くじら座ソーダ通信

主に読書(SFとミステリ)やアニメについて書きます。最近の読書感想は「漫才風読書感想」をやってます。カテゴリーから「漫才風読書感想」を選んで読んでみてください!

高畑京一郎『ダブル・キャスト(下)』

あらすじ
浦和涼介は、革のジャケットに身を包み、携帯電話のボタンを押す。確信はない。だが、ただ一度しかないチャンスを無にせぬために。川崎亜季は、手の甲で目のあたりを拭ってから顔を上げた。涙に濡れたその顔で、だが確かに亜季は微笑んだ。川崎涼介は、目の前で繰り広げられる乱闘に、戸惑い、そして歓喜する。涼介は口元に笑みを浮かべ歩き出す。一度は諦めたことを果たすために。第1回電撃ゲーム小説大賞「金賞」受賞作家高畑京一郎が贈る、スーパーSF推理小説。物語が終わるとき、すべての謎は感動にかわる。

前作『タイムリープ』もそうだが、シチュエーションが綿密に計算されており、SF小説なのにミステリ的な読み方もできる。素晴らしい!人格が入れ替わることによって、主人公たちの経験していることとしていないことをシッカリ設定して、事実誤認させるトリック(叙述的な?)は非常に上手い。シリアスなネタを扱っているのにリーダビリティ高く、結末も爽やかで良い。一方の主人公・川崎涼介のラストの思いは必然だとしても胸が詰まる。もう一方の主人公・浦和涼介のビルドゥングスロマンとしても読み応えがあり、あの不信からよく成長したな。最後には力強さも感じた。
★★★★☆