くじら座ソーダ通信

主に読書(SFとミステリ)やアニメについて書きます。最近の読書感想は「漫才風読書感想」をやってます。カテゴリーから「漫才風読書感想」を選んで読んでみてください!

筒井康隆『馬の首風雲録』

馬の首風雲録 (文春文庫 181-2)

馬の首風雲録 (文春文庫 181-2)

あらすじ
「馬の首」と呼ばれる暗黒星雲には、犬に似た知的生物が住む星があった。ところがここで戦乱が勃発、戦闘は急激にエスカレートしていく。この機に乗じてひと儲けをたくらむ行商人「戦争婆さん」もその波に呑まれ、4人の息子たちがひとり、またひとりと戦渦に巻きこまれていく。彼らの運命は、一大宇宙戦の趨勢を決定づけることになるのだが…戦争の悲惨さ、滑稽さ、カッコよさ、すべてを内包して疾走する、筒井康隆第2長編SF。

馬頭星雲にある連星ビシュバリクとブシュバリクで、犬顔の現地星人サチャ・ビ族とコウン・ビ(=地球人)によって繰り広げられる泥沼の戦争を描いた戦争ツツイ文学。のらくろブレヒト戯曲やヘミングウェイなどの過去の戦争文学をコラージュして書いた、一種の実験小説でもあるらしい(そのへんの元ネタに全く触れてないので分からなかったが、充分楽しめた)。サチャ・ビ族の国家軍と共和国軍(独立軍)の戦争に武力提供で裏から介入していく地球人という構図は、ベトナムやアフガンやイラクの紛争にも通じ、筒井先生の先見性に驚く。また戦争の悲惨さ滑稽さカッコよさなど様々な側面を書き出したとあとがきにあるが、犬顔星人のコミカルな四兄弟と母親(戦争婆さん)にスポットライトを当てているため、上手くカリカチュアされ、読みやすいが胸を打つ展開に仕上げていて、さすが筒井先生と感激。これが初期長篇とはビックリですね!
★★★☆☆