あらすじ
カルタゴの人身御供の儀式、クレオパトラの鼻、キリストの処刑、ニュートンのリンゴ…。紀元前3000年までの過去のいかなる時代も場所も、クロノスコープを使えば思いのままに見ることができる。その使用許可がもらえなかった歴史学者は、危険な賭に挑んだが!あらゆる学問が政府の統制下におかれた未来を描く代表作「死せる過去」、脳に刺激を与えて夢を見させ、視聴覚もちろん、味覚や触覚までも疑似体験させられる録夢装置をめぐる大騒動「夢を売ります」など、過去、現在、未来のさまざまな地球を舞台に、斬新なアイディアと巧みな語り口で読者を魅了する17篇を収録。
- 1編目「死せる過去」
古代史の教授であるポッタリイ。カルタゴのことが知りたくてタイム・ヴューの使用申請をするも門前払い。どうやらクロノスコピイは国連政府によって封じられている。そこで物理学の新任講師にニュートロニクスを勉強させてタイム・ヴューを無許可で作らせる。過去を覗けるタイムテレビを巡る陰謀論が面白い。結局、陰謀論ではなく、ああなってしまうのか。たしかにタイムテレビが普及した世界を想像すると、ああなるわな。こわいやん。緊迫感と未来の想像力が面白い作品だった。
- 2編目「SF成功の要諦」
散文のようなエッセイのような、4ページほどの小品。SF作家として上手く業界を渡っていく方法が伝授されてる。「専門用語を(理解してなくても)それっぽく使えば頭よく見られるよ」みたいな!?アシモフのユーモアが楽しい!
- 3編目「投票資格」
未来のアメリカ大統領選。国民全員の投票によって選ばれる時代は終わった。マルティヴァックというスパコンがあらゆる要素を計算して国民一人を選び出し、その人の嗜好を読み取って投票行動を分析し、最終投票を決める。それやったらスパコンがもう政治してやと思ったけど笑
- 4編目「悪魔と密室」
10年前に悪魔と契約して幸せな家族を手に入れた。しかし10年後、また悪魔が。契約どおり密室に収容。密室から出られないと地獄行き、密室から脱出できたら悪魔の幹部に。さて男はどう行動するのか?悪魔をやり込める屁理屈とそれを可能にする魔力の荒唐無稽さが面白い。
- 5編目「子供だまし」
ファンタジー作家の前に妖精が現れる。カブトムシの姿をした妖精でキモイ。しかもエルフと名乗ってる。エルフは美少女であれ!そして妖精を信じる者の脳を利用したいということでファンタジー作家を狙ったと。最後は現代の子供は妖精を信じるのかという皮肉な結果で笑
- 6編目「高価なエラー」
地方の保安官のもとに宇宙船が飛来。1stコンタクト。しかし保安官は税務書類の計算でイライラしていて。こんな理由で宇宙時代への道が閉ざされるとはオモロイ。最後のオチもメッチャくだらないダジャレで好き!
- 7編目「住宅難」
地球の総人口が1兆人を超えた。そこで可能世界(平行世界)の地球へ移住させる。無限の平行世界から生物の発生しなかった地球を選んで移住。しかし無限の平行世界ということは。なかなか怖いラスト。無限ということは、こんな可能性の世界もあるんだ。
- 8編目「メッセージ」
第二次世界大戦から10年。元兵士たちが思い出話をする。米軍がそこここに落書きした有名なメッセージ。その正体がこんなSFショートショートで!史実に基づいたオシャレな一編。
- 9編目「お気に召すことうけあい」
夫が社会的地位を上げたが、妻は取り残され上級の奥様方とも馴染めない。そんな中、妻の元に超美男ロボットが来る。しかしあまりに完璧美男ぶりに拒否感。はたして妻は変われるのか?ロボット三原則にまたこういう使われ方があるのかと感心。これも恋心か。
- 10編目「地獄の火」
3ページのショートショート。核実験の瞬間をハイスピードカメラで撮った映像の見学会。しかし学者も政治家も核兵器に恐怖感は覚えておらず興奮さえしている。そして映像に映っていたものは?アシモフなりの核兵器への警鐘の作品かな。
- 11編目「最後の審判」
天使長ガブリエルと熾天使エセリエルは、ついに神が審判の日を決定したことを知る。そして地球上では死者が蘇り、全ては白い世界に還っていく。しかしそれがおかしいと思ったエセリエルは神に直談判。その理屈が、うーん?屁理屈やん?アシモフ宗教ネタは微妙なのが多い?
- 12編目「楽しみ」
未来を描いたショートショート。未来の小学生が本を見つける。紙の本を初めて見る。しかも本の内容、昔の小学生の姿に驚く。学校!友達!未来の小学生は家でロボから教育を受けるのだ。未来の価値観からの勘違いのオチが切れ味いい。しかし家でロボ教師なのに宿題はあるんだw
- 13編目「笑えぬ話」
超高性能スパコン、マルティヴァック。それにジョークをひたすら入力する技術者。そこから導き出される脅威の真実!?人間のジョークの正体よ。この壮大なビジョンはSFならでは!この視点を思いつけるアシモフの凄みよ!
- 14編目「不滅の詩人」
物理学者とシェイクスピア文学者が酒席で盛り上がる。物理学者は発明で過去の偉人を結構現代に連れてきたことあると。シェイクスピアも。しかし現代に馴染めずスグに帰った。その理由が爆笑!皮肉な!笑えるショートショート!
- 15編目「いつの日か」
《詩人》という機械。中のメモリーに入っている言葉や設定から自動的に物語を生成して読み聞かせてくれる機械。なにこれ、生成AIやん!?しかし主人公の持っているのは旧型でメモリーも少なく古臭い物語しか出てこない。そこで改造して新しい単語を入れてみると。。。
- 16編目「作家の試練」
「きみはプロットを思いついた時、それで頭がいっぱいになるだろう」とSF作家を目指す君に語りかける形式の短編。SF創作はそれで頭がいっぱいになって周囲には変人と思われる、との決めつけはウケる!まぁ完成して満足感あるならそれでいいか!
- 最終編「夢を売ります」
夢を自由に見させることのできる機械「録夢」と、そのソフトを作れる夢を自由に操ることのできる「ドリーマー」の物語。録夢の高級品から大衆化していく過程が見れたり、アングラでアダルト録夢が出たり、アシモフの想像力の素晴らしさが感じられた。