美しい小説だ。タイトルどおりの「友情」の美しさたるや。傑作。友情と恋愛という
アンビバレントな感情に板挟みとなる話(端的に言うと三角関係)ってよくあるけど、既に完成形が大正時代にあったのだ。三角関係といわれると最近では『マクF』を思い出すけど、これ読んだ後に考えたら失笑もんだわ。「お前たちが俺の翼だ!!」とか一番ダメなオチやね。話を本書に戻して。まず主人公の野島が青年らしくて素晴らしい。自尊心は高く、実力もあるのに、自信なく思い悩んで好意のある女性にいまいち積極的になれない。そのくせ、その女性に対する理想は際限なくあがっていく。親友にも尊敬しつつも時々嫉妬心をもたげてしまう。野島という青年、等身大すぎてこれは身につまされる思いがした。そして親友の大宮。あまり書いたらネタバレになるが上にも書いたとおり真の「友情」の一言。ヒロインの杉子は、俺の中ではラストにちょっと株下がったが、この美しい友情、美しい小説の前では瑣末なことだ。
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追記:この短さと、ほぼ現代語と同じ文体で読みやすいところもGOOD!!!)
★★★★★