くじら座ソーダ通信

主に読書(SFとミステリ)やアニメについて書きます。最近の読書感想は「漫才風読書感想」をやってます。カテゴリーから「漫才風読書感想」を選んで読んでみてください!

恩田陸『ライオンハート』

ライオンハート

ライオンハート

はじめのエリザベス1世から「from E. to E. with love」のハンカチーフが生まれ変わりの手を通じて連綿と渡っていくのは、なんともロマンティシズム溢れる。この作品は『ジェニーの肖像』へのオマージュ作品らしいが、同じく『ジェニーの肖像』へのオマージュである梶尾真治の短篇「時尼に関する覚え書」と比較してしまう部分がある。『時尼』が時間SFのロジックとロマンティシズムの両立が素晴らしく大好きな作品であるのに対し、本作は読んでいるうちに「生まれ変わり」がテーマであると分かってくる。生まれ変わりでは時間SFのロジックは見込めない、SFマインドが足りんと、途中で心が離れかけた。しかし、最後まで読むとまた違ったロジックが浮かび上がってきて大いに素晴らしい作品であることが分かる。そのロジックは、年表に浮かび上がる小道具の配置の巧みさ。年表は以下のサイトに詳しくある→http://www.geocities.co.jp/Bookend-Shikibu/1476/onda/lion/chrono.html。小道具というのは、例えば上に挙げたハンカチーフであったり祖父の日記であったり。その小道具が「生まれ変わり」と「歴史」との間で絡み合う事によって、ロマンティシズムが見事に生まれているように思う。
★★★★☆