くじら座タウ星府立大学SF研究会

主に読書(SF中心)について書きます。最近の読書感想は「漫才風読書感想」をやってます。

堀晃『恐怖省』

恐怖省 (集英社文庫)

恐怖省 (集英社文庫)

あらすじ
雲海におおわれた異星の空の下、原因不明のまま失踪した基地隊員の秘密を探る遺跡調査員。彼が見た地底深く築かれた大文明の謎とその末路を描く「蜜の底」。ほかに地球再開発計画の「尖兵」として働く情報サイボーグが、情報省内の異常に感づいたとき、凄惨なサイボーグ狩りが始まる表題作など、第一回SF大賞受賞作家の待望久しい本格SF小説集。

亮人::どぅおもー!漫才風読書感想でーす!
使い魔・ゲンキ君::今回は、堀晃の第三短編集『恐怖省』だガル!
亮人::第一&第二短編集『太陽風交点』『梅田地下オデッセイ』は既読やから、これで初期作品群はほぼ読めたな!
ゲンキ君::本書も第一&第二短編集と同様に、《トリニティ》と《情報サイボーグ》の代表的両シリーズとノンシリーズ短編が雑多に収録されているガルね。
亮人::のちに、《トリニティ》シリーズは創元SF文庫の『遺跡の声』に、《情報サイボーグ》シリーズはハルキ文庫の『地球環』に、それぞれ一冊にまとめられて読めるよな!
ゲンキ君::「読めるよな」って、『遺跡の声』は今でも手に入るけど、『地球環』は入手困難レア本の状態ガルよ?
亮人::ガクッ。誰か復刊して~!!
ゲンキ君::期待しないで待つしかないガル。
亮人::シャーナイから1編目に行こうか。

  • 「蜜の底」

ゲンキ君::《トリニティ》シリーズの1編ガル!
亮人::まず《トリニティ》シリーズの説明からしてちょ!
ゲンキ君::遺跡調査員と結晶生命トリニティのコンビの話ガルな。銀河系の辺境の星々にある、すでに滅んでしまった知的生命の遺跡を調査していくというのが主なストーリー展開だガルね。
亮人::本短編の舞台は、雨の惑星。駐在調査員からの連絡が途絶えて1ヶ月弱も音信不通ということで、トリニティたちが様子を見に行くことになったんやな。
ゲンキ君::誰もいない調査員の基地にたどり着くと、地下に続く穴が掘られてて、なにやら地下遺跡のようなものに繋がってるガル。しかもそこからはフェロモンのような甘い空気が。その甘いフェロモンにやられて、正常な思考がだんだんできなくなっていって。。。果たして遺跡の奥には何が??
亮人::暗くてヌラヌラした不気味な雰囲気で、外の雨に打たれて全部洗い流したくなるわー。
ゲンキ君::本当に甘い「蜜の底」の罠から這い出してきたら雨で体を洗いたいガルな。
亮人::物憂げな6月の雨に打たれて、愛に満ちた季節を思って歌いたくなるよな?
ゲンキ君::それはミスチルだガル!!次。

  • 「沈黙の波動」

ゲンキ君::これも《トリニティ》シリーズの1編だガルね!
亮人::今回は岩石惑星。観測隊基地がズタボロに破壊されて連絡が途絶えたので、主人公とトリニティが調査に向かうことに。
ゲンキ君::周囲に生物はいなさそうなのに、何者かに基地がズタボロにされてて、果たして相手は何者か気になるガルね?
亮人::ネタを割ると、相手は地面なんよな。地面の奥に生命がいるのか、大地そのものが生命なのか、明言はされてないけど。異質な知性とのコミュニケーションや。
ゲンキ君::コンタクトの取り方も奇想だったガル!
亮人::「地震」で会話するんよな。基地は、大きな刺激を与えすぎたので、相手が「地震」で返事をしてきて、それで基地がズタボロになったってわけ。
ゲンキ君::こういうコミュニケーション手段もあったかと目からウロコだガルね!
亮人::うんうん、これは自身の自信になったやろねw
ゲンキ君::ハイハイ。次。

亮人::これも《トリニティ》シリーズ。
ゲンキ君::銀河系の渦の連なりの一つ「ペルセウス腕」。そのさらに先にある星。腕のさらに先だから「ペルセウスの指」だガルね。
亮人::そんな銀河系の辺境は、重元素が少なく、知的生命が発展しても宇宙に進出する前に資源枯渇で滅んでしまう運命にあるんよ。
ゲンキ君::しかしこの星は、隆盛時には情報分野で発展していたので、滅ぶ寸前に種族全員をデータ化して休眠させておいたガル。
亮人::そんな休眠遺跡をトリニティたちが訪れる。しかし、なにやらその休眠データが何者かに侵食されつつあるらしい。果たして何がデータ侵食しているのか??
ゲンキ君::遺跡の秘密にトリニティのルーツも絡んで、スリリングな展開だったガルな!
亮人::まぁトリニティのルーツに関わるということで、トリニティの母星の話である「遺跡の声」は先に読んでおいた方がいい話かもな。
ゲンキ君::そうガルね。では次。

  • 「コスモス・クロック」

亮人::これはノンシリーズの短編や。
ゲンキ君::31光年先の射手座λ星から、正確に1.5秒間隔の電磁波パルスが放たれていることが判明するガル。原因は分からないけど、便利だから地球は宇宙時計として利用しはじめるガル。
亮人::そしてついに冷凍睡眠星間宇宙船を完成させた地球は、射手座λ星まで調査隊を派遣することに!果たして向こうで何が待っているのか?
ゲンキ君::と見せかけて意外な展開になるガルね!?
亮人::正統派じゃないけど、面白い展開やったな!
ゲンキ君::宇宙の自然を超越したビジョンだったガルね。
亮人::ちょっとグレッグ・イーガンっぽかった!興奮!イーガンだけに、良いガーンと衝撃来た!
ゲンキ君::ハイ。次。

亮人::これは《情報サイボーグ》シリーズの1編やね!《情報サイボーグ》のシリーズ説明、しちゃって!
ゲンキ君::このシリーズの世界は、高度な情報化社会が達成されていて、情報省の中央コンピュータにすべての情報が集まるようになってるガル。そして情報サイボーグと呼ばれる人たちは、脳にコンピュータを埋め込まれて、高度な演算能力と記憶能力とそして情報省のデータにもいつでも瞬時にアクセスできる特権階級のことガル。
亮人::そして本短編はその情報サイボーグの終わりの話。
ゲンキ君::情報省が主導している「地球再開発計画」の情報も、情報サイボーグたちに降りてこなくなって、どうやら情報省コンピュータが暴走しているという疑惑が?そこで情報サイボーグたちは、情報省との繋がりを断って、情報省本部を破壊しようと計画するガル。
亮人::うーん、面白いストーリー展開だけど、そもそもサイボーグという言葉自体に古さがw
ゲンキ君::それは生まれる前の本だからしょうがないガル!

  • 「過去への声」

亮人::これも《情報サイボーグ》シリーズの1編やな。
ゲンキ君::過去へ電波を送る方法を見つける話ガル!
亮人::過去へのメッセージが送れるから、1か月前の大事故を未然に回避しようとするんやけど、1つ過去を変えようとすると歪みが出て、それをまた変えようとすると更なる歪みが。
ゲンキ君::泥沼だガルね。
亮人::このパターンの時間SFいっぱいあるのに、知らんかったのか!?情報サイボーグなのに、まさに情弱ww
ゲンキ君::いやいや、この短編の方が昔の元祖だガルよ!

  • 「蒼ざめた星の馬」

亮人::これも《情報サイボーグ》シリーズ。
ゲンキ君::宇宙船の失踪事件が多発しており、未知の宇宙人が太陽系に侵入している仕業とのウワサまで流れはじめるガル。失踪時に乗り合わせていたと思われる情報サイボーグは、「青白く輝く宇宙船を見た」との報告が途中で途切れて記録されているガル。
亮人::さてその事件を老情報サイボーグが調べに行くという話やな。まぁ思った通り、情報省の陰謀なんやけどw
ゲンキ君::ネタをさらっと言うなガル!でもそこには大きなテーマが隠れていたガル!
亮人::肉体は老いるが頭脳は情報サイボーグ化されていて老いることはない、という齟齬があるねんな。それがどういう影響を与えるかという大きなテーマや。
ゲンキ君::脳に無理をさせているから、かなりグロテスクな精神状態だガルね。
亮人::グロだけに、人間性を愚弄してるねw
ゲンキ君::ご主人のネタが読書感想を愚弄してるガルww 次。

亮人::最後も《情報サイボーグ》の話。
ゲンキ君::タルボス星系という辺境の太陽が赤色巨星化。しかもそこの観測ステーション内で一人の情報サイボーグが死亡。その死亡確認のために派遣されたのが「検屍官」の情報サイボーグだガル。
亮人::情報サイボーグは、肉体が死んでも脳の情報サイボーグ化した部分が生きている場合もあり、その確認のための検屍官なんやなー。これもイーガンっぽいテーマやな!
ゲンキ君::しかし話はそこで終わらないガル。
亮人::検屍の結果、この星系の太陽が赤色巨星化して死にかけてるだけやなく、重力定数が低下しはじめてて、この周辺の宇宙自体が死にかけていると?!
ゲンキ君::重力定数グレッグ・イーガンスティーヴン・バクスターばりのハードSFだガル!!
亮人::このハードSFな理論の用語の連続に痺れたね!この「宇宙葬の夜」がこの本の白眉やわ!
ゲンキ君::こんなハードSFな宇宙SFの連続が、集英社文庫から普通に出てたってのが驚きだガルね?
亮人::生まれる前の1982年の本やから出版事情は分からんけど、スゴイ時代やってんなー?
ゲンキ君::SF冬の時代じゃなかったガルか?でも濃いSFは出てたんだ?
亮人::ところで話は変わるけど『恐怖省』といえば、オレ恐怖症があるねん!
ゲンキ君::それは初耳だガル。
亮人::まんじゅう恐怖症やねんwwああーまんじゅう恐怖症やなー!!
ゲンキ君::そんなの初めて聞く恐怖症。でも、ハイまんじゅう(〃゚∇゚)っ○
亮人::もぐもぐもぐ。はーまんじゅう恐怖症はつらいわ~w もぐもぐもぐ。
ゲンキ君::メッチャ食べてるガル。本当は何の恐怖症なんだガル??
亮人::ここらで一杯、濃~いお茶が恐怖症ww
ゲンキ君::ってこの話、聞いたことあるガル!?
亮人::あと、ジョン・ブラナー『ザンジバーに立つ』やロバート・J・ソウヤー《キンタグリオ三部作》の続きやアンドレノートン《太陽の女王号》の続きの恐怖症!!キム・スタンリー・ロビンスン『米と塩の歳月』やルーディ・ラッカー『リアルウェア』やジョン・ヴァーリイ《ガイア》三部作にジョン・クロウリー《エヂプト》四部作にE・C・タブ《デュマレスト・サーガ》の最終巻も恐怖症!!
ゲンキ君::って読みたい未訳SFを並べてるだけじゃないかーー!!!もうやめさせてもらうわん!ガルガル!!

収録作

★★★★☆
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