- 作者: チャイナ・ミエヴィル,日暮 雅通
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2011/12/20
- メディア: 文庫
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あらすじ
ヒューゴー賞/世界幻想文学大賞/ローカス賞/クラーク賞/英国SF協会賞受賞!
ふたつの都市国家〈ベジェル〉と〈ウル・コーマ〉は、欧州において地理的にほぼ同じ位置を占めるモザイク状に組み合わさった特殊な領土を有していた。ベジェル警察のティアドール・ボルル警部補は、二国間で起こった不可解な殺人事件を追ううちに、封印された歴史に足を踏み入れていく……。ディック-カフカ的異世界を構築し、SF/ファンタジイ主要各賞を独占した驚愕の小説。
最近ブログのリンク集に入れてもらって仲良くさせていただいている日向永遠さんが少し前のブログで(同じミエヴィルの『ジェイクをさがして』の感想記事のコメ欄にて)猛烈に本書をプッシュなさっていたので、自分もミエヴィルをチェックしてみた。これはスゴイ。ひとつの都市に《ベジェル》《ウル・コーマ》のふたつの国家がモザイク状に並列するという特殊設定をこんなに魅力的に描いた手腕は素晴らしい。この設定を思いつくのもスゴイが、ここまで匂い立つような異国描写でふたつの国家を浮かび上がらせた筆力に感心する。これぞSFの想像力だ。互いの都市の住民が少しでも干渉しあう(《ブリーチ》行為を犯す)と謎の組織《ブリーチ》によって退場されてしまうという、一見キワモノの設定ものめり込んで読んでしまう魅力のひとつ。魅力的な造形の都市は、実際に印象的すぎて俺の夢にも出てきた。即行で《ブリーチ》されて退場するハメになったが(笑。ミステリとしても、《ブリーチ》という特殊ルールの上で捜査をしてゆく主人公ボルルと一緒になってぐんぐん読ませる良質作品だ。次回のSFとミステリの年間ベストにどれくらい食い込むか、両方ともに楽しみだ。
★★★★★