くじら座ソーダ通信

主に読書(SFとミステリ)やアニメについて書きます。最近の読書感想は「漫才風読書感想」をやってます。カテゴリーから「漫才風読書感想」を選んで読んでみてください!

中村融編『街角の書店 18の奇妙な物語』

あらすじ
江戸川乱歩の造語である“奇妙な味”は、ミステリにもSFにも怪奇小説にも分類不能の、異様な読後感を残す小説を指す。本書には、翻訳アンソロジーの名手が精選した作品―異色作家の埋もれた名作、スタインベックら大家によるユーモア譚、SF界の鬼才の本邦初訳作など18篇を収めた。ひねりの利いたアイデアストーリーから一風変わった幻想譚まで、多彩な味をご賞味あれ。

もう名前を聞いただけで安心の感すらある中村融編纂アンソロジー。今回は《奇妙な味》。今まで触れてきてないジャンルだけど、楽しかった!ヘンテコな話やブラックユーモアなホラーが多くて、嬉しくなってくる!お気に入りはひとつに選べないが、「ディケンズを愛した男」「赤い心臓と青い薔薇」「姉の夫」「ナックルズ」のホラーテイストもいいし、「肥満翼賛クラブ」「M街七番地の出来事」「旅の途中で」のヘンテコな軽妙さもいい。ホラーとコメディの境界は意外に曖昧なのだ。あと変な話が多い中、異彩を放っていた「お告げ」の清清しさも好き!

  • ジョン・アンソニー・ウェスト「肥満翼賛クラブ」

妻が夫を太らせて肥満コンテストに出す話。家畜を育てることに対するメタファーかな。オチもブラックで面白い!

南米探検中で死にかけたところ、「ディケンズを愛した男」に助けられたことから、はじまる恐怖。伏線の回収も上手い。ブラックなユーモアも楽しい!淡々とした絶望がある。

  • シャーリイ・ジャクスン「お告げ」

打って変わって、清いお話wおばあちゃんが買い物メモを落としたことが、関係のないお姉さんの人生のステップを登るきっかけとなる。人生の偶然の奇跡が清清しく書かれていていいねー!

聖書から現代にまたノアの洪水がおこると読み取った男の悲喜劇。現代人の滑稽さを描いた小品で面白い。けどジャック・ヴァンスっぽくないw

  • ハーヴィー・ジェイコブズ「おもちゃ」

古物店で、自分の子供のころのおもちゃを見つけたことによる、少し不思議なお話。ノスタルジックだけど、釈然としないところもあって、不思議な居心地になる。

  • ミルドレッド・クリンガーマン「赤い心臓と青い薔薇」

息子の帰省にくっついてきた他人が、家族を徐々に侵略していく話。距離感をどんどん詰めてくる恐怖と、ホラーなオチに背筋が冷たくなる。これは面白い!

  • ロナルド・ダンカン「姉の夫」

仲のいい姉と弟。弟と意気投合した男が、やがて姉と結婚。みんな仲良くことが進んでいたのに、突然夫が消失。心霊特集番組のええ話の回でありそうな話だと思ったw

  • ケイト・ウィルヘルム「遭遇」

豪雪の夜。待合室で一夜を過ごすことになった男と女。偏執狂的な男の言動がリアルで興味深い。しかしオチの意味が理解できなかった。真相を解説してくれる人、求む!

  • カート・クラーク「ナックルズ」

DV男が、クリスマスのアンチサンタ「ナックルズ」の作り話をしたところ、本当に。。。DV男があぼーんするというカタルシスがあっていいね!ロコミが広がっていくという現代的な教訓を最後にもってきてるのもいい。

  • テリー・カー「試金石」

古物店で、魔法の石を買う話。魔法の効果か、日常がすこしずつおかしくなるの描写がいい。とくに変わったことが起こるわけじゃないけど、違和感がおもしろい。

  • チャド・オリバー「お隣の男の子」

素人の子供をゲストに迎えるラジオ番組。今日の男の子は言動がおかしい。全体的に怖いけど、オチがとくに理屈のない怖さだ。原題は、ケッチャムへのオマージュかな?

ただひたすら謎の古屋敷の奥に分け入る話。なにかのメタファーっぽいけど、理解が追いつかないwブラウンはこんな変なお話も書いてるんだねー。『未来世界から来た男』の邦訳のさいに落ちた話らしいってのも、お得感w

いつもガムを噛んでた息子がガムに噛まれる話。逃げても逃げても追いかけてくるガム。ホラーの文章で書かれているんだけど、コメディとして読める。ホラーとコメディが紙一重というのがよく分かる。スタインベックってこういうの書いてたんだ。

体のパーツを入れ替えることの出来る行商人の話。ある子供が、この行商人にお願いをする。それが歴史の大きなうねりとなる暗示とともに終わるラストがいいね!実際の歴史とファンタジイがつながってるような描写が楽しい。

アダムズ氏の地下の秘密農園。種子に髪の毛を混ぜ込んで植えると、その人型の花が咲くという特別な植物。しかし花にされた本人は、体に不調をきたしてしまうという。復讐譚でおもしろい。しかしヒロインはなんで倒れなかったんだろ?オレの読み込み不足?

  • ハリー・ハリスン「大瀑布」

世界の果ての巨大な滝で隠遁生活をおくる男。その男に取材を申し込んだことから、世界の秘密の一端があらわれはじめる。普通の日常と見せかけて、異世界的な世界観が見えてくる展開は上手いなー。

旅人が突然、頭だけで生きることになるというSS。ばかばかしいけど、読ませる。アイデアの勝利でツッコミ無用だと思うが、頭だけの存在になって、そんなに動き回れるもんかなーw?あと作者紹介が謎だらけでワロタw

  • ネルスン・ボンド「街角の書店」

未完のはずの作品だけが並ぶ奇妙な本屋。魅力的だけど、ブラックなオチは読めてしまった。
★★★★★