くじら座ソーダ通信

主に読書(SFとミステリ)やアニメについて書きます。最近の読書感想は「漫才風読書感想」をやってます。カテゴリーから「漫才風読書感想」を選んで読んでみてください!

ジェリー・ユルスマン『エリアンダー・Mの犯罪』

あらすじ
父の遺品のなかでひときわ目をひいたタイム・ライフ版『第二次世界大戦史』。架空の出来事とは思えぬ詳細・迫真のドキュメントに、誰も知らぬ“第二次世界大戦”とやらの探索にかかったところから不思議なミステリーの旅が始まる。ナチもヒットラーも存在しなかった世界からもうひとつの世界の犯罪をさぐる奇想ミステリー・ロマン。

1913年、祖母エリアンダー・モーニングはウィーンでとあるしがない美大落ちの浪人生(チョビヒゲ)を射殺する。このチョビヒゲは誰なのか?一方、1983年の現代。孫レスリー・モーニングは、父の遺品の中から報道写真集『第二次世界大戦史』を発見。しかしこの世界では、第二次大戦など起こっていない。だが写真の中では、ホロコーストやノルマンディー上陸作戦など凄惨な場面が現実のように写っている。果たして祖母エリアンダーはなぜ殺人を犯し、それが孫レスリーのこの現実にどう繋がってくるのか?これは面白い!最高の歴史改変SF!エリアンダー編の章では、エドワード朝を舞台に女手一つで伸し上がりつつ、謎の行動をするエリアンダーが時系列バラバラで描かれる。この第一次大戦前の世界描写ががリアルで。本当に読ませる。H・G・ウェルズもキーパーソンとして出てくるしね!一方の現代編の章では、史実とは違うオルタネート・ヒストリー。第二次大戦が起こらなかった世界はどのように進んで行くか。これがまた想像力を掻き立てる世界観でイイ!章と章の間の1ページの記事風のも、「大英帝国W杯優勝」や「シャルル・ド・ゴールハノイで暗殺」など、ありえたかもしれないもう一つの歴史で本当に細かい。興奮。そして『第二次世界大戦史』が公表されて、どんどん世相に暗雲が。スリリング。どこに着地するのか分からないハラハラと興奮の読書だった!やっぱり歴史改変SFはいいね!!
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