くじら座ソーダ通信

主に読書(SFとミステリ)やアニメについて書きます。最近の読書感想は「漫才風読書感想」をやってます。カテゴリーから「漫才風読書感想」を選んで読んでみてください!

伊藤計劃『虐殺器官』

虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)

虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)

あらすじ
激化の一途をたどる「テロとの戦い」。サラエボが手製の核爆弾によって消滅したことをきっかけに先進諸国は厳格な個人情報管理を導入、その一方で、世界中の途上国では内戦や民族虐殺が激増していた。そしてその背後に見え隠れするジョン・ポールという米国人の影。ジョンを追うアメリカ情報軍のシェパード大尉はプラハでジョンの元恋人ルツィアと接触。シェパードは次第にルツィアに惹かれていく。ジョン・ポールの目的はいったい何か?そして、ひとりの人間が国家的な大量虐殺を引き起こすことを可能にする「虐殺の言語」とは何なのか?(『SFが読みたい!』より)

ゼロ年代最高のSFならば読まねばなるまい。まず大きな柱である言語SFとしては、個人的には言語SFあまり好きではないんだが、本作は脳の発達の過程と絡めたハードSF的な考証がなされており大変素晴らしい。具体性は欠くが、これだけでも名作たる作品。もうひとつの柱である軍事諜報SFとしても凄い。数々の近未来軍事SF的ガジェットが読者を魅了すると同時に、テロ地域紛争などの世界情勢のシミュレートも素晴らしい。ひとつ気になるのは、主人公の口調が「ぼく」「母さん」など軍人なのに女々しすぎやしないかという事だけ。あとSFや漫画などの小ネタが仕込まれてるんだけど全部拾えてないだろう事が悔しい。この本、一般層にも売れてる様子だけど、はたして全員がついて来れてるんだろうか?? ラストは賛否ありそうだけど、自分は『ハーモニー』既読だったので、そういう事だったのかという感想が一番だった。
★★★★☆