くじら座ソーダ通信

主に読書(SFとミステリ)やアニメについて書きます。最近の読書感想は「漫才風読書感想」をやってます。カテゴリーから「漫才風読書感想」を選んで読んでみてください!

ネトフで義勇

ネットオフにて。

秋山完『プリンセスの義勇海賊』!なんか往年のスペオペアニメっぽそうで面白そうだったから!朝日ソノラマノベルスとかいう謎のレーベル!
富野由悠季『ガーゼィの翼(1)』!ログアウト冒険文庫とかいう謎のレーベル!安かったので、よく分からないままゲッターした。富野監督の『聖戦士ダンバイン』と同じくバイストン・ウェルを舞台にした話らしい。全5巻らしいけど、これ簡単にそろうのか?

アンソロジー『ifの世界線 改変歴史SFアンソロジー』

あらすじ
歴史は変えられる――物語ならば。色とりどりの“if”の世界に飛び込む、珠玉のSFアンソロジー
★収録作品★

  • 石川宗生「うたう蜘蛛」

死ぬまで踊り続ける奇病が蔓延したイタリア。
頭を抱える総督の前に、「この流行り病を収束させてみせましょう」と嘯く錬金術師が現れる。テオフラトゥス・フォン・ホーエンハイムと名乗るその男が披露したのは、奇天烈な治療法だった。

  • 宮内悠介「パニック――一九六五年のSNS

一九六五年の日本。そこには「ピーガー」というSNSが存在した。
ベトナム戦争の取材で一時行方不明となった作家・開高健。帰国した彼を待ち受けていたのは、「ジコセキニン」という非難の嵐。世界初の炎上事件の謎を紐解いた先に待っていた真実とは。

  • 斜線堂有紀「一一六二年のlovin' life」

和歌を“詠訳”する平安時代
“詠語”ができないけれど詠む歌は一級品の歌人式子内親王の前に現れた一人の女房によって、世界が一変する。

  • 小川一水「大江戸石廓突破仕留(おおえどいしのくるわをつきやぶりしとめる)」

南北四里、丈百尺、厚さは二間。その江戸には巨大な石壁「大廓」が横たわっていた。
一体、その石壁は“何”から江戸を守っているのか――? 明暦三年一月。燃え上がるあの日の真実が紐解かれる。

  • 伴名 練 「二〇〇〇一周目のジャンヌ」

一四三一年五月三十日、フランスの英雄ジャンヌ・ダルクは今まさに火刑に処されたーーはずだった。
しかし目を覚ますと、処刑の朝に時間が巻き戻る。彼女にもたらされた「奇跡」の正体と代償とは。

「改変歴史SFアンソロジー」ということで大好物のジャンルだったけど、大満足!全作傑作で全作大興奮!講談社タイガからSFが出るのは珍しいが、今後も続いてほしい!

  • 石川宗生「うたう蜘蛛」

ナポリ黒死病の次にまた奇病が襲う。人々が踊り狂ってそのまま衰弱死してしまう。この時代のことは詳しくないしパラケルススも名前くらいしか知らないけど、なんとも奇妙な面白さのある話だった。

  • 宮内悠介「パニック――一九六五年のSNS

情報技術が30年早まった日本。白黒テレビに繋いだ初期コンピュータでカタカナだけの文字通信SNSが流行する。そして開高健ベトナム戦争取材中にゲリラに巻き込まれる事件。それがSNSで大炎上。自己責任。世界初の炎上事件。歴史のifで、ここまで色々な史実をミックスするとは!このカオスさがほんま最高に楽しい!こんな面白い短編は久々!宮内先生はなんとなく今まで触ってこなかったけど、これは長編とか読んでみたくなった!

  • 斜線堂有紀「一一六二年のlovin' life」

平安時代。和歌を詠むことがstatus。しかしこの作中の平安時代では、和歌は詠語(英語)で詠まなければならない。なんというヘンテコな設定。しかしこれが極上の百合love storyになるというacrobat!Excellent!和歌の才は格別だが詠語が得意でない皇女の式子内親王と、詠訳が得意な侍女の帥。二人の出会いと別れ。beautifulな時間百合SFだった!斜線堂先生はideaも筆力も凄まじい!

  • 小川一水「大江戸石廓突破仕留(おおえどいしのくるわをつきやぶりしとめる)」

これはすごい時代SFね!石の壁を構築して防御された江戸の街。しかし江戸に綺麗な水を供給する玉川上水に毒が。犯人を追う内に、時代小説と思って読んでたら大きな歴史改変SFが見えてくる。見事。ほんまに光瀬龍の時代SFばりの傑作。時代の息遣いの見える時代小説、そしてまさか「●●のない日本」という歴史改変SF。その発想をしっかりシミュレーションしてるのがすごい!こういう江戸時代になるねんな〜。面白い!

  • 伴名 練 「二〇〇〇一周目のジャンヌ」

これまた傑作!ワームホール技術と量子コンピュータで過去を覗き見できるようになる。なので歴史の論争はなくなる。しかし歴史上の人物の内心は分からない。そこで量子コンピュータでシミュレーション。フランス。右派政党は、ジャンヌ・ダルク国粋主義の英雄に祭り上げる。しかし左派政党はジャンヌのアラを探したい。そこで量子コンピュータジャンヌ・ダルクを何万回も再生シミュレーションする。そこで神を罵る言葉を一回でも言えば鬼の首を取ったようなもの。当のジャンヌの主観からすると、処刑の日を何万回も繰り返すことになる。えぐい。しかし次第にジャンヌは処刑を免れたり、色々な行動をするようになる。ジャンヌが生きていたら、どうなったかのifが何パターンも考えられていて圧巻!そして最後の三〇〇〇一回目のジャンヌの選択。ジャンヌはやっぱりジャンヌだった。偽史は伴名練の得意な形だけど、また違った料理の仕方で、面白かった!やっぱり伴名練はすごい。

ネトフで冥路

ネットオフにて。

ウォルター・ジョン・ウィリアムズ『必殺の冥路』!サイバーパンクの傑作『ハードワイヤード』の100年後の話らしい。まずは『ハードワイヤード』読まなきゃ!エンタメなサイバーパンクらしいし!
野田昌宏『銀河乞食軍団 外伝4』!この巻だけ持ってなかったの!メッチャ探してたけど、微妙にプレミア価格ついてた時期もあったし。銀乞は、途中まで読んでるから早く最後まで読み切りたい!
川崎康宏『隊長は倒れてる』!なんか昔のラノベを語ってる方が、良さそうなこと言ってたので、買ってみた!るりあ046先生の表紙イラストがメッチャ好みやわ!
森川智喜『ワスレロモノ 名探偵三途川理 vs 思い出泥棒』!《名探偵・三途川理》シリーズ!ところでなんか1ページ目にサインが書かれてたんやけど!?これ本物?

汽水域観測船・編『時間百合SFアンソロジー』


時間百合SFアンソロジー
作者:アンソロジー
出版社/メーカー:汽水域観測船
発売日:2022/09/25
メディア:文庫判(A6)

時がふたりを分かつまで。あるいは、ふたりが時を分かつまで――

時間にまつわる広義のSFを扱った百合アンソロジー
時間は等しく誰にでも流れるものでありながら、それがもたらす影響は人・関係によってさまざまです。
そんな時間という概念から再考することで、百合が持つ多様な可能性を拡張するような作品、あるいは、「時間」がその関係に深く影響を与え、これまでの時間という概念にとらわれることなく展開される物語が集まりました。

【参加者一覧(五十音順)】

  • 小説

青島もうじき @Aojima__
  『異常論文』(ハヤカワ文庫JA)短編収録
阿部屠龍 @abe_dragonslay
いかずち木の実 @223thunder
  第2回百合文芸小説コンテスト・ガガガ文庫賞受賞
伊島糸雨@shiu_itoh
  第64回阿刀田高のTO-BE小説工房 選外佳作
  第3回百合文芸小説コンテスト pixiv賞
  BFC3準決勝進出。
  文芸サークル「磔刑」所属
犬井作 @miduki_neko
  カクヨムWeb小説短編賞2020 佳作「ホンモノの味」
紅坂紫 @YukariKousaka
  零合舎所属作家・編集者
益岡和朗 @ayumu_KM
  古書店発の文芸同人誌《ますく堂なまけもの叢書》発行人
緑わかめゼリー @greenwakamejell

  • 装画・デザイン

昏omeme @nnnnnnnnkon

  • 編集

汽水域観測船(青島もうじき/丸井零)

9/25の文フリ大阪でgetした本!百合文芸小説コンテスト受賞者や『異常論文』掲載者による百合&時間SFのアンソロジー。ほんまにいいアンソロジーだった!時間SFとしても様々なバリエーションで高クオリティな作品の連続だったし、百合SFとしても関係性が色々あって面白かった!これほんま商業出版でもなんの不思議もないクオリティ!全作品素晴らしかった!

  • 緑わかめゼリー「亡き王妃のためのクチュール」

被服専攻のデザイナー志望の学生。集大成のドレス制作に悩む。そんなとき夢に昔のフランス人ドレス作家みたいな人が何度も現れる。亡き高貴な方へのドレスを作っているよう。果たして誰のためのドレスなのか?このドレスの描写が凄まじい。多次元宇宙の衝突と超弦を織り込んだドレス。SFの想像力の限界に挑んでるような描写でスゴイ!ここまで亡き王妃を想うパワーの凄まじさよ。主人公の進む道も険しそうだが先を見据えられて良い終わり方!1編目からクオリティ高いSFで良かった!(この「亡き王妃」は知ってたけど、ドレス作家のほうも歴史上の有名な人なのね。すごい細かな下調べの上での作品。すごい)

  • 伊島糸雨「時の鹿冠」

ただの中華風ファンタジーと思って読んでたら、凄まじい話だった。幼い時から姉妹同然に暮らしてきた二人。しかしすれ違い。そんなとき禁忌の地で、半神半獣の時を司る鹿神に出会う。そこからは急転直下。時間SFとして、想い人を救うため覚悟の行動。まるで円環の理!?神って人知を超えた存在やけど、ほんまここまで過酷なラストになるか。タイムリープを繰り返す系の話は数あれど着地点ここになるか〜。胸が痛い。それだけ想いが強かったってことやけど。ほんまに凄まじい時間SFを久々に読めた満足感だった!

  • 阿部屠龍「n回目のエピローグ」

2018年6月18日という一日を延々と繰り返すという時間ループ。シンプルなネタの時間SFかと思いきや、かなりシミュレーションされていてスゴイ!30万回以上も同じ一日を繰り返しているとなると、どういう行動をするのか。同じ現象になってる人を見つけようとしたり、自分がどこまでできるかタスクを課してみたり。こういう行動になるよな。そして見つけた同じ現象の女子高生同士。この現象について認識論で説明しようとする。非常に刺激的な議論。ここまで深くまで現象を考察しないとやなと感激!いい時間SFだ!

  • 益岡和朗「最強おばあさん養成所」

勇者ヒーロー魔法少女などを導く「師匠」を輩出するための組織「最強おばあさん養成所」。そのトップである小野小町。なんてブッ飛んだ設定!よくこの発想が出てきたと感動!この勢いが面白い!しかし小野小町については丁寧に調べて、そこで出てきた新説を1000年続く百合SFに仕立てる。この手腕、すごい。ここでしか読めないストーリーで、こういうのがイイネ!

  • いかずち木の実「一人称過去未来現在形」

コレコレ〜!コレぞ時間SF!コレ系の時間SFは、某翻訳SF短編でもあるけど、まさか百合と結びつくとはね!しかもコレ系の時間SFは倫理に抵触するネタを含んでしまいがちなのに、そこをあえて得意分野おねロリで行き切るとは!さすが暗黒おねロリが得意分野な作者さん!ダークな後味!百合としても時間SFとしても大満足!時間百合SFの中心となる作品やね!

  • 犬井作「完全なる牢獄(せかい)のなかで」

や〜これはスゴイ!がっつりハードSF!読み応え満点イイ!未来から過去への8127通のメールでの警告。中国領コロンボ(スリランカ)でのポリティカルアクションな背景もありつつ、量子加速器研究施設にエージェントが潜入。施設ではこの宇宙を循環宇宙に付け替えようという企みが。よくぞここまでの硬質な設定を一本の短編にまとめてくれた!スゴイ!そして百合兼バディもの(変則的)としても楽しかったし!高クオリティな作品がそろうアンソロジーの中で一番好きなSFかもしれん!

深海探査。しかし各国どこもその事業から撤退。最後の航海の海溝探査。探査船に乗る二人。
マリンスノーは等速で深海を下へ下へ進んでいく。つまり時間と位置が等価。そして深海では相対論的に時間がゆっくり進む。新しい時間についての視点が色々でてきて、こういうのも時間SFの一つの形やな〜と感心!今後人類未踏の地となる深海に別れの花束のように残すバラスト、絵になるラストがほんまに美しく印象的。いい短編や!

  • 紅坂紫「個展beloved:速川星来」

写真家・速川星来の個展。連作作品に目が止まったことから本人と話すことに。速川星来は、時を飛ぶことができる一族で、過去へ旅しての叔母との交流が語られる。静かな語り口で叔母との出会いと、一族の特徴について語られて、独特の雰囲気。どんどん惹き込まれる。叔母の晩年は、意識だけで時を飛んでるのか、最老境の症状なのか、どちらか曖昧で色々老境とは何かと考えてしまう。末尾にこんな印象的な作品を置くとは、いい構成のいいアンソロジーでした!

宮でif

最寄りの宮脇書店にて。

『ifの世界線 改変歴史SFアンソロジー』をゲッターしてきたぞ〜!講談社タイガからSFが出るとはね!石川宗生&小川一水&斜線堂有紀&伴名練&宮内悠介という超豪華メンバー!改変歴史SFってアイデアが面白いのが多くて好き!

ネトフでピルクス

ネットオフにて。

スタニスワフ・レム『宇宙飛行士ピルクス物語』をゲッターしたぞ〜!
なぜか今入手困難になってて、ぜひとも欲しかった本!
発売当時には、なぜか買ってなかったのよね。あのレムなのに、当時は興味が薄かったのか?
この表紙のイラストがマジでカッコイイ!クール!

夏衣優綺『ペルシャの嘘』


ペルシャの嘘
作者:夏衣優綺
出版社/メーカー:文学カフェ『お菓子の家☆第三位相』
発売日:2022/08/21
メディア:文庫判(A6)

9/25の文フリ大阪でgetした本!メッチャいい話で面白かった!メラミン製品の原料となるチップ材の誤発注。しかも200万円分!しかしそのデータや現物や支払いまでも忽然と消えていた。横領?誰が?なぜ?という企業ミステリ。いいホワイダニットのミステリだった!主人公の営業一係課長の由科がいいキャラだし、それ故のこの真相は本当にいいね!こんなホワイダニットだったとは予想できなかった!冒頭の話の枕からの、ラストシーン締め方も良いし!上手い展開。タイトルも全て読んだら納得good。いい企業ミステリでした!