしい質問しやがるぜ」
- 映画『インシテミル 7日間のデス・ゲーム』見た?
⇒サブタイトルが付いた時点で自分から離れて監督の作品になった。今の映画界がミステリを作ったらあんな風になる。(追記:これくらいでお茶を濁してたけどミステリ作家としては不満なんだろうな。ブログとかでも酷評多いし)
- 好きな殺人は?
⇒先生「ナシ、サツジンハヨクナイヨ(笑」。あえて言うなら『インシテ』の空気銃は好き。
- 漫画などのメディアミックスで気づいたことは?
⇒自分の作品って座ってるシーンが多くて漫画向きじゃない(笑。特に『夏期』の解決編のシーン。
- 近作情報は?
⇒『死人宿(?)』。あと『リカーシブル』の長編版。(追記:『死人宿』は『小説すばる 2011年1月号』掲載予定、『リカーシブル』は『Story Seller2』に収録された短篇の長篇版)
- 2大青春ミステリ以外の青春ミステリを書く予定は?
⇒無し。《古典部》と《小市民》の2つで十分書ける。
(1時50分。ここで15分休憩。)
ここからは会場の人からの質問に答えるコーナー。
- 俺らがツイッターで勝手に作品を引用してもいいの?
⇒付き添いの角川の編集さん「先生がいいと言うならいい。悪意なく好意的に使ってくれるのなら許す」
- 思い入れのある自作は?
⇒『さよなら妖精』。ユーゴ紛争がちょうど高校から大学の時だった。あと大学でユーゴ専攻だった。
- タイトルの決め方と気に入っているタイトルは?
⇒パッと出てきて一番気に入っているのは『犬はどこだ』。本編と関係ないようで関係あるネーミングでミステリっぽいでしょ。あと古典部のサブタイ決めるのは楽しい。
- 「日常の謎」の他作家についてどう思う?
⇒先生「青春ミステリは俺のものだ!!!」。北村薫など大学ミス研が舞台の作品が多く、『氷菓』刊行当時は高校が舞台のは無かったんじゃないのかなあ。だから俺が青春ミステリだ!!!似鳥初野かかってこいや(追記:←と俺には聞こえました)
- ペンネームの由来。
⇒ネット小説のときのハンドルネームが「米澤」。サイト名の「汎」。本名の「信」。あわせて「米澤汎信」だったが、角川授賞式で読めないと言われたので漢字を変えた。
- 「100冊」などで社会学の本を選んでいるが詳しいの?
⇒独学なので詳しくはないですが…。支配の三大。(←なんか説明してくれていたが良く分からなかった)
- 電子書籍について。
⇒大学生の卒論とか今までは文献の引用を組み合わせたものでよかったが、電子化となると検索力が大幅に向上するので引用の組み合わせなんて意味を成さないのではないか。大学生どうすんの?あとレシピ本とか便利そうだね。冷蔵庫にたまねぎとにんじんがあるから検索ポンッと。(追記:そういえば大谷大学って来年から全学生にiPad配布するらしいね)
- 1日何枚書くの?締め切り落としたことあるの?
⇒先生「編集さんも来てるのに余計なこと聞くな!!日々鋭意努力です(笑」
- 本歌取りについて。
⇒「あきましておめでとう」はジャック・フットレルの『13号独房の問題』。「心あたりのあるものは」は連鎖推理でハリイ・ケメルマン『9マイルは遠すぎる』。
- お嬢様キャラの登場人物多いけど先生ってお嬢様萌えなの?
⇒先生「多くないだろ!!!」。千反田はお嬢様と言うには微妙。須和名もお嬢様らしいことしてないし。『儚い羊たち』は実在のモデルは居ないです。全てのキャラに実在のモデルはいないです。
- キャラクタのネーミングについて。
⇒小佐内さんはもともと「小倉」だったが、どうやら同名のアイドルがいるらしいのでイメージが付くのを避けるために変更した。苗字について勉強しており、「小+○○」の名前がいいと思って「小+佐内」にした。断じて「幼いさん」ではない。あと「山荘秘話」は他の話との対比のために全て脱力ダジャレのネーミングにした。
- 『犬どこ』のチャットでマックユーザーが居たけど先生は?
⇒マック使いじゃない。大学時代ミス研ではなかった代わりに、ミステリチャット友達がいた。その人が重度のマッカー。
- 大学時代について。
⇒ひきこもってました(笑。ひたすら小説書き。
- デビュー前作品読むことできないの?
⇒一応データは持ってるが、読まないほうが良い。新作『折れた竜骨』はその頃の作品のリメイク作品でもある。
- デビューまでに長編何本書いた?
高校で1本。その後、2本3本書いて、『氷菓』が4本目。
- ゲーム『タクティクスオウガ』ではじめ何ルート?
⇒Nルート。『タクティクスオウガ』の影響で『さよなら妖精』書いたと思ってる人いるけど違うよ。
- 執筆中、作品内に何か売る工夫で意識してることある?
⇒意識してしてない。書くことに専心。編集さん「俺らが帯とか工夫してるんだよ。もっとそこらへんも注目してくれよな」
- 初めて読んだミステリは?
⇒クリスティの『なぜ、エヴァンズに頼まなかったか』。小学5、6年の頃。本格だとは思わなかったが夢中で読んだ。ミステリに没頭しはじめたのは中学の綾辻行人『十角館の殺人』。
- 高校の頃に書いたミステリってどんなだったの?
⇒毒殺とダイイングメッセージと逆説の連続殺人。しかし普通は3つの殺人の謎をすべてつなぎ合わせると一人の犯人が浮かび上がる構成にしなくてはいけないのに、一つ一つの事件単体で犯人が分かってしまうという穴が(笑。
- 今後獲りたい文学賞は?
⇒それは選考委員が決めることなのでノーコメント(笑。
- 好きな執筆スタイルは?
⇒朝起きてパソコンに向かうのみ。あとはビジネスホテルにカンヅメ。「ここのホテルはコンセントが使いやすいから好き、とかは「好きな執筆スタイル」っていうのかな(笑」
- 好きな藤子アニメは?
⇒子供のころ長時間画面を見てると頭痛がしたのであまりアニメは見ていない。漫画で読んでいた。あえて選ぶなら『宇宙小戦争』。歌がいい。
- ミステリのサブジャンルについて。
⇒連綿とつながるミステリの豊穣さを体現してると思う。
- 折木の信条は先生の信条?
⇒先生「私のモットーじゃない」
その後、抽選でサイン会。希望者は150人弱で、その中から限定100名。俺は…なんと当選!!!!日ごろのくじ運の悪いのは今日のための運おとりおきだったのだ!!!!!以下、俺の順番の時の様子です。
(順番次だどうしようどきどきぷるぷる)
俺「おねがいします」
(名札を出す)
先生「あれ、以前も来てくれた?」
俺「いえ、はじめてです」
先生「そうか、じゃあ同姓同名の人が前に来たんだね」
(いやっほう!!俺、名前覚えられてるぜ!!!)
(サイン書き書き)
先生「はい、どうぞ」
俺「ありがとうございます」
俺「ところで、《ベルーフ》シリーズはいつ書籍になるんでしょう?」
先生「あと短篇2、3本書かないと無理だねえ」
俺「じゃあ頑張ってください!!!」
先生「(笑)」
俺「それでは、ありがとうございました」
(本当は「太刀洗と結婚したいのですけど守屋との関係ってどうなってるんですか?」って聞きたかったけど、無難な質問にしてしまった。俺ヘタレ。)
以上です。あとサイン会では、プレゼントを差し入れしている人や握手を求める人もいた。しまった、俺も差し入れ持って行けば良かった。俺も握手してほしかったけど、女の子だったらいいが、男に握手求められたって先生気持ち悪いだろうと思って自重。ところで先生、サインを渡すときに一人一人に「ありがとうございます」という言葉と共に、顔の前にこぶしを作ってそれをもう片方の手で包み込む何か中国拳法の礼みたいな恰好を毎回してたんだけどあれは決めポーズかなんかなのかな??
もう最高の3時間でした。サインしてもらったのは『クドリャフカの順番』の文庫版です。俺の中で米澤穂信最高傑作!!米澤穂信先生ありがとうございました!!!
(追記:みなさんのご協力で書名などの不明部分がすべて解明されました。本当にありがとうございました)
(追記2:講演会に参加したみなさん(もうここ見てないかもしれないが)は「黒七味」買いましたか??米澤穂信先生が今回京都まで来た本当の理由は、祇園の有名な土産である 原了郭の「黒七味」を買うためだったんですよ。俺は講演会後に祇園まで行って買いました。そして翌日に早速食べたのでレポートをついでにここに書いておきます。まずフィルムケースくらいの大きさの高級感あふれる木の筒に入っています。いい匂いです。栓を抜いて手のひらに出してみました。黒い粉です。普通の七味は七つの具材が判別できるが、黒七味は赤黒い粉のみ。舐めました。辛い。出しすぎました。でも強い辛味だが旨い!!山椒の風味もきいており、これは癖になります。本日は味噌汁に入れて味わいました。みなさんも京都土産に是非。)