SFの偉い人・
柴野拓美氏の半生を訊きとったインタビュウを、SF作家・
山本弘がまとめた同人誌。今ある
SF小説は勿論のことアニメ漫画
コミケコスプレなど、全ては柴野さんがいなかったら今の形で存在していなかっただろうと思うと胸が熱くなった。そして日本SF黎明期の情熱と熱狂が時代を突き動かす様が少しうらやましくもなった。まず「日本空飛ぶ円盤研究会」に入会する話では、各界の知識人が集まってくることに驚いた。今のUFO肯定論者は、ちょっとアッチ系の人が多いけど。空飛ぶ円盤研究会は、時代的にも何か起こるかもしれないという好奇心の塊のような人たち。バイタリティ溢れる時代を感じた。そしてSF同人誌『
宇宙塵』。印刷は業者に回してたとはいえ、高水準の質と量を維持して月刊ペースで発行というのはすごい。好きじゃないと出来ないことだ。個人的には
広瀬正のエピソードが読めたのが嬉しい。アニメのSF考証も多数手がけた。柴野さんの功績ももちろん凄いが、周囲の作家のエピソードなどが面白い。
手塚治虫と
豊田有恒のエピソードとか。「SF考証」という言葉も柴野さんがはじめて付けられたとは驚き。
日本SF大会をはじめたエピソードも素晴らしい。
コミケやコスプレも、
SF大会がなければ無かったかもしれない。現に
コミケをはじめた
米澤嘉博自身が
SF大会に参加していて思い入れがあったというのは、はじめて知って驚いた。最後に翻訳家・
小隅黎として。翻訳に対するスタンスも本当にSFが好きなんだなあという愛を感じる。SF同人誌『
宇宙塵』をはじめ、これほどまでに歴史的重要人物が周囲に集まったのは柴野さんの人望もあったのだろうと想像する。