くじら座ソーダ通信

主に読書(SFとミステリ)やアニメについて書きます。最近の読書感想は「漫才風読書感想」をやってます。カテゴリーから「漫才風読書感想」を選んで読んでみてください!

半村良『およね平吉時穴道行』

あらすじ
山東京伝。画家として、文筆家として、江戸時代に粋に生きたこの戯作者に惚れた私は、暇を見つけては、京伝研究を続けていた。そんなある日、私は当時の古日記を手に入れる。そこには、岡ッ引の平吉が綴る、京伝の妹およねへの切々とした恋心とともに、そのおよねが神隠しにあった事実が記されてあった――江戸と現代を結ぶ恋の行方を描く表題作をはじめ、デビュー作「収獲」など七篇を収録した、著者の初期傑作短篇集。

最近出たアンソロジー(『日本SF短篇50』)で表題作を知って好きになって、先日の四天王寺さんの古本市で本書も買ってみた。やっぱり表題作は素晴らしいのはもちろん、デビュー作の「収獲」やショートショートも切れ味よく、面白かった。半村良は長篇が傑作ぞろいなイメージだが、初期短篇もいいね!

  • およね平吉時穴道行

普段はあんまり再読しないけど、好きだから読むに決まってるw。前半は、山東京伝の古文書を解読しているだけなんだけど、おもしろい。ウンチク的に江戸の文献を語ってるのが良い。ここからどんどん時間SFにシフトしていく筆致も楽しい。およねが出てくるのは、初読時より唐突な感じがしたが、大好きな作品であることに変わりはない。

  • 幽タレ考

幽タレとは、幽霊タレントの略。あるCMタレントが亡くなって幽霊になっちゃったけど、幽霊タレントとして芸能活動を続けることに。けっこうドタバタで面白かった。作者自身が広告会社で働いてたこともあり、業界モノが多いのか。

ショートショート。叔父が甥っ子と酒を酌み交わす話。東京が誘惑が多いから気をつけろと説教するんだけど、オチのSFネタが利いてて楽しい。

  • 収獲

侵略SF。誰も居なくなった街という描写は、今でこそ手垢が付いているが、デビュー作でとはスゴイ。SF的なオチとなる「収獲」の意味も、ラストのビジョンも、衝撃的だった。

  • H氏のSF

ショートショート。小気味の良い会話劇で、漫才のような掛け合いが楽しい。SF者の楽屋トークみたいな感じか。オチのネタは、くだらなくって脱力しかけたがw

  • 虚空の男

人の分をわきまえるということを、SF的に解釈しなおした話。人生はどこまでも飛躍していけるという現代(高度成長期時代?)に反発するかのようで、おもしろい。

唯一、よく分からなかった。サラリーマンの型にはまりきらなかった男が、裏社会へ飛び込み、治安の悪い東南アジアで暗闘しようとする話。なんだけど、SFなんかなあ?
★★★★☆