米澤穂信『さよなら妖精』
- 作者: 米澤穂信
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2006/06/10
- メディア: 文庫
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あらすじ
1991年4月。雨宿りをするひとりの少女との偶然の出会いが、謎に満ちた日々への扉を開けた。遠い国からはるばるおれたちの街にやって来た少女、マーヤ。彼女と過ごす、謎に満ちた日常。そして彼女が帰国した後、おれたちの最大の謎解きが始まる。謎を解く鍵は記憶のなかに――。忘れ難い余韻をもたらす、出会いと祈りの物語。『犬はどこだ』の著者の代表作となった、清新な力作。
新刊『王とサーカス』の予習復習。単行本で出た時に読んで以来の再読。昔の読書だったので、オチ以外はまったく忘れてましたorz。。。日常の謎の積み重ねから、最後の大きな謎のフーダニットにつながるという構成が見事にミステリ。フーダニット型の推理だけど、「誰?」じゃなくって「どこ?」ってのも珍しい気がする。おもしろい。《ベルーフ》シリーズの短篇を読んでいて、太刀洗の怜悧な姿の印象が強かったが、内面の脆さもこのころにもう露わになっていたというのが再発見(《ベルーフ》シリーズの短篇は、年内中に東京創元社から『真実の10メートル手前』としてまとまって刊行されるらしいので期待大!)。世界が広がったと思い込むが自分の小ささを思い知るという守屋の内心の苦さは、米澤穂信初期青春ミステリの十八番ですな。マーヤの清新さとユーゴ紛争の凄惨な現実をクロスさせた筆致は初期長篇と思えない。傑作!
★★★★★