くじら座ソーダ通信

主に読書(SFとミステリ)やアニメについて書きます。最近の読書感想は「漫才風読書感想」をやってます。カテゴリーから「漫才風読書感想」を選んで読んでみてください!

飛浩隆『象られた力』

象られた力 kaleidscape (ハヤカワ文庫 JA)

象られた力 kaleidscape (ハヤカワ文庫 JA)

飛浩隆の80年代から90年代初頭の作品を集めた中短編集。夏だから『グラン・ヴァカンス 廃園の天使Ⅰ』でも読もうと思ったけど、その予習として図書館で探してきました。ハヤカワ文庫のラインナップ紹介によると、この本は「テッド・チャンの理論とグレッグ・イーガンの衝撃」らしいけど、確かにイーガンっぽい表現のところもあって面白かった。*1

  • デュオ

テレパシーでつながる双子の天才ピアニストの間に潜む第三の人格とは、、、という話。音楽SF、というよりはむしろホラー小説かも。名なしは情報生物(死んでるから生物ではないけど)、情報統合思念体みたいなもの??

  • 呪界のほとり

呪界からはずれてしまった男と竜が老人と出会い呪界に戻る話。ファンタジーかと思いきや宇宙が舞台。呪界の存在がファンタジックな雰囲気を与えていると思う。
超高速航行と即時通信技術は宇宙を情報テクスチャと解し、そのテクスチャを折り畳むことによって超高速伝達を可能にする。その超高速伝達のネットワークが超稠密にはりめぐらされた時、宇宙の折り畳みが限度を越し、宇宙の基本的性質が変わり、誰でも回廊や遠耳や水寄せなどの力がデフォルトで使えるようになった宇宙、それが呪界ということらしいです。それが長い年月経ってファンタジックな世界になったっていうことか。

  • 夜と泥の

テラフォーミングの際に少女のデータが入り込む。その後200年間、夏至の夜になるとその星の沼沢地から少女が生えてくるという話。
舞台も細部も全く違うが根底に流れているテーマが『デュオ』に類似しているように思う。

  • 象られた力

謎の消失をとげた惑星<百合洋>*2で使用されていた図形言語についての物語。
最後の「かたち」の崩壊と「ちから」の暴走のシーンは、イーガン『宇宙消失』のクライマックスシーンを彷彿とさせる壮絶な描写だった。
図形言語って『ミステリックサイン』のことでOK??

*1:ちなみにテッド・チャンは未読

*2:ユリウミ