くじら座ソーダ通信

主に読書(SFとミステリ)やアニメについて書きます。最近の読書感想は「漫才風読書感想」をやってます。カテゴリーから「漫才風読書感想」を選んで読んでみてください!

米澤穂信『リカーシブル』

リカーシブル

リカーシブル

あらすじ
青春の痛ましさを描いた名作『ボトルネック』の感動ふたたび! この町はどこかおかしい。父が失踪し、母の故郷に引越してきた姉ハルカと弟サトル。弟は急に予知能力を発揮し始め、姉は「タマナヒメ」なる伝説上の女が、この町に実在することを知る――。血の繋がらない姉と弟が、ほろ苦い家族の過去を乗り越えて田舎町のミステリーに迫る。著者2年ぶりとなる待望の長編登場。

安定安心の米澤穂信の陰鬱ブランド笑!今回のその陰鬱は、閉鎖的な地方都市の土着の伝承という日本伝統のガジェットで、米澤穂信との親和性が非常に高いことが改めて確認できた。ミステリとしても、推理の過程に必要な重要なファクターが前半から各所に緻密に張られており、フェアなミステリとして有機的に機能している。素晴らしい。リカーシブルというタイトルが、無限ループに陥って出口の見えない状況の、地方都市の疲弊やタマナヒメ信仰やハルカの将来などに何重もの意味を持たせているのも米澤穂信らしい。米澤穂信2年の沈黙に対する期待に値する怪作。
★★★★☆