くじら座ソーダ通信

主に読書(SFとミステリ)やアニメについて書きます。最近の読書感想は「漫才風読書感想」をやってます。カテゴリーから「漫才風読書感想」を選んで読んでみてください!

荒巻義雄『白壁の文字は夕陽に映える』


白壁の文字は夕陽に映える(ハヤカワ・SF・シリーズ)
作者:荒巻義雄
出版社/メーカー:早川書房
発売日:1972/04/30
メディア: 新書

あらすじ
1970年8月、一人の新人作家がSFマガジン誌上に登場した。新人らしからぬ洗練された文章と風格とを兼ね備え、しかも独自のSF理論“術の小説論”をひっさげて――「事実的問題を前にして既成の知識をいかに適用するかを考える」ことに人間の本性を見いだす彼、荒巻義雄は、三次元的存在からは達成できない自由をテクノロジー的に――彼の言葉に従っていえば“術”的に解決することにSFの本質を見、“術の小説論”に逢着したのである。しかし、だからといって彼の作品は決して近づきがたい晦渋なものではない。はるかな異世界から漂い来るロマンの香りと卓抜な文章テクニックは、読者を幻想世界ともいうべき異境へと誘うことだろう。本書は彼の作品群の二大潮流から、ロマンの味わいの強い作品を選び収録した、期待の大型新人の第一短篇集。
バラードの知能指数は極度に低下、まったくの無能力者となったかに見えた。だが、彼は代償として恐るべき力を手に入れたのだ……ある精神病患者の奇怪な異変を通して人類の運命を占う「白壁の文字は夕陽に映える」ほか読者に圧倒的な人気を持つ新鋭、荒巻義雄の力作6篇をこの一冊に結集!

はまぞうにデータが無いので、書誌データは自分で作りました。ゆえに上にリンクはないです。アシカラズ。古い本だから登録されてないのか。。。
荒巻義雄、初期SF作品集。芸術と精神医学と宇宙を見事に融合させた作品群で佳作ぞろいだった。ハードな宇宙SFなのに、サルバドール・ダリカミュ『異邦人』や前衛(屍体)芸術などアートをモチーフにし、精神医学(精神世界)で料理しているため、主観と客観が曖昧になったような偏執狂的世界が描かれ、とても濃密。アーティスティックなので、ハッキリ言って半分も理解していないだろうが、この世界観には長く浸っていたいと思わせる不思議なSF世界たちだった。
『日本SF短篇50』と『星雲賞傑作選』で荒巻SFを知ったのは、個人的に今年の大きな読書ニュースだった。すぐさま古書店で本書を探しに走ったものw!本書の「白壁の文字は夕陽に映える」と「柔らかい時計」、そして「大いなる正午」は、傑作中の傑作だ!!
追記:メモしてあった「柔らかい時計」初読時の感想があったので貼っておく⇒⇒サルバドール・ダリの絵画「柔らかい時計」をモチーフにしただけあって、絵と同様につかみどころの無い偏執狂的で濃密な短篇。火星を客観と主観が曖昧になってしまう特殊な土地として配置し、さらにそこにダリに心酔するダリの子孫を絡ませることによって、「柔らかい時計」の世界が火星を侵食するさまが偏執狂的でぞっとする。芸術家と精神疾患紙一重な感じを幻想的に描いてるのも鮮やか。しかしメインストーリイは主人公と女の子の恋で、シンプルで清新。

  • 白壁の文字は夕陽に映える
  • 緑の太陽
  • ああ荒野
  • 柔らかい時計
  • 無限への崩壊
  • 大いなる失墜

★★★★★