くじら座ソーダ通信

主に読書(SFとミステリ)やアニメについて書きます。最近の読書感想は「漫才風読書感想」をやってます。カテゴリーから「漫才風読書感想」を選んで読んでみてください!

ロバート・A・ハインライン『時の門』

あらすじ
どこから入ってきたんだ、こいつは!自分一人しかいないはずの部屋に突然現れた一人の男――その男はウィルスンに思いもかけない提案をした……タイム・パラドックス・テーマの不朽の名作といわれる表題作「時の門」をはじめ、突然公衆の面前で若い女性がストリップをはじめたり、痴呆めいた新興宗教が流行したりと、あらゆる奇妙な現象がとどまるところをしらず増大し、やがて……「大当たりの年」、地球から来た美人に恋人を奪われそうになった月っ子の物語「地球の脅威」など、巨匠ハインラインならではのセンス・オブ・ワンダーにみちた傑作、名作7中短篇を収録!

ハインライン傑作選」という副題は伊達ではない。収録短篇がどれも高水準で驚いた。だから久々に(はじめて?)全部に感想書く。

  • 大当たりの年

破滅SF。ヒロインの路上ストリップからはじまるのでびびった。統計で「大当たりの年」がでるとは思えないのがチョット気になるが、ラストまでの静かな筆致で破滅を描くのは素晴らしい。

  • 時の門

広瀬正の評論「時の門を開く」で有名だが、入手困難品として有名。読メの仲良くさせてもらっているぺこさんのお陰で、やっと読めて感慨も一入!ロジック系の時間SFは理論を考え抜いて構築していると感心する。これのちょい黒バージョンである同じくハインラインの「輪廻の蛇」とかも。「時の門を開く」も要再読だ。

ショートショート。オチが冴えててオシャレなSFだ。一番好き。

  • 地球の脅威

月の恋愛SF。友達と思ってた男の子と、距離が離れた瞬間に自分の恋心に気づく女の子。月世界に住むようになっても少年少女は変わらない。月ならではのスポーツ「フライ」の描写も活き活きしててよい。ただ邦題が侵略ものっぽいのがバツ。直訳で「地球からの厄介者」くらいでもよかったのに。

  • 血清空輸作戦

宇宙SF。冥王星植民地で病気発生。血清を届けるために光子船ロケットの高Gに耐えなければならない。方程式ものの変奏曲のようなおもむき。

  • 金魚鉢

風刺SF。風刺自体は現代から見るとたいしたアイデアではないが、途中にでてきた進化論の仮説が古びているが魅力的。

超能力SF。冷戦も超能力も完全に古びたアイデアだが、現代の読書にも耐えられる文章なのがスゴイ。
★★★★★