豊田有恒『異聞・ミッドウェー海戦―タイムパトロール極秘ファイル』
異聞・ミッドウェー海戦―タイムパトロール極秘ファイル (角川文庫)
- 作者: 豊田有恒
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 1987/03
- メディア: 文庫
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あらすじ
突然の濃霧のあと、演習航行中の海上自衛隊の護衛艦“くらま”は時間ワープされ、昭和17年6月のミッドウェー海域にほうり出された。そこでは、太平洋戦争の天王山というべき日米の大決戦が始まろうとしていた。全艦エレクトロニクスの塊のような護衛艦は、襲いかかる米軍機をゲームのように撃墜し、ついに歴史に介入してしまった。もし、日本がこの海戦に勝ってしまったら……。
古代から近代までの歴史の重要な節目に、歴史改変を企てる時間犯罪者を追うタイムパトロール員。会心の連作歴史SF。
豊田有恒の歴史改変SF連作短篇。時間犯罪に巻き込まれた現地人の手記が残っていたという体裁の連作。歴史の舞台は其々、白村江の戦い、壬申の乱、本能寺の変、秀吉の朝鮮出兵、吉宗治世期の尾張徳川家、ミッドウェー海戦。前半の4短篇は、歴史改変が起こる前にパトロールに阻止されてるので、物足りなさは残る。そしてかなり豊田史観が入ってる気がする。とは言うものの自分の歴史知識の浅さも痛感したが。とくに白村江なんて日本が負けてたことさえ知らなかった(汗。そんなの歴史の授業で習った?朝鮮出兵も授業ではあまりやらないよね。日本人の悪行だけを教えられて、詳細は教えられなかった、はず。小西行長や加藤清正ら日本の戦国武将が平壌までという朝鮮半島のほとんどを手中に収めていたとは。戦国武将すげえ。尾張名古屋は、経済学者がタイムトラベルしてきて、名古屋を好景気にして、日本の中心地にするという、一番勢いのある話。時間密航者の偽名が掛院都(ケインズ)って(笑。白眉はミッドウェー。某漫画『ジパング』と全く同じ設定だけど、こちらが架空歴史物の先駆者だ。『ジパング』と違って、簡単に歴史介入する自衛隊員には驚いたが。ミッドウェーは判断ミスなど偶然が重なっただけで物量的にも日本が勝って当然、と確信してばしばし米軍機や空母を落とす自衛隊艦ってある意味危険だ。
- 白村江異聞
- 壬申乱異聞
- 信長公異聞
- 清正公異聞
- 尾張名古屋異聞
- ミッドウェー異聞
★★★★☆