まず俺は森見先生の作品が大好きだから、このブログの読書感想の一番下の★採点をどんなカスな話でも必ず★5つ付けようと思ってるんだけど、本書は間違いなく★5つ!!!いや5つじゃ足りんくらいだ。まず以前に雑誌掲載された短篇版(本書の冒頭から初めてお姉さんが空き缶をペンギンにするあたりまでとほぼ同じ話)を読んでた印象では、ただ少年の大好きなおっぱいの大きな
歯科助手お姉さんが空き缶からペンギンを生む話くらいにしか思ってなかったけど、最後まで通して読むとこれが素晴らしい
SF小説。ってか正にオマージュにしたと先生が仰られてる
スタニスワフ・レム『
ソラリスの陽のもとに』。少年たちの研究対象はそのまま《
ソラリスの海》だし、終盤の少年とお姉さんそれぞれの苦悩は『
ソラリス』の
ケルビンとハリーを彷彿とさせた。特に337〜338頁のお姉さんの科白「
私も、私の思い出も、みんな作りものだったなんて」「
アオヤマ君、私はなぜ生まれてきたのだろう?」はハリーそのもののように思えた。また読了後の胸にぽっかり穴の開いたような喪失感は、これが本当に
森見登美彦の小説かと見まごう程に見事。ってか先生って今まで「腐れ大学生」か「雰囲気ホラー」しか書いてなかったのに、こんなラストの話を書くなんて吃驚。正直言って今まで「森見は腐れ大学生だけ書いとけ」と思ってたんだけど、こんな素晴らしい
SF小説を書くなら「新境地」も断然悪くない。
★★★★★