くじら座ソーダ通信

主に読書(SFとミステリ)やアニメについて書きます。最近の読書感想は「漫才風読書感想」をやってます。カテゴリーから「漫才風読書感想」を選んで読んでみてください!

連城三紀彦『戻り川心中』

戻り川心中 (講談社文庫)

戻り川心中 (講談社文庫)

あらすじ
大正歌壇の寵児・苑田岳葉は二度の心中未遂事件で二人の女を死なせ、情死行のさまを二大傑作歌集に結実させたのち自害する。女たちを死に追いやってまで岳葉が求めたものとは?壮絶な滅びの歌の韻律に秘められた男の野望と道連れにされる女の哀れみを耽美に描きとめた秀作「戻り川心中」(日本推理作家協会賞受賞)他、花にまつわるミステリ四編。

使い魔・ゲンキ君::連城三紀彦の代表的短篇群《花葬》シリーズの作品集『戻り川心中』だガル。
亮人::各短篇に繋がりはないけど、どの話も大正時代の前後を舞台として、さらに花をテーマとしたミステリになってるんやなー。
ゲンキ君::どのお話もホワイダニットのミステリだガルね。ある程度見えてきている話の筋が、ラストで動機が判明するとガラッと反転する、鮮やかな切れ味のホワイダニットだガル。
亮人::どうでもええけど、連城先生の名前って、金田一少年のキャラクタの連城久彦に似てるよね。
ゲンキ君::「異人館村殺人事件」の覆面の人だガルね。
亮人::異人館村は、島田荘司のトリックを丸パクリしたって言われてるし、ミステリと色々因縁あるなー。
ゲンキ君::では各話の感想に行ってみるガル!

  • 藤の香

亮人::代書屋の話。
ゲンキ君::主人公の長屋の隣に住む男は、色街の字の書けない女たちが故郷に送る手紙を代筆することを職業にしてるガル。
亮人::そんな街で、連続殺人が。
ゲンキ君::被害者は、顔を潰されていて身元不明。旅の者っぽいし、連続殺人だけどそれぞれの被害者の繋がりもなさそうだガル。
亮人::しかしそこで代書屋に殺人容疑が。
ゲンキ君::果たして、代書屋がやったのか?それならば、動機は?
亮人::識字率の低かったこの時代ならではの仕掛けで、この動機には唸ったわ。面白かった!
ゲンキ君::全体の切ない空気感も良かったガルな!

  • 桔梗の宿

亮人::女郎宿の話。
ゲンキ君::大金持ちが通り魔に遭って殺され、懐から五百円を奪われる事件が起こるガル。
亮人::どうやら犯人は人形師の男で、女郎宿の娘を身請けするための犯行らしい。
ゲンキ君::しかしその人形師も殺されるんだガル。はたして、なぜ人形師は殺されたのか?
亮人::これは「●●●●●*1」を踏襲したネタやったわけや。「事件が起これば、また会える」っていう。切ない話やけど、この心理はあんまり分からんかなー?今で言う、代理ミュンヒハウゼン症候群ってやつ。力の全くない娘がこうするしかないっていう、時代性もあるんかなー。

  • 桐の棺

亮人::やくざ者の話。
ゲンキ君::主人公は、やくざの貫田に拾われた子分だガル。有能だが無口な貫田の命令で、主人公はなんでも使い走りになる。ある日、貫田は自分の組の親分を殺してくれと命令してくるんだガル。はたして目をかけてくれている親分を殺す動機とは?
亮人::鍵となる親分が大事にしている真っ白な桐の棺や、複雑な男女関係とか、けっこう難しい話やったな。いや動機は分かるんだけど、まどろっこしいなーと。

  • 白蓮の寺

亮人::古寺と母の記憶の話。
ゲンキ君::主人公には、幼い頃のハッキリとしない、でも忘れられない記憶があったガル。それは母親が父親(?)を刺し殺す場面。はたして母は誰をなんの動機で殺していたのだろうか?
亮人::記憶の中の出来事が、一本の線に繋がった時の気持ちよさと、真相の黒さの気持ち悪さ、複雑な気持ちになったわ。ある病気の血脈とか、ミステリ的やよね。
ゲンキ君::翻訳モノだけど『Yの悲劇』も同じ病気の血脈ネタだったガル。

  • 戻り川心中

亮人::「苑田岳葉」という天才歌人の心中の話。
ゲンキ君::御主人、一番気に入ってたガルね!
亮人::はじめはどうしようもない男の話だと思って読んでたら、美しい話やった。
ゲンキ君::天才歌人・岳葉が心中未遂を起こして、その時の思いを歌集にして、さらに数年後に別の女とまた心中未遂を起こして、今度は生き残った数日で歌集を書き上げて即自死を遂げてしまう、という話だガル。謎に満ちた死の動機は果たして何だったのか?
亮人::岳葉がただの女タラシの屑かなと思わせておいて、ラストで真相が反転すると天才創作者の苦悩の末の行動やと分かる。真相が反転したあとの、天才のキリキリとした苦悩を描いて見せた鮮やかさに感動!
ゲンキ君::世に残る天才の傑作とは、こういう物なんだガルねー。
亮人::オレも天才として、このブログを書いてるけど、分かるわー!?
ゲンキ君::御主人は天才というより「凡才」だガルねーw
亮人::そうそうそう。こう伸ばしてるところに針金をかけて、剪定ばさみでチョキンと!ってそれは「盆栽」やー!
ゲンキ君::御主人がスベってるガル。
亮人::だれがスベらしたんやー!盆栽も花のうちということで、このネタも「花葬」して〜!
ゲンキ君::もう早く葬りたいガル。
亮人::なら、閉店ガラガラ!
ゲンキ君::閉店ガルガル!!

収録作

  • 藤の香
  • 桔梗の宿
  • 桐の棺
  • 白蓮の寺
  • 戻り川心中

★★★★★