くじら座ソーダ通信

主に読書(SFとミステリ)やアニメについて書きます。最近の読書感想は「漫才風読書感想」をやってます。カテゴリーから「漫才風読書感想」を選んで読んでみてください!

フレドリック・ブラウン『天使と宇宙船』

あらすじ
二つの太陽間を8の字形の軌道を描く惑星上では、何が起こるか? 十八万年前に生まれた男から届いた手紙とは? 電力を失った20世紀文明は? 悪魔と坊やとの大決戦は? 既刊『未来世界から来た男』で絶賛を博したブラウンのSFとファンタジー、男性も女性も大人も子供も楽しめる傑作中短編全16編を収録。

面白かった!アイデアストーリーの連続!特に「ミミズ天使」は惹きつけられる展開と、すごいオチ!こんなんあり?!これは評価が高いのもうなずける!他にも「ウァヴェリ地球を征服す」「気違い星プラセット」など発想もストーリーもGOOD!

  • 「悪魔と坊や」

シンシナティの劇場。9歳の坊やが舞台上に。舞台上の奇術師、実は悪魔!?坊やは水鉄砲一つで世界を救うのか?
悪魔とかかなりキリスト教的なネタだけど、坊やの意外な行動力に笑える!

  • 「死刑宣告」

地球の宇宙飛行士はアンタレスへ到着!しかしそこで事件を起こしてしまう。さて判決は?
まぁオチはショートショートらしいキレがあるけど、SF熟読者には想像力の範囲内かな?

  • 「気違い星プラセット」

二重太陽の間を8の字に公転(?)する惑星プラセット。しかも片方の太陽は負の物質でできてて、2つの太陽の真ん中は異常な空域に。光が音速より遅く進むという異常な空域。その影響で視覚中枢も異常をきたし、その空域に星がいる間は視覚がバグりまくり。そんな幻覚空域のある惑星プラセットでのドタバタ劇。美女が登場してのラブコメあり、ダジャレネタあり、最後も爆発(崩落?)でオチにするとか本当にお笑いで楽しいSF短編だ!

  • 「非常識」

「アスタウンディング」というSF雑誌を隠す子供と厳格な父親。超光速ロケットとか超能力とか荒唐無稽なことを書いてるSF雑誌。と思いきや、この世界は。世界が反転するラストはショートショートの醍醐味よね!

地方新聞。ライノタイプという、タイプしたら字組みされて、そこに金属を鋳流し、固まったら紙面の原盤ができるという機械。それを謎の男に貸したことから起こるドタバタ!面白い。「無生物に擬似生命を与える公式」って発想もgood!オチが仏教という意外性もnice!

  • 「フランス菊」

科学者が植物の声を聞ける機械を発明。妻に聞かせる。そしてオチの切れ味に大笑い。因果応報だ。
ところで、フランス菊って何よと思ったら、デイジーヒナギクのことなのね。

  • 「ミミズ天使」

結婚を10日後に控えた主人公。釣りの準備でミミズを掘ってたら、羽根があり後光の差したミミズの昇天を見てしまう。果たして夢か幻か?やがて次々と怪現象は続く。これは何の幻覚?
いや〜凄い発想の小説!こんなネタよく思い付くな!欧米人にしか想像しにくいネタだけど、充分に楽しめた!そしてこの幻覚の解決方法。そうはならんやろ!よくこの発想でるな!すごい勢いのある力技作品で大好きです!

  • 「大同小異」

地球に宇宙船が着陸。中から宇宙人が。しかし影のような巨人で実体もないし危害もない。しかし巨人は雲のような物を噴霧しだすしだす。この巨人の行動が、人間のある日常の行動と対比されて描かれており怖くもあり風刺でもある。上手いショートショート

  • 「ユーディの原理」

新発明。ヘッドセットをつけて願い事を言うと何でも叶う装置。ユーディと妖精の名を冠しているが、仕組みは自己暗示で自分でも認識できない超高速で自分で願い事をやってしまうというもの。
短い中でなかなか二転三転する展開がGOOD!この装置ほしいわ!

  • 「探索」

天国を探索する話。オチの状況がカワイイ。でもイマイチどういう意味か分からん!キリスト教的な世界観を分かってないとダメなやつ?

  • 「不死鳥への手紙」

核戦争の放射能の影響で、老化が1万5000倍も遅くなった男。18万年、地球と宇宙を見てきて、辿り着いた人類についての真理とは。
たしかに戦争ばかりの人類の凶気が人類のたくましさなとこあるよね。ブラウン、真理を突いてるな!

  • 「回答」

人間の住む全ての惑星960億の全ての計算機を接続して一つの超計算機を作ろうというプロジェクト。ついに完成し、はじめに何を入力するか?
まさかこのネタがこんな昔にもうアイデアしてたとは!ブラウンすご!

  • 「帽子の手品」

男女4人でWデート。映画の後、家飲み。一人の男が手品を披露する。しかし、もう一人の男にタネを指摘される。そして逆に「お前も手品やってみろ」と。
女の前で恥かいて顔真っ赤な男がカッコ悪い。そしてもう一人の男は何者?反則スレスレだ。

  • 「唯我論者」

しがない男。しかし自分で自分のことを全能の世界の中心だと思っている。唯我論。ある時、妻にも逃げられ仕事もなくなり、世界消えてなくなれと念じる。
短いショートショートの中で世界が一転する展開がスゴイ!キリスト教の世界観を逆手に取った上手い展開!

  • 「ウァヴェリ地球を征服す」

ある日テレビ・ラジオに混線が入りはじめる。やがて全ての電気がどこかに吸収されて消える。謎の見えない宇宙人(?)ウァヴェリの仕業。
姿の見えない侵略者の発想が面白い!そしてそれによって変容する人類社会。この想像力はブラウンらしいね!

  • 「挨拶」

金星人と接触。しかし意思疎通はできるものの、そっけない。しかしある言葉が契機となり打ち解ける。
こういう異文化で意味が違う言葉って面白いよね!白旗を降参の意味で出したら相手は全面戦争を意味するととったかは有名だけど。
最後までアイデアの短編集で良かった!
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