法条遥『リライト』

リライト (ハヤカワ文庫JA)

あらすじ
過去は変わらないはずだった―1992年の夏、中学2年生の美雪は、未来からやってきた保彦と出会う。旧校舎崩壊事故に巻きこまれた彼を救うため、10年後へ跳んで携帯電話を持ち帰った。そして2002年の夏、思いがけず作家となった美雪は、その経験を題材にした一冊の小説を上梓した。彼と過ごしたひと夏、事故、時空を超える薬、突然の別れ…。しかしタイムリープ当日になっても10年前の自分は現れない。不審に思い調べていくなかで、同級生の連続死など記憶にない事実が起きていることに気づく。過去と現在の矛盾が生み出した、残酷な夏の結末とは―。

タイムトラベルものには二種類あって、決定論型と改変型がある。決定論型は、全ての運命は定まっていて時間を行ったり来たりしても結局は一本の線に収まるという物。例は広瀬正『マイナス・ゼロ』など。改変型は、過去の歴史を変えたら未来が変わるというもの。例は映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』など。さて『リライト』。序盤から不穏な空気を醸しだして、並行世界ものかと思わせる手法は見事。そして、40人分の夏という、決定論型のアイデアは最高に知的興奮を与えてくれた。しかし、オチ。わざわざホラータッチのイヤSFにするために、改変型に落としてしまった。これには興を削がれた。40人分の夏というアイデアだけ、最高だった。
追記：改変ものの時間SFも楽しいけど、時間SFの傑作はやっぱりロジックのパズルのような決定論型でしょ！そういう意味で、どっちつかずの時間SFになっちゃった印象が残った。おもしろい料理の仕方で満足は満足なんだけどねー。しかしながら、なんか理論にも穴がありそうなんだよなー。図表を書きながら要再読か！
★★★★☆