SFマガジン・ベストNo.3 (1964年) (ハヤカワ・SF・シリーズ)
- 作者: 早川書房編集部
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 1964
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あらすじ
SFは、いまや知性ある読書人すべての愛好する読物となったが、年々歳々紹介される海外作品の数が多くなるにつれ、何をどう読んだらよいのか、判断にくるしむ新しい読者も、決してすくなくないにちがいない。
そうした人々のために、最も適したものがこの年刊アンソロジーである。
本集は、わが国でただ一つのSF専門誌SFマガジンが、その年度中のベストを選りすぐって編集した短篇傑作シリーズで、すでに《No.1》(1960年度版)《No.2》(1961年度版)が出たが、続いて1962年度版として編集したのが本書である。
ひそかに、しかし着実に迫りつつある地球と人類の運命を描いてみせる「大当りの年」(ハインライン)、ついに起こってしまった核戦争を、せめていまからでも押えよう悲痛な人類の願いをこめた物語「雷鳴と薔薇」(スタージョン)、人間の意思を理解しまもろうとする電子頭脳つき自動車の話「サリイはわが恋人」(アシモフ)、ポエジイと思考実験の傑作「もののかたち」(ブラッドベリ)、タイム・トラベルものに新機軸をうみだした「次元分岐点」(セル)ほか、ウォルハイム、クラーク、ハミルトン、マティスン、シマックなど11篇が収録されている。
題からは分かりづらいが、1962年度にSFマガジンに掲載された作品からセレクトされたベスト集。このラインナップのレジェンド軍団たるや!!クラーク「前哨」アシモフ「サリイはわが恋人」ハインライン「大当りの年」のビッグ3をはじめ、ブラッドベリとシマックは個人作品集未収録短篇、そしてスタージョン「雷鳴と薔薇」ハミルトン「反対進化」という両氏の代表的傑作短篇。この綺羅星のごとき作品たちが一年の間にSFM誌上で発表されたかと思うと、歴史を感じる。
そして各短篇さすがの傑作ぞろい!「雷鳴と薔薇」は、核戦争といういささか時代遅れのテーマかと思ったが、核の報復合戦を回避するために努力する人間の姿が胸を打つ。「暴風警報」の大気も生命を持っているという設定に加えて、大気(気体)の宇宙侵略者と地球の大気の戦いという大きなヴィジョンの発想が面白い。「サリイはわが恋人」は、じつはアシモフ長短あわせても初読み。ロボットものが読まず嫌いだったが、ラストの余韻がいいね。「前哨」も有名作品だが初読み。前哨の意味の宇宙的大きさに圧倒。「もののかたち」も発想が面白い。生まれた赤ん坊がまったく健全なんだけど、見た目だけが四次元空間を経由してしまってピラミッド型に見えてしまうという。親の苦悩が痛いほど上手く書かれていて良い。「前哨戦」はシマックの型とはまた違う、都会的な侵略モノ。シマックの違う一面を見れてよかった。そして収録作で一番好きだったのは、全く無名のウィリアム・セル「次元分岐点」。タイムマシン物で、話の構成はまんま『バック・トゥ・ザ・フューチャー』。未来の情報を過去に持っていって、歴史が変わるとか。しかし、戦前にBTTF(と同じような)小説を発想する凄さに感激!BTTF好きでヨカッターw!!
- 「大当りの年」ロバート・A・ハインライン
- 「小鳥の歌声」ジョン・P・マクナイト
- 「雷鳴と薔薇」シオドア・スタージョン
- 「暴風警報」ドナルド・A・ウォルハイム
- 「サリイはわが恋人」アイザック・アシモフ
- 「前哨」アーサー・C・クラーク
- 「もののかたち」レイ・ブラッドベリ
- 「反対進化」エドモンド・ハミルトン
- 「前哨戦」 クリフォード・D・シマック
- 「男と女から生まれたもの」リチャード・マティスン
- 「次元分岐点」ウイリアム・セル