「死人宿」は『小説すばる2011年1月号』掲載。「軽い雨」は『オール讀物』増刊『オールスイリ』掲載。
- 「死人宿」
2年前に突然いなくなった恋人が温泉旅館で仲居をしているとのことで、山奥の秘境の旅館へ。その旅館は自殺の名所で、別名「死人宿」と呼ばれている。その旅館で置き忘れた遺書が見つかる。しかしまだ自殺はしていないようだ。さて旅館の客三人の中で自殺しようとしているのは誰だ??…という話。米澤先生は本格ミステリについておっしゃっていたが、これはしっかりとフェアな謎解きだ。しかも元恋人との関係も推理に絡ませてあるのが中々読み応えがある。しかし謎が全て解き終えて見事解決した後の、話の閉め方がなんとも黒い。先生らしいといえばよいのか。
★★★★★
- 「軽い雨」
限界集落も遂に人が居なくなった。役場の事業として、若い家族に入植してもらおうと公募をかける。2家族が入植することになる。そして起こる隣人問題、事件。…という話。先生自身が自作で最も本格ミステリとおっしゃっていたが、謎解き部分はまさしくフェアな謎解き。しかしこの舞台設定がなんともいえない。よくこんなネタを思いつくな。限界集落になるような田舎はもちろん黒いです。ってか先生と黒いってもう同義語です。横溝金田一みたいな因習にとらわれた陰鬱な田舎を舞台にした、先生の長編が読んでみたくなった。
★★★★☆