くじら座ソーダ通信

主に読書(SFとミステリ)やアニメについて書きます。最近の読書感想は「漫才風読書感想」をやってます。カテゴリーから「漫才風読書感想」を選んで読んでみてください!

前野ひろみち『満月と近鉄』

あらすじ
小説家を志して実家を飛び出し生駒山麓のアパートに籠もっていた私は、宝山寺の小道で謎めいた女性に出会う。万巻の書物に囲まれて暮らす佐伯さんは、厳しい読み手でもあった。私は彼女に認められたい一心で小説を書き続ける(「満月と近鉄」)。奈良を舞台に繰り広げられるロマンと奇想に満ちた4篇。本作を発表ののち沈黙を守る鬼才、唯一の著作。森見登美彦との対談を追加収録。

うぉぉ〜!なんやこれ!最高や!すごすぎる!面白すぎる!奈良に関する多彩な4篇がどれもホンマおもろい話すぎて!これは今年のナンバーワンやわ!
まず単行本のとき表題作やった「ランボー怒りの改新」が凄い!蘇我氏によってベトナム戦争に派兵され、ベトコンの拷問を逃げ延び、飛鳥に帰還したランボーが、大化の改新に参加する!?どういう発想やねん!蘇我入鹿ランボーにロケットランチャーぶっ放したり、なんやねん!発想力が凄すぎる!
かと思ったら、春日大社でのアホな中学生たちと不思議な少女との初恋があったり、奈良で千一夜物語なナラビアンナイトがあったり。奈良の地名がいちいち出てくるのも楽しいやん!春日大社や餅飯殿センター街とか生駒山上遊園地とか。
そしてラストの表題作。作者自身の小説家の夢を追った10代をファンタジックに切なく描く。この寂寥感たるや!多彩すぎる!巻末解説も数奇なデビュー秘話で、それ自体が綺譚。本業が畳屋の謎の作家で一冊しか本を出す気がないみたいやけど、ぜひもっと作品が見たいやん!ナンバーワンの奇想やもん!
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