くじら座ソーダ通信

主に読書(SFとミステリ)やアニメについて書きます。最近の読書感想は「漫才風読書感想」をやってます。カテゴリーから「漫才風読書感想」を選んで読んでみてください!

連城三紀彦『敗北への凱旋』

敗北への凱旋 (創元推理文庫)

敗北への凱旋 (創元推理文庫)

あらすじ
ミステリ史上最高難度の、そして最も美しい暗号
昭和二十年八月十五日、瓦礫と化した東京に降る、白い夾竹桃
終戦から二十年以上の時を経て、戦時下の壮大な犯罪が暴かれる。
終戦から間もない降誕祭前夜、まだ焼け跡の残る横浜・中華街の安宿で死体となって見付かった隻腕の男。才気あるピアニストとして将来を嘱望されながらも戦争によって音楽の道を絶たれた男は、如何にして右腕を失い、名前を捨て、悲惨な末路を辿るに到ったのか。そして、遺された楽譜に仕組まれたメッセージとは――ミステリ史上最高難度の、そして美しい暗号が浮かびあがらせる、もうひとつの戦争。名匠の初期を代表する長編が甦る。

ミステリ読みVtuberさんの紹介動画を見て、早速読んだ!
終戦の日、空から撒かれた夾竹桃終戦から3年後、元ピアニストの隻腕傷痍軍人が女に射殺される。その元ピアニストの残した楽譜と運指に隠されたメッセージ。それらの繋がりを20年後、作家が探る。これは凄絶すぎる物語。楽譜と運指を組み合わせた暗号は、誰にも解けない難解なことに意味がある。戦場からの、声なき声だ。卑近にして壮大な殺人計画。こんな全世界を巻き込む殺人計画が、こんなただの愛憎劇から生まれるとは。大東亜戦争にこんな暗い情念を入れ込むとは、凄い想像力と構成力。さすが連城だ。