くじら座ソーダ通信

主に読書(SFとミステリ)やアニメについて書きます。最近の読書感想は「漫才風読書感想」をやってます。カテゴリーから「漫才風読書感想」を選んで読んでみてください!

エヴァンズ&ホールドストック編『アザー・エデン イギリスSF傑作選』

アザー・エデン (ハヤカワ文庫SF―イギリスSF傑作選)

アザー・エデン (ハヤカワ文庫SF―イギリスSF傑作選)

あらすじ
無生物にとって神とは何か? この命題をいとも軽快に描きあげるイアン・ワトスンアミールの時計」。放射能で汚染された雨の降る近未来を舞台に、母娘の愛憎を情感豊かに歌うタニス・リー「雨にうたれて」、人跡未踏の惑星で探検隊が発見するものは……マイクル・ムアコック「凍りついた枢機卿」、相対性理論がもたらす“ウラシマ効果”に、ブライアン・オールディスがひねりのきいた結末をつける「キャベツの代価」など、本邦初紹介の新鋭から、さらに円熟味を増した大家まで、今日のイギリスSFを代表する傑作中短篇14篇を収録!

80年代の終わりに英国で編纂された英国SFアンソロジーイアン・ワトスンの「アミールの時計」が傑作と聞いて読んだんだけど、通して傑作だった。
とくに「アミールの時計」は、機械の神という発想が素晴らしい。機械の神からの啓示がシンギュラリティに結びつくという奇想に惚れ惚れ。オールタイムベスト級の傑作SF短篇だわ!
オールディス「キャベツの代価」のウラシマ効果の悪用も面白い。ヴァーリイの「プッシャー」もウラシマ効果の悪用だが、あちらは爽やかさがあった。オールディスはタチ悪いねーw
「フルウッド網」は、作者は日本では有名じゃないけど、これも面白かった。磁場研究をしているうちに、日常のあらゆることの確率が狂っていくという恐怖。第四次スーパーロボット大戦で、グランゾンというロボットの動力の特異点がずらされて、あらゆる確率が狂って異常に高くなり、乱戦戦乱が起こるっていうストーリイがあったが。本作が御先祖様だね。
ムアコック「凍りついた枢機卿」のオフザケ一歩手前の不条理SFも大好き。
「砂と廃墟と黄金の地で」は、どうでもいいけどキメ●クの話だった。高部あいかな?
キース・ロバーツ「笛吹きの呼び声」は、寓話のようなファンタジー。こんな円熟した物語を書く人だったとは、積読の『パヴァーヌ』も早く読まなければいけない!
リサ・タトル「きず」のただのフェミニズム系と見せかけてのラストのSF的切れ味も素晴らしい。これを最後にもってくるとは巧いねー。
英国特有の薄暗さもあるけど、傑作ぞろいで読み応えのある印象深いアンソロジーでした!

  • 「雨にうたれて」タニス・リー
  • 「人生の事実」クリストファー・エヴァンズ
  • 「ささやかな遺産」M・ジョン・ハリスン
  • アミールの時計」イアン・ワトスン
  • 「キャベツの代価」ブライアン・オールディス
  • 「フルウッド網(ウェッブ)」グレアム・チャーノック
  • 「スカロウフェル」ロバート・ホールドストック
  • 「凍りついた枢機卿マイクル・ムアコック
  • 「掌篇三題」ギャリー・キルワース
    • 黒い結婚式
    • 殺人者の歩道
    • 豚足ライトと手鳥
  • 「神聖」R・M・ラミング
  • 「月光団」デイヴィッド・S・ガーネット
  • 「砂と廃墟と黄金の地で」デイヴィッド・ラングフォード
  • 「笛吹きの呼び声」キース・ロバー
  • 「きず」リサ・タトル

★★★★★