ハーラン・エリスン『死の鳥』
- 作者: ハーラン・エリスン,伊藤典夫
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2016/08/05
- メディア: 文庫
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あらすじ
25万年の眠りののち、病み衰えた惑星〈地球〉によみがえった男の数奇な運命を描き、ヒューゴー賞/ローカス賞に輝いた表題作「死の鳥」、コンピュータ内部に閉じこめられた男女の驚異の物語――「おれには口がない、それでもおれは叫ぶ」、初期の代表作「「悔い改めよ、ハーレクィン!」とチクタクマンはいった」など、半世紀にわたり、アメリカSF界に君臨するレジェンドの、代表作10篇を収録した日本オリジナル傑作選。
エリスンはセカチューの表題作だけ読んで意味不明だったので敬遠していたが、今回年間ベスト1を獲ったので積読から急いで取り出した。面白かった!どれも疾走感と暗い情熱を感じる筆致で強烈!どれも傑作だが「チクタクマン」のディストピア「おれには口がない」のシンギュラリティ「漂流中」の内宇宙「ジェフティ」のノスタルジー、あたりが鮮烈な印象に残った!!
- 「悔い改めよ、ハーレクィン! 」とチクタクマンはいった
メッチャ面白い!エンデ『モモ』ばりの時間管理社会ディストピアと、それに抗うハーレクィンの奇行を、疾走感あふれる筆致で書ききった!
- 竜討つものにまぼろしを
これは早すぎた、昨今のなろう系の異世界転生モノへのアンチテーゼだな!これも疾走感があってクセになりそうw
- おれには口がない、それでもおれは叫ぶ
これまたグロテスクな。コンピュータがパンチカードの時代にシンギュラリティ後のカオスな世界を予見していたとはスゴイ!エリスンはターミネーターを本作のパクリと指弾したらいしが、なら『ぼく明日』なんて極刑モノですよw
- プリティ・マギー・マネーアイズ
放浪男がなけなしの金でラスベガスに行ってスロットの前に座ると、この世の物ではない何者かに魅入られて大当たりする話。ラスベガス版銀盤カレイドスコープかな?w 幸運に魅入られた者は悪運にも魅入られる。
- 世界の縁にたつ都市をさまよう者
切り裂きジャックが未来に呼ばれる話。未来の均衡静寂を破るために利用された切り裂きジャック。グロテスク。
- 死の鳥
オールタイムベストにも選ばれる有名作。情報量が多すぎて消化しきれなかった。旧約聖書と世界の終わりと現代の正義と悪をミックス?要再読だな。とりあえず犬好きに悪い人はいない!!
- 鞭打たれた犬たちのうめき
殺人事件を目撃したことで嵌まり込んだ大都会ニューヨークの歪み。エドガー賞受賞作らしいけど、これをミステリとして評価されるとは度量が広いな。
- 北緯38度54分、西経77度0分13秒 ランゲルハンス島沖を漂流中
不死者が加速器で自分の分身を作って自分の内面を旅させて探る話。加速器で自分のミニ分身を作る意味がイマイチわからんかったけど、内宇宙の旅は刺激的。といっても全てのメタファーを読み取れたわけじゃないけど汗。。。
- ジェフティは五つ
歳をとらない男の子ジェフティとの交流。しかしそれだけでは終わらずに、ジェフティの周囲には昔の流れを受けた有り得ざる物があふれていることに気付く。バロウズの「木星シリーズ」だったり、ノスタルジーの描き方が上手い。
- ソフト・モンキー
エドガー賞受賞作ということで、これもミステリ。ホームレス女性の抱く子供代わりのぬいぐるみの温かさと、事件の冷たさの対比が、短い短編なのに上手い。
★★★★★