くじら座ソーダ通信

主に読書(SFとミステリ)やアニメについて書きます。最近の読書感想は「漫才風読書感想」をやってます。カテゴリーから「漫才風読書感想」を選んで読んでみてください!

大化の改新

中大兄皇子はパソコンの前で悪戦苦闘していた。ワードだ。ワープロソフトを立ち上げたまま手を止めてしまった。
「このイルカめ」
皇子は画面の端で「キュイキュイキュイ」と鳴くイルカにイライラしていた。
イルカとは、ウィンドウズで文書作成や表計算をするためのマイクロソフト・オフィスに標準装備されていた、あのアシスタントのことである。このイルカに操作方法などを聞くと何でも答えてくれるという仕組みなのだが、いつも画面の端で「キュイキュイキュイ」と目障りに鳴くので、うとましく思っていたユーザーも多かっただろう。
皇子も例にもれず「イルカ お前を消す方法」と検索していた。
「絶対にイルカ、お前を消してやるぞ」


蘇我入鹿中大兄皇子の仕事部屋の前まで来ていた。友達である皇子に「蒸しご飯」を食べさせてあげようと、わざわざ作って持ってきたのだ。蒸しご飯は二人の共通の好物で、入鹿はたびたび皇子の元へ差し入れに来ていたのである。
「てんぢ皇子君、喜んでくれるかな〜」
今日も入鹿は会心の出来の蒸しご飯を手に、ウキウキで皇子の部屋のドアノブに手をかけた。そのとき、中から声が聞こえた。
「絶対にイルカ、お前を消してやるぞ」


入鹿は飛び上がった。
「て、てんぢ君?」
皇子の「入鹿を消す」との物騒な言葉に入鹿は部屋に入るのをためらった。
入鹿は震えながらも、さらに聞き耳を立てた。
「たしか鎌足のやつがパソコン得意だったよな。鎌足に『教本』を借りるか?」
鎌足共犯?!」入鹿の震えは止まらなかった。鎌足君といえば、入鹿も共通の友達である中臣鎌足。その鎌足君が凶行の共犯とは。友達二人が自分を消そうとしている。その恐ろしさに戦慄した。
さらに部屋から声は聞こえてくる。
鎌足への対価はシャーペンの替え芯くらいでいいかな?対価は替え芯
大化の改新!?この凶行計画にすでにカッコイイ名前まで付けている」入鹿は泣き崩れた。
皇子の独り言はまだ続く。
「あ〜だるい。もう飲みてぇ。検索するか『一旦付近の飲み屋』」
板蓋宮!凶行の予定地は板蓋宮か!」板蓋宮(いたぶきのみや)とは、奈良時代飛鳥京にあった皇居である。ここが大化の改新の舞台になると知った入鹿は放心状態となった。
一方、皇子は飲みのことで頭がいっぱいになっていた。
「飲むとなったら、サシ飲みか。誰とサシ飲みか?入鹿か。入鹿だな!入鹿とサシ飲みしてぇ
入鹿を刺し殺してぇ?!」ついに皇子の本音を聞いた入鹿はすでに茫然自失。友達に裏切られたことで全てが暗転した。だが意を決して部屋に踏み込むことにした。
「おい!皇子君!」
「やぁ入鹿君。ちょうどよかった。今からグビッと一軒いかないか?」
クビを一閃!?斬首!?もはやここまでか」入鹿はついに失神したのだった。