あらすじ
日本SF作家クラブ創立五〇周年記念アンソロジー第四巻。特殊能力を持つ女性の葛藤を綴る宮部みゆきの名品「朽ちてゆくまで」、非・人型介護用ロボットが導入された介護の現場を描く篠田節子の傑作「操作手」、菅浩江による博物館惑星を舞台に美を巡る物語「永遠の森」など一九九三年から二〇〇二年に発表された十篇を収録。ジャンルの枠を越え、多様なSFが発表された充実の十年を振り返る。
第4巻の特徴は、前半の「SF冬の時代」か。時代だけあって、プロパーなSF作家ではない作家さんの作品群。SFとしての水準も一定以上だが、物語として読ませる作品が多い。白眉は、藤田雅矢の「計算の季節」。作者の本業の植物学とSFをうまく融合させ、小品ながらリリカルな作品に仕上げており、素晴らしい!「永遠の森」も叙情あふれる感動だけでなく清濁のある作品で、長篇を読まねばと思わせた。大槻、小林、田中、北野は既読なので今回は割愛。もちろん「海を見る人」はベスト級だけどね。
- 1993年「くるぐる使い」大槻ケンヂ
- 1994年「朽ちてゆくまで」宮部みゆき
- 1995年「操作手」篠田節子
- 1996年「計算の季節」藤田雅矢
- 1997年「永遠の森」菅浩江
- 1998年「海を見る人」小林泰三
- 1999年「螺旋文書」牧野修
- 2000年「嘔吐した宇宙飛行士」田中啓文
- 2001年「星に願いを ピノキオ二〇七六」藤崎慎吾
- 2002年「かめさん」北野勇作
★★★☆☆